簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
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食べたまま、書いてます。

4分間停車・ホームでの会話 (JR乗り潰しの旅・飯田線)(2021/02/12)

2021-02-12 | Weblog


 静岡県から県境を越え、長野県に入ると、その最南端に位置するのが
中井侍駅だ。「どう読むのか・・・」と、思ってしまうが、そのもので
「なかいさむらい」と読む。
狭いホームには、コンクリートで覆われた急斜面の崖が迫っている。
そんな乗客もいない山間の駅にも、列車は律儀に発停をくり返している。



 相変わらずのトンネルの連続で、左手に流れる天竜川が時折思い出し
たように顔を出す。やがて伊那小沢に到着し、ここで4分の停車がある。
前後をトンネルに挟まれた地であるが、ここは2面2線あり、行き違い
が出来る駅である。
ホームからは対岸の国道418号線に通じるコンクリート製の水神橋を望
むことが出来る。



 豊橋を出てここまで、凡そ3時間が経過している。
是までも幾つかの駅で、長時間の停車が有り、そのたびに一部の乗客は
ホームに出て、手足や腰を伸ばしホームを行き来する姿を見せていたが、
その頃は、誰もが他人には無関心で、己の殻にこもっている風であった。



 しかし、さすがにこの辺りまで来ると停車時にホームで寛ぐ面子も限
られてくる。そうすると不思議なもので、何となく同類の仲間意識みた
いな物が芽生え、互いにその存在を意識し合い、何時しか距離が狭まり、
顔を合わせ、ごく自然に馴染んで行く。



 向かい側を見ると、道路の白いガードレールも見え隠れしている。
近くには、僅かながら人家も見えるが、人の気配は感じられない。
目の前は山並みをぬって流れる天竜川だ。

 そんな秘境とは言われぬ長閑な山里の風景を眺めながら、ホームでは
同好の見知らぬ士との会話が生まれ始めている。(続)





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