クルレンツィスの演奏で、わたしは「フィガロ」に開眼しました。
なんいう面白さ、まるで音楽のイデアが目に見えるよう。ああ、これがモーツァルトなんだな、と感じました。様式も時代も超え、ムーサ(ミューズ)が現れ出るのを視るー聴くのは心躍る体験です。
今までの「フィガロ」の演奏は、モーツァルトの楽曲のイデーと実際に演奏される音楽との間に介在物が存在していたのだな、それが「楽しめない」原因だったのか。古典的なオペラとはこういうものーそういうわたしの認識の間違いに気付きました。
クルレンツィス+ムジカエテルナ(彼がつくった古楽器と現代楽器を使い分ける凄腕オーケストラ)を体験してしまうと、かつての名演カール・ベームの演奏も、21世紀初頭の古楽器による名盤=ルネ・ヤーコプスも邪魔な膜=介在物があることが感じられます。クルレンツィスのフィガロは、愉悦感に溢れ、躍動し、器楽も歌唱もとても自然です。
音楽好き、モーツァルト好き、オペラ好きの方で、まだ体験されていない方は、ぜひ。心が自由で快活になり、身体が自然と動きだし、豊かな世界が広がります。どこもかしこも面白く、病みつきに~~~。輸入盤ならば、3枚組全曲が2500円程度で買えます。
武田康弘