小菊
江嵜企画代表・Ken
ひとしきり降った雨が止んだところで、いつもの更地パトロールに
昼前に出かけ、小菊をスケッチした。スケッチには小一時間ほど
かかった。数羽のシジミ蝶が、飛び立っては戻り、また飛び立つ。
花に止まると身じろぎ一つせず蜜をせっせと吸った。
えんじ色の少し大きめの蝶が、突然、飛んできて、小菊の頭に
止まった。その時、Kさんが蝶になって、震災跡地の阪神青木
まではるばる尋ねてきてくれたのだと思った。
実は、昨晩、10月12日に、母がなくなりました。なんどか
お電話したが、通じず今日になって申し訳ありませんとKさんの
娘さんという方から電話があった。Kさんは亡母の従妹である。
Kさんには「スケッチ&コメント」を2ケ月に一度のタイミングで
まとまったところで送り続けて来た。送ると即ハガキにびっしり
文字をつめて礼状が届いた。そのKさんからここ2ケ月便りが
ない。気にはなりながら電話もせずいたことを今更のように
後悔している。
実は、昨晩、娘さんの電話がある前にハガキを出しに表に出ようと
小銭入れからカギを出そうとした。ところがない。カギがないと
出るに出られない。必死にカギを探した。どこからも出て来ない。
部屋も探した。見つからない。
ところが、Kさんがなくなった報せがあって、部屋に戻った。
なんとカギが書斎の片隅に落ちているではないか。娘さんからの
電話が済むまでkさんがカギを預かってくれていたのだ。筆者と
娘さんと連絡がとれた。ご用済みになったのでカギを部屋に
Kさんが落としてくれたと信じている。
11月3日、彼女のお墓参りに出かける。その時小菊のオリジ
ナルの絵を娘さんに受け取ってもらうつもりだ。図らずも
思い出に残る絵が描けて満足している。世の中には不思議な
ことは結構あると常々思っている次第である。(了)