ハードバピッシュ&アレグロな日々

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モーツァルト/大ミサ曲

2019-09-21 23:19:54 | クラシック(声楽)
先日はモーツァルトの秘曲「孤児院ミサ」を紹介しましたが、今回は彼のミサ曲の中でもメジャー作品であるミサ曲ハ短調、通称「大ミサ曲」をご紹介したいと思います。この作品はモーツァルト26歳の時に書かれたもので、交響曲第35番「ハフナー」やオペラ「後宮からの誘拐」とほぼ同時期でモーツァルトが円熟期に差しかかったころの作品です。ただ、作品的には未完のままで、ミサ曲の後半の重要部分である「アニュス・デイ」等が書かれていません。晩年の「レクイエム」は完成を待たずにモーツァルトが死んでしまったので仕方ありませんが、この曲に関してはいくらでも時間があったにもかかわらずモーツァルトは手をつけませんでした。理由はいろいろ推測されていますが、この曲はモーツァルトが珍しく自発的に作曲した作品で貴族や教会等の依頼主がおらず、完成を急ぐ必要がなかったため結局そのまま放置されたというのが実情のようです。ただ、それでも残された部分だけでも60分に及ぶ大規模な曲で、完成度の高さもあいまって「大ミサ曲」の名にふさわしい名曲と言えるでしょう。



曲は短調の作品だけあって全体的にはやや暗め。1曲目「キリエ」は重々しい始まりで厳粛な雰囲気が漂います。第2曲「グローリア」は一転して雰囲気が変わり、力強い合唱「天のいと高きところには、神に栄光」で盛り上げ、続くソプラノ独唱「我らは主をほめ」はまるでオペラのアリアを思わせるような歌心あふれる曲です。ただ、その後は再び暗い展開に逆戻り。特に「主のみ聖なり」のあたりはバロック的な旋律をくどいまでに繰り返します。このあたりは聴いていても若干しんどい。ただ、後半の「イエス・キリストよ」あたりで光が差し、そのままこの曲の山場である第3曲「クレド」に突入します。前半の力強い合唱「我は信ず、唯一の神」も素晴らしいですが、何より続くソプラノ独唱「聖霊によりて」がため息の出る美しさ。9分あまりに渡って天上の調べを思わせる至上の音楽が繰り広げられます。本来の最終曲である「アニュス・デイ」こそありませんが、ラストを飾る「サンクトゥス」「ベネディクトゥス」もなかなかのものです。CDは古今東西の名指揮者が録音を残していますが、私が購入したのはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニーの1981年の作品です。この盤は歌手陣が豪華でソプラノにバーバラ・ヘンドリックス、テナーにペーター・シュライアーと当時のオペラ界のスターを揃えて素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。特にヘンドリックスのソプラノ独唱が絶品ですね。
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