人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

地上最大のロボット

2016-04-07 18:30:30 | 回想
昭和39年という年は、我が国の歴史においても東京オリンピックの開催、新幹線、東名高速の開通など重要な事績が相次いだ特筆すべき年だったと思います。
私の人生においても観るもの、触れるもの、もう驚き、楽しさの連続でした…晩秋に差し掛かり、肌寒さを感じ始めた頃までは…
”フランケンシュタインの怪物シンドローム”というのは、人が聞いたら、”何だそりゃ!”となるのでしょうが、(家族は誰一人本気にしてくれませんでした)本当に私の歴史におけるおそらく最初の怪事でした。
ある思いが頭からずっと離れなくなる…それは現実のことに起因している訳でも無いのに…要するに私の内面は生来から空想、現実の境目からズレていたようです。
”ああ、人生にはかくも訳のわからないことに見舞われてしまうのか…ああ…この思いを頭から分離出来る魔術は無いものか…(御年8歳にして悩める子供!天才か、モンスターか…)
そんな時、僅かな時間ながらこの苦悩から解放されることが出来たのは、忘れ得ぬコミック「鉄腕アトム」の「地上最大のロボットの巻」を読んだことでした。アトムといえばもうこの物語に尽きる、と言っていいほど強く印象に残っています。
アトムも同時にテレビ放映されていましたが、この巻がオン・エアされたのは確か翌春でした。
世界で最も強いことを誇示したい、というある国王の野心によって造られた悲劇のロボット、プルートウを巡るお話です。
”プルートウ!、強い、カッコイイ!”…「鉄人28号」に出てきたブラックオックスを彷彿とさせる黒を基調にした、いかにもダークヒーローという感じで、たちまち好きになってしまいました。
プルートウは、七人もの各国の強者として名高いロボットたちに一方的に挑戦状を叩き付けて、問答無用とばかりに次々と破壊して行き、日本のアトムにも戦線布告をし始める…「鉄人」と違い、ここに登場するロボットたちは自由に言葉を話し、豊かな知性も感情も持っていて、ロボットというよりサイボーグに近い感じで、プルートウによってバラバラに破壊されてしまう様はいささか残酷に感じました。
彼にはそれなりに相手を思いやり、内省し、アトムの妹ウランに好意を持つ?といった感情も持ち合わせているのですが、如何せん「敵ロボットを破壊せよ!」という、宿業にも似たプログラムに従わざるを得ないのです。
そこにもう一人、私が大好きになったロボットが登場します。オーストラリアで孤児院の世話をしているエプシロンという平和主義のロボットです。
この愛すべきロボットもプルートウと戦わねばならないのか?
最後に残った者同士のアトムとは親友になり、「コワイ…戦いたくない…」とすっかり弱気の虫ぶりをこぼしたりしています。
このように、好戦的でなく、最も非力と思われたエプシロンでしたが、実は大変な武器を持っていた!
それは光子をエネルギー源にしていた事です。日中は太陽からそれを取り入れることが出来、その力は無尽蔵となる…本気を出したら彼こそは最強になれるではないか!…しかし、彼は戦闘用に造られていなかったのです…。
一度はアトムを交えた三人の間に友情が芽生えたかに思えたプルートウでしたが、どうしても宿命には勝てず、マトモに戦えば不利と、夜間にエプシロンに戦いを挑みます。
意を決して果敢に戦ったエプシロンでしたが、孤児を庇おうとしたスキを突かれて破壊されてしまいます。
残された両手の中で泣き叫ぶ孤児…今も涙を誘います…。
私はこれでプルートウが憎くてたまらなくなったのですが、彼も突如出現した、さらに強い馬力を持った破壊の権化のような正体不明のロボット、ボラーの前に倒されてしまいます。複雑な気持ちが交錯しましたが、結局プルートウも自由意志を持たない哀れな被造物だったのです。
ボラーは実は、国王の命令でプルートウを造った同じ博士が、エゴに憑りつかれた国王にその愚かさを気付かせようとして造られたのでした…。

”強けりゃいいってもんじゃない!”私は自分が悩みを抱えている時、自分の力でどうにもならないハメになっている時、とても実感させられることです。おそらく人生で初めて気付かされたんじゃないでしょうか…
例の怪物シンドロームはどうなったか?
3月頃春の到来を思わせる、陽だまりに浴しているうち、いつの間にか解消されました。
まるでそれまで覆っていたベールのようなものがスーッと引いていったような感じでした。
食い入るようにテレビ版の件の物語を観ていた時、私は普通の子供になっていました。普通でいたいとどれだけ思ったことか!(いやあ…普通ってのは幸せな事です…)
季節の変わり目というのは実に節目と重なるものだと改めて思います。
そして、太陽エネルギーこそ、無尽蔵の地上最大、最強のものに違いない…それは誰のものでも無く、誰もがその恩恵を受けることが出来る…
明日は又ポカポカ陽気だそうです…。









コメント
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