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玉屋、鶴屋、会津屋は関で泊まるなら、ここと言われたほどの大旅籠、
関宿を訪れる旅人のあこがれの宿であった。
玉屋は「関宿旅籠玉屋歴史資料館」として有料で内部が公開されている。
会津屋は関地蔵院の前で、うどんそばの食事処として営業を続けている。
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鶴屋も千鳥破風の残る、間口六間の建物が残されている。
脇本陣を務めていたが、御用の無い折は一般の旅人も泊めていたという。
「関まちなみ資料館」は、江戸末期の頃の伝統的な町屋建築と言い、有
料で内部が公開されている。
関宿では、このように特徴有る町屋の趣を随所で見ることが出来る。
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庇の下に店先を風雨から守る「幕板(まくいた)」が取り付けられた
町屋を見かけることがある。
二階屋窓の手摺や格子にも様々な工夫があり、弁柄初めの蔀、昔ながら
の潜り戸のある表戸、連子格子・出格子の家も多いが、明治以降に付け
られた物も多いと言う。
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町屋は細部の意匠にも拘っていて、漆喰の彫刻や細工瓦などが随所で
見られる。家運長久子孫繁栄を願い、職人が技を凝らして拵えてものだ。
又、商家の屋根には、瓦屋根の付いた立派の看板が掲げられている。
江戸側は「ひらがな」、京側は「漢字」で書かれ、旅人が向かう方向を
間違えないように細やかな心使いがされている。
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店先には商品を並べたり旅人が腰を下ろして休息の場として使われた、
上げ下ろしの出来る「ばったり」がある。
又、玄関の柱などには、牛や馬を繫ぐ環が打ち付けられていて、高い位
置は馬用で、低い位置は牛用と使い分けていたらしい。(続)
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