いま、BSJAPANで、坂本龍一のヨーロッパ各地における演奏を聴きました。
(坂本の演奏旅行を丹念に追った見事な番組)
わたしは、音楽のジャンルに囚われず自由で多彩な活動をしてきた坂本龍一は、それにも関わらず「頭の音楽家」から抜けられないな、と感じてきましたが、このライブを聴き、心底感動しました。
頭の音楽家から【心身の音楽家】へと見事な進展・変貌を遂げた坂本に、喝采を浴びせたいと思います。
本人の言う通り、ロンドン公演の初日からはピアノの弾き方が変わり、音楽は自然性を獲得し自在な動きをもつようになりました。力が抜け、のびやかになり、彼の内から湧き上がる音が豊かに響きわたります。
透明になった音はダイレクトに聴く者の心身に届き、現代音楽的な臭みが消え、厚みを増したのです。ピアノの音はしなやかさと優しさを獲得し、音楽がベタっとすることなく浮かび上がります。ダイナミックで広々とした世界が開け、聴いていてほんとうに気持ちがよいのです。真に内側から、心身全体で音楽するようになった坂本龍一から目(耳)が離せなくなりそうです(嬉)。
武田康弘