思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

報告・連絡・相談の禁止---社員「個人」の自由と責任ーー会社成功の秘訣

2016-04-14 | 社会批評

楽園企業の「ホウレンソウ禁止」がヤバすぎる 「社長室の隣に勝手にトイレを作る」って

東洋経済オンライン / 2016413日 80

 

「ホウレンソウが一切ない」のは「人を育てる」ための経営戦略のひとつだった(撮影:和田 英士)


 

「社員が日本一幸せ」ともいわれる未来工業(岐阜県にある電気・設備資材メーカー)。同社は、1日7時間15分就業で残業禁止が原則。年間休日数が140日&有休最長40日で、休みの多さが「日本一」という声もある。しかも驚くほどの高年収で、海外への豪華社員旅行などもあって「楽園企業」と呼ばれる。

同社創業者の山田昭男氏は一昨年他界したが、遺作『山田昭男の仕事も人生も面白くなる働き方バイブル』は、いまも注目を集めている。

今回のテーマは、山田氏が導入した「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の禁止」について。未来工業では「ホウレンソウが一切ない」が、じつはそれが「会社が儲かる」ための経営戦略のひとつらしい。

ホウレンソウ禁止が、会社の利益とどう結びつくのか。長年、同社を取材してきたルポライターが、その「秘密」を明らかにする。

■製品開発は上司に相談しないからうまくいく

「ウチにはホウレンソウはない。もちろん野菜の『ほうれん草』じゃなく、上司への『報告・連絡・相談』の略称の『ホウレンソウ』や。ウチでは製品開発ひとつとっても、担当者が勝手に決めて、完成品まで自分ひとりで仕上げるんや」

未来工業の創業者、山田昭男氏は生前そう話していた。だから未来工業では「ホウレンソウ禁止」だ、と。

未来工業では、もちろん多少の事後報告や相談はあるものの、基本は開発担当者が「一国一城の主(あるじ)」。製品アイテム数が多いこともあるが、個別製品にくわしくない上司が、下手に口出しするのを防ぐためでもある。

「近頃の管理主義は、社員を信用せずに、上司が事細かに口出しして“子ども扱い”をしとる」と山田氏は言うが、上司の気まぐれな口出しに、右往左往させられているビジネスマンから見れば、それだけでも「楽園」に見えるかもしれない。

とはいえ、「すべて任される」ということは、製品の売れ行きが最終的には「担当者の責任」になるので、いい加減な仕事はできない。

では、もし製品が売れなければ、担当者はどんな「責任」をとらされるのか?

結論から書けば、たとえ担当した製品が売れなくても、担当者は「責任」をとらされることはない。

「元に戻して考えればええだけや。『改善を続けるかぎり、失敗にはならない』というのがウチの考え方。その試行錯誤が個人の財産にもなる」というのが山田氏の考えだからだ。

■総務課が決めたトヨタより高い会社見学料金

ホウレンソウがない未来工業では、社長の知らないうちに地方に営業所ができていたり、総務部長の発案で1時間の昼休みが45分に短縮されたこともある。ほかにもまだある、「そんなことまで勝手に決めていいの?」という「ホウレンソウ禁止」の驚きの実例を紹介しよう。

(実例1)総務課が相談せずに決めた、1人2000円の会社見学料金

総務課の社員たちが勝手に決めたのが、1人2000円の会社見学料金。東京の美術館でも1500円程度だし、トヨタ自動車も会社見学は無料だからメチャクチャ高い。「料金を高くすれば誰も来なくて、ヒマになる」と考えたかどうかは不明だ。

しかし結果は、国内外から見学者が増え、以前より忙しくなって「年商なんと2000万円」の日本一稼ぐ(!?)総務課が誕生した。

(実例2)嘘の報告OKでも、1回499円の社食を誰もごまかさない

同社の本社社員食堂は、定食・麺類・どんぶりのどれでも一食499円。そのうち200円を会社が補助しているが、「何回社食を食べたか」を記す伝票やカードはなく、あくまでも自己申告制。だから10回食べても「20回食べた」と、嘘の報告をしてもバレることはない。

しかし、社員たちの自己申告額と食堂の精算は、毎月ぴったり一致する。ホウレンソウがなくても、誰もごまかさないわけだ。

(実例3)社長への相談なしに誕生した「社長室直結のトイレ」

ホウレンソウ禁止を逆手にとり、社員らが内緒で設計したのが山田氏の社長室(当時)直結のトイレ。

1985年の新社屋建設時、夏は節電のために山田氏は社内ではランニングシャツとパンツ一丁が定番だったが、お客さんも出入りするため、「下着姿の社長」を見られるのを社員たちが嫌がったか。そこで「社長室直結のトイレ」を勝手に社員たちがつくったのだ。

「社長専用はムダだろ?」と怒る山田氏を、社員らはこうなだめたという。

「いいえ、私たちもしっかりと使わせていただきます。それよりも、『社長室直結のトイレは日本初じゃないか』と建設会社の方が言っていましたよ」

日頃から他社との差別化を説く山田氏を、「日本初(!?)のトイレ」を口実に黙らせたわけだ。しかも、この新社屋と工場建設は社員たちに丸投げで、山田社長はノータッチ。

「社員たちが一番働きやすい本社を建てればエエんや」というのが山田氏の考え方だったが、こうしたホウレンソウ禁止を逆手にとった「常識破り」の数々。

なぜそこまで未来工業は「ホウレンソウ禁止」にこだわるのか?

「ホウレンソウ禁止」の本当の狙いはどこにあったのか。山田氏が筆者に語った印象的な言葉から探りたい。

■ホウレンソウ禁止だから社員は自分で考える

(山田語録1)「『ダメな上司』ほど、部下を管理したがるもんや」

そもそも、「『ダメな上司』ほど部下を管理したがる」と山田氏は言う。「上司に話すだけで、部下は萎縮する。だからホウレンソウは『管理の始まり』なんや。どれほど奇抜なアイデアも、上司に『バカなことを言ってる場合か!』と叱られたくないから。部下は本音の5分の1も話さなくなる」

一方、中小企業は他社には考えつかない、突拍子もないアイデアこそが生命線。ホウレンソウで社員を萎縮させては本末転倒だから禁止、というわけだ。

(山田語録2)「『嘘をついてもエエぞ』と言われると、人はなぜか真面目になるもんや」

「『嘘をついてもエエぞ』と言われると、逆に、日本人は真面目になる。ホウレンソウなしだと、『(会社は)自分を信頼してくれている』と考えるからや」

一方、「嘘をついたらヒドイ目にあうぞ」と脅かす大企業の管理主義は、子供がいくつになっても口うるさい母親の行動パターンを、社会人相手に続けているのと同じ。だから、山田氏はそれを「子ども扱い」とバカにしていた。

(山田語録3)「管理しないほうが人は自分の頭で考えて、よく働くんや」

ホウレンソウを義務づけられると、社員はその分だけ、「課長や部長もOKしたじゃないですか」と、責任転嫁する余地も広がる、と山田氏は指摘する。

「それだと、社員一人ひとりの問題解決力や判断力は、いつまでたっても育たない。ホウレンソウがないからこそ、自分たちの頭で考え、行動し、その結果を自分なりに分析できる『プロ社員』に近づけるわけや」

「指示待ち社員」が1万人いる会社より、自分で考えて動く「プロ社員」が1000人いる会社のほうが儲かる。ホウレンソウ禁止は、そういう「人を育てる」ための大きな戦略のひとつだったのだ。

「管理したがる上司」と「任せきることのできる上司」、そして「指示待ち社員」と「自分で考えて動くプロ社員」――。あなたの会社と、あなた自身はいったいどちらだろうか。

 

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