ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ドヴォルザーク/交響詩集

2012-04-10 23:58:59 | クラシック(管弦楽作品)
本日はドヴォルザークの交響詩集を紹介します。全部で5曲あり、それぞれ「水の精」「真昼の魔女」「金の紡ぎ車」「野ばと」「英雄の歌」の題名が付けられています。いずれも「新世界」やチェロ協奏曲などの大傑作を発表した直後の1896年から1897年にかけて作曲されたもので、円熟の境地に達したドヴォルザークの見事な管弦楽法が堪能できる名作だと思うのですが、演奏機会はあまり多くありません。もったいない話です。

5曲のうち「英雄の歌」以外の4曲はチェコの詩人エルベンの詩集からインスピレーションを得て作られたもので、一連の作品とみなしていいでしょう。この4曲はどれもベースとなる物語が非常に残酷です。ちょっと紹介してみましょう。

まず「水の精」は湖で洗濯をしていた美しい少女が水の精に見初められ、水中に連れ去られて妻にされてしまいます。やがて子供も生まれた彼女ですが、故郷が忘れられず一人で里帰りしたところ、怒った水の精が彼女の家にやって来て子供の首を切って投げつけるという話。「真昼の魔女」は、駄々をこねる子供に手を焼いた母親が「静かにしないと魔女を呼ぶよ」と叱りつけると、本当に魔女がやって来て子供をとり殺してしまうという話。「金の紡ぎ車」は村の娘ドルニチカが王に見初められ求婚されるが、意地悪な継母が彼女を殺し、自分の連れ子を妃に据える。ところが不憫に思った魔法使いの手によってドルニチカは生き返り、しかも魔法使いの贈った金の紡ぎ車を偽の妃が回すと、糸を紡ぐ代わりに彼女と継母の悪事が歌い上げられるという話。「野ばと」は妻が夫を毒殺し、若い男と再婚するが亡き夫の墓の上に生えた樫の木に鳩が巣を作り、哀しげな声で鳴く。その泣き声で自責の念にかられた彼女は遂に自殺してしまうという話。

昔話は残酷なものが多いと言いますが、これは極め付きというか、どれもこれも人が殺される陰湿な話ばかりです。従って、交響詩の方も暗めの曲が多いのですが、そこはドヴォルザークらしく随所に魅力的な旋律を挟み、ドラマチックに盛り上げます。「水の精」ではいかにも神経質そうな水の精の主題の合間に、娘の主題でしょうか牧歌的な旋律が効果的に組み込まれます。「野ばと」も哀愁漂う旋律が基調ですが、中間部で未亡人と若者の再婚の宴の主題としてスケルツォ風の魅力的な舞曲が現れます。「金の紡ぎ車」は4曲中で一番明るく、とりわけ王の狩りのシーンの勇ましい主題とロマンチックなドルニチカの主題が素晴らしいです。この「金の紡ぎ車」などもっと知れ渡ってもいい名曲だと思うのですが・・・



CDはボフミル・グレゴル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のものを買いました。と言うよりもドヴォルザークの交響詩がセットになったCDはこれぐらいしか出回っていません。他にサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルのCDがありますが、こちらは「英雄の歌」も入っていませんし、値段も結構高いです。上掲作は1500円の廉価版でドヴォルザークの交響詩集としてはベストではないでしょうか?
コメント