
「いやぁ~、キツかったです。疲れました~ぁ」
やっとの思いで潮見坂を登り切り、汗を拭きながら、街道の道路脇に
建つ施設の玄関に立った。
「距離は600mほどしかないのですがね。キツいですね、私は六年間
毎日朝晩上り下りして通学しましたよ」と、坂を登り切った左側にある
「おんやど白須賀」で、受付に座る男性が答えながら迎え入れてくれた。

白須賀宿の入口にある無料休憩所「おんやど白須賀」は、東海道宿駅
開設400年を記念して開館した、宿場の資料館兼案内所兼休憩所(白須
賀宿歴史拠点施設)だ。

内部では宿場の概要や、津波の被害、移転した経緯などがジオラマや
パネルで分かりやすく解説されている。
中でも津波の痕跡の残る地層は、災害は繰り返すことを警告していて、
興味深い資料である。
お茶を飲める休憩スペースもあり、坂を登り切り、ほっと一息入れる
には丁度良いところで、何より無料で利用できるのがありがたい。

館への入り際、建物の周りにピンクのかわいい花を付けた作物が植え
てあるのが目に付いた。
件の男性に問うと、「ジャガイモの花」だと教えてくれた。
浜松の三方原台地では、ジャガイモの生産が盛んで、粘土質の赤土が美
味しい芋を育てるらしい。
今では三方原馬鈴薯(男爵いも)というブランドで人気だという。
この地も土質が同じで、美味しい芋が出来るので、同じ名前で出荷してい
るのだそうだ。
改めて周囲を眺め回してみると、赤土の台地が広がっている。

「人家の壁の色赤く見ゆるは、手もて赤土を塗れるなり」
古のガイドブックでは、此の宿をこう紹介している。
昔はこの土を壁に練り込んでいたのである。(続)


