秋の夜長の読書に相応しいのか、どうか分かりませんが、とりあえず読み終えたばかりの本を取り上げてみます。(読後の夢が悪夢となるか、至福となるかは分かりません)
作者フィリップ.K.ディックは、SF小説ファンなら知らない人は居ないでしょう。
私は、その分野というより、小説というもの自体それほど熱心に読んでいる訳でも無いので、ディックとの出会いは初めてでした。
ファンの間で"ヴァリス三部作"と呼ばれているものの最初の作品とのこと。
これはしかし、SFという言うには、哲学的、神秘主義的な色合いが強く、ディックの読者の間でも評価が別れているらしいです。
それもそのはず、これは自身の神秘体験に基づいて書かれているのです。
実のところ私がこの作品を読みたいと思ったのは、巻末に載っていた「秘密教典書」なる文章にあったのでした。
何だか、現代版ヘルメスの啓示書=エメラルド.タブレット(古代より西欧神秘思想、錬金術、魔術などに影響を与えた文書)とも、クンダリーニ.ヨガの指南書とも、ニューサイエンスのテキストとも通うものがありますが、私の"書かれざる「秘密教典」"とも通じるところもあります。
「ひとつの精神が存在する。しかしそのもとではふたつの原理が抗争する」
「宇宙は情報であり、われわれはその中で静止しているのであって、三次元内にも空間内にも時間内にも存在しない。われわれは送り込まれた情報を現象界に実在化する」
「グノーシスーさらにふさわしい言葉を使うなら想起(忘却の喪失)ーによる救済が必要である」
ディックが神秘体験を持ったのは74年のことで、彼がその少し前米国西海岸を中心に隆盛した人間性復興運動、ヒッピー運動、ポップ.オカルトなどの洗礼を受けているであろうことが、この作品に垣間見れるように想像されますが、彼がその体験を契機として、主として探究にのめり込んで行ったのは所謂"グノーシス主義"なのでした。
これがこの作品にとどまらない、ディックの晩年の精神世界を紐解くキーワードでしょう。
1~3世紀、キリスト教の成立過程で欧州地中海地方を中心に派生したというこの思潮ですが、正統派キリスト教と違って、独立した主義、学統というものがあった訳ではなく、正統的でない多様なキリスト教的思想の総称のことです。オリエント、古代宗教などと混稽しているのが特徴で、このために正統派から異端とみなされたのです。
グノーシスとは知識という意味だそうですが、それは聖霊の取り成しによって開かれる叡智といったものでしょう。これが上記の情報のことだと読み取れます。
ディックは、正統派は決して認めないであろう、聖霊による洗礼を受けたのでしょうか?...
その核心部分は、別の彼自身の語るところに接してみなければ何とも言えないですが、読み終えてみて、共感出来る部分もありますが、"踏み込みたくない"部分も感じます。うっかり深みにハマるとクスリで前科者になりそうだし、"人工楽園"(ボードレール)から永久に脱け出せなくなりそうです。
どうも西海岸周辺にはクスリ~人工による創造、想像といったイメージが払拭出来ないものが感じられます。
何か本当に超智的なものにゆだねきれていない、超智がすぐ頭脳知に取って代えられてしまうような、何か暗いカオスの中で救いと転落の狭間でもがいているような感じがします。
ああーっと...これは文学作品について書いているんでしたね...
そういうものこそが、小説の面白さなのでした。だったら神もあれば悪魔もありです。それも私のポテンシャルな部分にはあるに違いありません。(ふたつの原理の抗争)
ストーリーは一寸トリップしてるというか、パノラマ式に展開するのでよく覚えていません。
主人公(=ディックか?)は、女友達が自殺してしまうところから狂気に陥る...人気ロック.ミュージシャン製作の映画を見せられ、そこに出てきた「ヴァリス」という、宇宙的人工的情報システム?が自分が受けた現実とも幻想ともつかない体験とダブってしまう...
要するに哲学的、神秘主義的なテーマを持った作品としても、ビート世代の幻想小説としても読めるのです。
それにしても、謎の共同体(秘密結社?)の存在がとても気になったのですが、尻すぼみな感じで物足りませーん。
色々登場人物が死んでしまう中で猫が事故死してしまう..."猫を安易に死なせてしまう小説などもう、読まんi"と、一時は思ったのですが、実はずっと物語全体に渡ってひきづっている...。ディックは、大の猫好きに違いないi リンダ.ロンシュタットも...カリフォルニアですi
「ヴァリス」(創元推理文庫)
作者フィリップ.K.ディックは、SF小説ファンなら知らない人は居ないでしょう。
私は、その分野というより、小説というもの自体それほど熱心に読んでいる訳でも無いので、ディックとの出会いは初めてでした。
ファンの間で"ヴァリス三部作"と呼ばれているものの最初の作品とのこと。
これはしかし、SFという言うには、哲学的、神秘主義的な色合いが強く、ディックの読者の間でも評価が別れているらしいです。
それもそのはず、これは自身の神秘体験に基づいて書かれているのです。
実のところ私がこの作品を読みたいと思ったのは、巻末に載っていた「秘密教典書」なる文章にあったのでした。
何だか、現代版ヘルメスの啓示書=エメラルド.タブレット(古代より西欧神秘思想、錬金術、魔術などに影響を与えた文書)とも、クンダリーニ.ヨガの指南書とも、ニューサイエンスのテキストとも通うものがありますが、私の"書かれざる「秘密教典」"とも通じるところもあります。
「ひとつの精神が存在する。しかしそのもとではふたつの原理が抗争する」
「宇宙は情報であり、われわれはその中で静止しているのであって、三次元内にも空間内にも時間内にも存在しない。われわれは送り込まれた情報を現象界に実在化する」
「グノーシスーさらにふさわしい言葉を使うなら想起(忘却の喪失)ーによる救済が必要である」
ディックが神秘体験を持ったのは74年のことで、彼がその少し前米国西海岸を中心に隆盛した人間性復興運動、ヒッピー運動、ポップ.オカルトなどの洗礼を受けているであろうことが、この作品に垣間見れるように想像されますが、彼がその体験を契機として、主として探究にのめり込んで行ったのは所謂"グノーシス主義"なのでした。
これがこの作品にとどまらない、ディックの晩年の精神世界を紐解くキーワードでしょう。
1~3世紀、キリスト教の成立過程で欧州地中海地方を中心に派生したというこの思潮ですが、正統派キリスト教と違って、独立した主義、学統というものがあった訳ではなく、正統的でない多様なキリスト教的思想の総称のことです。オリエント、古代宗教などと混稽しているのが特徴で、このために正統派から異端とみなされたのです。
グノーシスとは知識という意味だそうですが、それは聖霊の取り成しによって開かれる叡智といったものでしょう。これが上記の情報のことだと読み取れます。
ディックは、正統派は決して認めないであろう、聖霊による洗礼を受けたのでしょうか?...
その核心部分は、別の彼自身の語るところに接してみなければ何とも言えないですが、読み終えてみて、共感出来る部分もありますが、"踏み込みたくない"部分も感じます。うっかり深みにハマるとクスリで前科者になりそうだし、"人工楽園"(ボードレール)から永久に脱け出せなくなりそうです。
どうも西海岸周辺にはクスリ~人工による創造、想像といったイメージが払拭出来ないものが感じられます。
何か本当に超智的なものにゆだねきれていない、超智がすぐ頭脳知に取って代えられてしまうような、何か暗いカオスの中で救いと転落の狭間でもがいているような感じがします。
ああーっと...これは文学作品について書いているんでしたね...
そういうものこそが、小説の面白さなのでした。だったら神もあれば悪魔もありです。それも私のポテンシャルな部分にはあるに違いありません。(ふたつの原理の抗争)
ストーリーは一寸トリップしてるというか、パノラマ式に展開するのでよく覚えていません。
主人公(=ディックか?)は、女友達が自殺してしまうところから狂気に陥る...人気ロック.ミュージシャン製作の映画を見せられ、そこに出てきた「ヴァリス」という、宇宙的人工的情報システム?が自分が受けた現実とも幻想ともつかない体験とダブってしまう...
要するに哲学的、神秘主義的なテーマを持った作品としても、ビート世代の幻想小説としても読めるのです。
それにしても、謎の共同体(秘密結社?)の存在がとても気になったのですが、尻すぼみな感じで物足りませーん。
色々登場人物が死んでしまう中で猫が事故死してしまう..."猫を安易に死なせてしまう小説などもう、読まんi"と、一時は思ったのですが、実はずっと物語全体に渡ってひきづっている...。ディックは、大の猫好きに違いないi リンダ.ロンシュタットも...カリフォルニアですi
「ヴァリス」(創元推理文庫)