学校で教えてくれない経済学・・・江嵜企画代表
11月19日、NY為替市場では、米連邦制度理事会(FRB)議長、
グリーンスパン発言を受けて、ドル売りが加速した。
為替ディーラーは、ブッシュ大統領再選前後から、
米政権がドル安容認との読みからドル先安をはやしていた。
いつでも焚けるように薪を積み上げていたところへ、
グリーンスパン発言が正に火を点けたようなものだ。
たまらず1ドル=102円台までドル安が進んだ。
ドイツ、フランクフルトでの講演会で、グリーンスパン氏は、
「米国は、経常赤字の増加を見て見ぬふりをすべきでない」と
発言した。同氏は「経常赤字は問題にする必要はないが、
それが増えてくると米国への海外との収支バランスが
ネットでマイナスにになる。米国にとってそれが一番
厄介だ。」とズバリ核心をついた発言をした。
米スノー財務長官は、週末ドイツ、ベルリンで開催予定の
G20会合を前にして、為替問題は議題に含まれていないと
かわした。しかし為替ディーラーはスノー発言を一の矢に、
グリーンスパン発言をニの矢に使って打ち込んだ。
原油相場では、原油の國際的な供給不足を見事について
投機家はバレル55ドルまでの大相場に仕立て上げた。
実にしたたかである。
為替相場では、米国の双子の赤字、なかでも巨額の
貿易赤字という米国のアキレス腱にねらいをつけた。
弱点をついてくるのは動物の世界では常套手段である。
ドル安に向けてここぞと攻めたててくるだろう。
マイナス材料には素直にマイナスに反応してドルを売る。
プラス材料も十分あるが、プラス材料にはほとんど反応しない。
1ドル=105円は当面の壁と見られていたが簡単に破られた。
日本銀行が1ドル=105円を越えてくればドル買い・円売り
介入すると警戒されてきた。谷垣経済担当大臣は、
「今回の相場の動きには重大な関心をもって見守っている。
必要とあれば果敢に対応する。」と発言していた。
日本政府の巨額の介入には長い歴史がある。マーケットの
受け止め方は、今年3月以降は積極的な介入はなくなったと
評価している。日本の大型介入なし、協調介入なしの読みであろう。
ところが、円高にも原油高にもいたって冷静な反応が目だつ。
原油相場が有史以来の高値に暴騰した。日本の産業界は
冷静に反応した。ドル相場は1ドル=102円台とここ4年半ぶりの
安値をつけた。にもかかわらず、日本の産業界は大騒ぎを
していないようだ。
第1次・第2次オイルショック時代は高値もさることながら
原油が手に入らないという恐怖感が産業界に横溢していた。
現在は原油供給に対する恐怖感がまったくない。
1ドル=360円から1ドル=308円の第1次ドルショョック、
1ドル=79円までの円高や再三再四ドル安の洗礼を
受けて日本経済はドル安の免疫力をつけて来た。
日本企業の免疫力には血のにじむような合理化
努力が上げられるのは当然として、今回の円高
局面でも産業界が落ちついて背景の一つに
ドル建て以外の取引のウエートを日本全体で40%台まで
個別企業レベルではさらにそれ以上比率を上げて
きたことが指摘出きる。
人民元切り上げ問題でも比較的冷静なのは企業
サイドで中国貿易を円建てに切り換えてきたことが
大きいと指摘される。対応していない企業があれば
それは論外である。
日本人は一般論であるが、自分自身の健康には
全く無防備な人間でも、自分の企業、自分の会社の
健康には目一杯気をつけ、企業の体質改善に
努めてきた。
いま日本で滅私奉公という言葉を口にする人は
ほとんんどいない。しかし会社のため企業のため
家族や自分の健康を度外視してひたすら円高にも
原油高かにも抵抗力をつけて来た。誠に皮肉なことである。
一人一人の人間が心身ともにくたびれ果てたら、
とどのつまりは円高にも原油高にも日本という国そのものが
精魂尽き果てて抵抗力をなくすだろう。
企業の円高、原油高対策も大事である。しかし、
自分の健康は自分で守る心構えはそれ以上に
大切であろう。
これは資産管理も同じである。円高になれば自分の資産は
どうなるか。原油高になれば自分の資産はどうなるか。
郵政民営化になれば自分の人生設計はどうなるか。
1ドル=100円への一挙のドル安〔円高〕になれば自分に
とってどうなるか。日本人一人一人が自分で考えて、
自分で行動することがますます大切になってくるだろう。(了)
11月19日、NY為替市場では、米連邦制度理事会(FRB)議長、
グリーンスパン発言を受けて、ドル売りが加速した。
為替ディーラーは、ブッシュ大統領再選前後から、
米政権がドル安容認との読みからドル先安をはやしていた。
いつでも焚けるように薪を積み上げていたところへ、
グリーンスパン発言が正に火を点けたようなものだ。
たまらず1ドル=102円台までドル安が進んだ。
ドイツ、フランクフルトでの講演会で、グリーンスパン氏は、
「米国は、経常赤字の増加を見て見ぬふりをすべきでない」と
発言した。同氏は「経常赤字は問題にする必要はないが、
それが増えてくると米国への海外との収支バランスが
ネットでマイナスにになる。米国にとってそれが一番
厄介だ。」とズバリ核心をついた発言をした。
米スノー財務長官は、週末ドイツ、ベルリンで開催予定の
G20会合を前にして、為替問題は議題に含まれていないと
かわした。しかし為替ディーラーはスノー発言を一の矢に、
グリーンスパン発言をニの矢に使って打ち込んだ。
原油相場では、原油の國際的な供給不足を見事について
投機家はバレル55ドルまでの大相場に仕立て上げた。
実にしたたかである。
為替相場では、米国の双子の赤字、なかでも巨額の
貿易赤字という米国のアキレス腱にねらいをつけた。
弱点をついてくるのは動物の世界では常套手段である。
ドル安に向けてここぞと攻めたててくるだろう。
マイナス材料には素直にマイナスに反応してドルを売る。
プラス材料も十分あるが、プラス材料にはほとんど反応しない。
1ドル=105円は当面の壁と見られていたが簡単に破られた。
日本銀行が1ドル=105円を越えてくればドル買い・円売り
介入すると警戒されてきた。谷垣経済担当大臣は、
「今回の相場の動きには重大な関心をもって見守っている。
必要とあれば果敢に対応する。」と発言していた。
日本政府の巨額の介入には長い歴史がある。マーケットの
受け止め方は、今年3月以降は積極的な介入はなくなったと
評価している。日本の大型介入なし、協調介入なしの読みであろう。
ところが、円高にも原油高にもいたって冷静な反応が目だつ。
原油相場が有史以来の高値に暴騰した。日本の産業界は
冷静に反応した。ドル相場は1ドル=102円台とここ4年半ぶりの
安値をつけた。にもかかわらず、日本の産業界は大騒ぎを
していないようだ。
第1次・第2次オイルショック時代は高値もさることながら
原油が手に入らないという恐怖感が産業界に横溢していた。
現在は原油供給に対する恐怖感がまったくない。
1ドル=360円から1ドル=308円の第1次ドルショョック、
1ドル=79円までの円高や再三再四ドル安の洗礼を
受けて日本経済はドル安の免疫力をつけて来た。
日本企業の免疫力には血のにじむような合理化
努力が上げられるのは当然として、今回の円高
局面でも産業界が落ちついて背景の一つに
ドル建て以外の取引のウエートを日本全体で40%台まで
個別企業レベルではさらにそれ以上比率を上げて
きたことが指摘出きる。
人民元切り上げ問題でも比較的冷静なのは企業
サイドで中国貿易を円建てに切り換えてきたことが
大きいと指摘される。対応していない企業があれば
それは論外である。
日本人は一般論であるが、自分自身の健康には
全く無防備な人間でも、自分の企業、自分の会社の
健康には目一杯気をつけ、企業の体質改善に
努めてきた。
いま日本で滅私奉公という言葉を口にする人は
ほとんんどいない。しかし会社のため企業のため
家族や自分の健康を度外視してひたすら円高にも
原油高かにも抵抗力をつけて来た。誠に皮肉なことである。
一人一人の人間が心身ともにくたびれ果てたら、
とどのつまりは円高にも原油高にも日本という国そのものが
精魂尽き果てて抵抗力をなくすだろう。
企業の円高、原油高対策も大事である。しかし、
自分の健康は自分で守る心構えはそれ以上に
大切であろう。
これは資産管理も同じである。円高になれば自分の資産は
どうなるか。原油高になれば自分の資産はどうなるか。
郵政民営化になれば自分の人生設計はどうなるか。
1ドル=100円への一挙のドル安〔円高〕になれば自分に
とってどうなるか。日本人一人一人が自分で考えて、
自分で行動することがますます大切になってくるだろう。(了)