2009年発行の東野圭吾の小説的エッセイである。
タイトルから解るように2007年のトリノオリンピックが題材で、
2006年「容疑者Xの献身」で直木賞を受賞した翌日から、
トリノオリンピックの取材に出かけた際の様子を書いている。
作者曰くエッセイは苦手と言う事でこの作品は、
愛猫の夢吉がある日突然、人間の姿で現れ同行するというスタイルである。
2002年から突如としてスノーボードに目覚めた作者は、
ウインタースポーツを題材にした作品も書いており、
冬季オリンピックを取材と言う名目で観戦に行った。
トリノと言えば! 荒川静香である。
スピードスケートやジャンプも期待されたが、
日本選手団は金1個にとどまった。
作者はさまざまな競技を取材(観戦)しているが、
開場へのアクセスが悪い事や環境に苦戦している。
海外に行った事がある人は多いけど、
観光地はたいがい行きやすく環境も整えられている。
しかし、インドの世界遺産全てを制覇した私は、
そんな生易しいい場所にのみ観光地があるわけがない事を知っている。
またインドのF1GPとインドで開催されたコモンウェルスゲーム
(イギリス連邦に属する国のスポーツ大会、アジア大会みたいな物)を
観戦した私は身をもって知っているわけである。
なので作者の大変さを読んで「そうそう」と思えたし、
作者のスポーツに対しての思いのたけを知り感心した。
暖冬によって雪が不足し冬季オリンピックの開催を案じる作者が、
将来、雪がなくなった時代の事を想像して書いている最終章も、
なるほど、そうなる恐れもあるなと感じた。