カレーなる日々 / शानदार दिन

インドの日常を中心に日々を綴っています。

「空の拳」角田光代

2025年01月20日 21時24分59秒 | 本 / BOOKS

2015年発行の角田光代のボクシングをテーマにした小説で
2016年発行の「拳の先」の前編にあたる。

先に「拳の先」を読んだ時には前編がある事を知らなかったので、
編集者である那波田空也が追うタイガー立花と言うボクサーは、
既にライト級ではトップレベルであった。

 

「空の拳」は那波田空也が出版社に入社し、
全く希望しなかったボクシング雑誌の編集部に配属され、
いやいやながらにボクシングの取材を始める所からスタートする。

ボクシングを知るためになんとなく通い始めた鉄槌ジムで、
タイガー立花と出会い、取材しながらファンになり、
同じジムに通う練習生や選手、トレーナーやマネージャー、
関係者などと交流を深めていく。

弱小ジムでタイガー立花は新人王となり、ランカーとなり、
挫折しながら日本チャンピオンになる。

 私の知り合いに日本ランカーやチャンピオンもおり、
 日頃は気さくな良い若者たちであるが、
 やはり上り詰めて行くためには、当然普通ではだめで、
 血の滲むような過酷なトレーニングを繰り返し、
 精神的にも追いつめられているはずだ。

日本チャンピオンの上には東洋太平洋チャンピオンがおり、
その上には世界チャンピオンがいる。
タイガー立花は普通の若者であり、ボクシングを始め、
何かにとりつかれたように上を目指していく。

戦う事にどんな理由があるのか・・・
何のために戦うのか・・・
どこまで行けば満足するのか・・・

プロのライセンスを取っても試合しないで終わる人もいる。
試合には勝敗がある。負けても勝っても続ける人もいれば、
辞めてしまう人もいる。辞めなければならない人もいる。
プロになってもボクシングだけでは食べていけない。

チャンピオンになってもアルバイトをしている人もいる。
世界チャンピオンになり、防衛を重ねて行かなければ、
ボクシングだけでは食べていけない。

タイガー立花だけでなく何人かの選手が登場し、
それぞれの物語が進行していく。

空也はボクシング雑誌が廃刊になったため、
文芸の担当となりボクシングから離れてしまう。
それでもタイガー立花の事は心の片隅にあり、
ある日、TVで試合を観た事でまた続編「拳の先」に繋がっていく。

「空の拳」は「拳の先」ほど重くない。
あくまでもボクシングとの出会い、序章である。
やはり2作続けて読むべきである。

コメント
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