ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

カウント・ベイシー/ベイシー・プレイズ・ヘフティ

2016-01-07 23:33:12 | ジャズ(ビッグバンド)
2016年のブログはカウント・ベイシー楽団の作品で始めたいと思います。ベイシー楽団については本ブログでも何度か取り上げましたがデューク・エリントン楽団と並んでビッグバンド界の横綱ですね。1930年代から活動している彼らですが、今日取り上げるのは1958年4月にルーレット・レーベルに吹きこまれた作品です。この頃のベイシー楽団は黄金期だけあってまずメンバーが凄いですね。総勢16人、列挙してみましょう。トランペットにサド・ジョーンズ、ジョー・ニューマン、スヌーキー・ヤング、ウェンデル・カリー、トロンボーンにアル・グレイ、ヘンリー・コーカー、ベニー・パウエル、サックスにテナーのフランク・フォスター、ビリー・ミッチェル、アルトのマーシャル・ロイヤル、アルト兼フルートのフランク・ウェス、バリトンのチャーリー・フォークス。そしてリズム・セクションが御大ベイシー(ピアノ)、エディ・ジョーンズ(ベース)、ソニー・ペイン(ドラム)、そして“ミスター・リズム”ことフレディ・グリーン(リズム・ギター)という布陣です。サド・ジョーンズ、ニューマン、グレイ、フォスター、ミッチェル、ウェスとソロでも主役を張れる面々が名を連ねていますが、彼らはごく限られた場面でしかアドリブを披露せず、他ではひたすらアンサンブルに徹するというのがベイシー楽団の凄いところで、名手達が作り上げる分厚いサウンドは他では味わえないワン&オンリーの世界です。



本作はそれに加えて二ール・へフティ(ジャケットでベイシーと一緒に写っている人物)の作曲&編曲が素晴らしく、トータルで非常に完成度の高い作品となっています。へフティは1940年代はトランペッターとしてウディ・ハーマン楽団などで活躍していたそうですが、もともと作曲・編曲の才能があったらしく、50年代以降はもっぱらアレンジャーとして活躍するようになりました。「クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス」が有名ですね。ベイシー楽団とも何度か共演しており、特に本作の前年に吹きこまれた「アトミック・ベイシー」は名盤の誉れが高いです。全11曲、全てへフティのオリジナルで、ほとんどが3分前後の小品ながらどの曲も分厚いベイシー・サウンドと名手達によるソロを絶妙に組み合わせており、小粒ながらキラリと光る魅力的な楽曲ばかりです。強烈なブラスの咆哮で始まるパワフルな“Has Anyone Here Seen Basie?”。ドラムとフルートの掛け合いで進行して行くハートウォーミングな“Cute”。スヌーキー・ヤングのブリリアントなトランペットソロが堪能できる美しいバラード“Pensive Miss”。ゆったりした中にもグルーブを感じさせるこれぞベイシー・サウンド“Sloo Foot”。マーシャル・ロイヤルの美しいアルト・ソロをフィーチャーしたバラード“It's Awf'ly Nice To Be With You”。トランペット・セクションとフルートが奏でるハッピーな“Scoot”。アル・グレイのトロンボーン・ソロが冴え渡る“A Little Tempo, Please”。30年代風のオールドファッションなバラード“Late Date”。曲名どおりカウントダウンの掛け声に続きフランク・フォスターとビリー・ミッチェルのスリリングなテナーチェイスが繰り広げられる“Count Down”。トロンボーン・チームによるパワフルなバトル“Bag-A' Bones”。ラストはこれまで裏方に徹していたサド・ジョーンズと御大ベイシーが満を持したようにソロを取る“Pony Tail”で締めくくります。ベイシー楽団の作品の中では決してメジャーな作品ではありませんが、なかなかどうして隠れ名盤と言って良い充実の出来ですね。
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