画・江嵜 健一郎
例の更地に咲いた金木犀の小枝を2~3本折って家に持ち帰り
色紙に初めて描いた。花の持ちはせいぜい2日たらずであるから
結構忙しい。やはり野に置け蓮華草という言葉がある。自然の
状態にいる姿が一番美しいのだと思う。
今年の金木犀は例年より長い期間咲いていたように感じる。
二度咲きした場所もあると巷のうわさも耳にした。気のせいか
香りは例年より控えめだったような気もする。場所によって
違うのかもしれないが。
更地の小道一つ隔てたところに小型のコンビニがある。
一服付けに外に出て来たいつものご婦人に「今年の金木犀は
いかがでしたか」と声をかけた。「つぼみから花をつけてから
咲いている期間が長かった」と答えてくれた。
「いつも見守っていただいてありがとう」というと
「いえ、いえ、こちらこそ、ありがとうですよ。」と笑顔で
答え「もうすぐ南天の赤い実が見られるので楽しみ。鳥が来て
南天をついばんでいるよ。食べたあと種を店の周りに落とすから
分るのよ。」と一言話した後「仕事がありますから、失礼します」と
店に入った。
こうした何気ないやり取りが一番ありがたい。これも花が取り持つ縁だ
と思う。花を描いているといつも元気をもらえる。花にひたすら感謝である。(了)