「帰去来」と言うタイトルはけっこうあるようで、
小説だけでも国木田独歩、太宰治、北原尚彦・・・
さだまさしのアルバムだったりもする。
本来の意味は、
故郷に帰るために官職をやめてその地を去る事である。
さて、大沢在昌の帰去来は、比較的新しい2019年発売で、
現代と過去を行き来して事件を解決する女性警察官のお話。
現代の志摩由子は警察官で殉職した父親を殺した犯人を捕らえるため、
刑事になるがどちらかと言うとお荷物であった。
ある日、公園での張り込みで犯人に首を絞められ死にかける。
気が付くと由子は「アジア連邦・日本共和国・東京市」の
市警の警視になっていた。そこでは現代で別れた恋人の里喜が
自分を支える秘書官であり、自分が若くして出世したエリートで
全く違ったキャラクターになっていた。
里喜に全てを話した由子は町に連れて行ってもらうが、
闇市や荒廃した様子から過去にタイムスリップした事を知る。
実は大沢在昌の小説は最初から引き込まれる事がほとんどで、
この帰去来は初めて出だしからしばらく面白くない(笑)、
全く引き込まれない(爆)と思った。
いつもの大沢作品であればすぐに読み終えてしまうのに、
かなり時間がかかってしまった。
読み込んで行くうちに面白くなってきたのだが、
どうも私、タイムスリップ物に弱いようで、
以前インド映画で過去と現代を行き来する作品を観た時にも、
全く面白いと思わなかった事があったのである。
現代と過去とで家族構成が違っていたり、
現代と過去を行き来できる特殊な能力を持った人間がいたり、
タイムマシンのような機械があったり、
時間を超えて犯罪を犯す人間がいたりするのだが、
過去に戻り警視志摩由子を演じているうちに、
優秀な警察官になっていく。
そして現代に戻った(昏睡から目覚めた)時に、
由子は別人になって優秀な刑事になっているのだった。