事務用品メーカーL社株主総会風景
江嵜企画代表・Ken
大阪市中央区農人橋にある事務用品メーカーL社の株主総会が5月22日午前10時から開かれた。当社はベトナムへ企業進出している。当社の経営者がここ数日のベトナムでの動きをどう判断しているか確かめたく、株主総会に出かけた。会場の様子をいつものようにスケッチした。
型どおり事業報告が終わり、10時半過ぎに株主からの質問に入った。程度の差こそあれどこの株主総会でも自分だけが株主のように感違いして、延々と質問する人がいる。この日も例年通り同じおじさんが真っ先に手をあげた。
当然のことながら議長は質問に入る前に「出来るだけ多くの方にご質問の機会をつくりたい。株主番号とお名前をいい、簡潔にご質問ください」と、あらかじめ釘を刺した。
①売り上げ100億円、売上利益率5%目標、共に未達だ。②新社長に変わって2年経った。そろそろこんな会社にしたいという展望を聞かせて欲しい。③社外監査役と言うが、実態は、取り引先の人間だ。将来必ず問題になる。以上3点についてお答え願いたいと質問をはじめた。
新商品開発では最近AquaBag(アクアバッグ)等では人気商品に成長した。海外市場開拓にも力を入れ、海外見本市にも積極的に参加している。海外仕様にも合わせた商品も順次商品化しているなどと例年以上に具体的に丁寧に答えた。
10数分ひとしきりやりとりがあったが質問者は消化不良とお見受けした。『どなたか他にご質問は?』との議長の声。この機会を逃せば聞きたい話も聞けなくなる。「はい」と筆者が2番目に手を挙げた。
①最近のベトナム情勢と中国との複雑な関係を踏まえてベトナム操業に対する展望、②ベトナム工場の会社全体の売り上げ及び利益に占める比率についてお聞きしたい。」と2点に絞って手短かに質問した。
ベトナム担当のS氏が指名された。S氏は冒頭、ベトナム情勢についてご心配いただき感謝申し上げますと話したあと例年になく詳しく説明した。
『5月13~14日にベトナムの中国関連の工場で中国政府の行動に反対するデモが発生した。(中略)5月17日になってベトナム政府として違法なデモは断固取り締まるとの政府声明が出た。事後事態は鎮静化している。』と話した。
『当社の工場はベトナムでは北部のハイフオン、ノムラ工業団地内にある。幸い被害は全くなかった。リスクは少ない。ご安心願いたい。2番目の質問のベトナムの比率につては会社の売り上げの20%を占める』と答えた。
S氏は話を続け『アセアン関係国を対象にしたアンケート調査がある。ベトナムではどこの国が友好的かの質問に1位は日本だった。日本企業にとってベトナムは一番事業を進めやすい国だと考えている。」と話を終えた。
「他にご質問は?」と議長が声をかけた。例のおじさんが再び手を挙げた。「ベトナム工場の話が出ましたので国内の工場の静岡工場はどうか。是非聞きたい。」と質問を続けた。
議長から指名された商品担当役員さんの答えの中で「ベトナムは手づくり。静岡はオ―ト。」との答えが面白かった。この時ベトナムの生産比率は30%だと話した。昨年までの株主総会での話と比べて、当社のベトナムの重要性が増しつつあると率直に感じた。
今回の株主総会では「事務用品のマーケットは100円ショップがライバルだ。」という話を新鮮な気持ちで聞いた。最近の100円ショップは安いだけでない。内容を伴った商品を提供して来ている。そのため値段競争は熾烈だと話した。
一方、ドル高円安で輸入コストが年々上がる。石油の値上がりが将来とも予想される。石油化学製品の値上がりからコスト上昇は必至。コスト削減を進めながら同時に商品開発に精力的に取り組んでいきたいと株主に理解を求めた。
1時間程度の株主総会で何が分かるかという見方もある。しかし、営業報告書をただ読むだけでは尚更分からない。自己満足かもしれないが、たかが株主総会。されど株主総会と思う次第である。(了)