昨日のカウント・ベイシー楽団に続き、本日はデューク・エリントン楽団をご紹介します。ベイシー楽団とエリントン楽団、まさに押しも押されぬビッグバンドの両横綱ですね。ただ、私個人の話で言うと、ベイシー楽団にはわりとジャズの聴き始めの頃から親しんでいましたが、エリントン楽団についてはそれほど馴染みがありませんでした。本作を買ったのは今から10数年前ですが、これがエリントン楽団で初めて買ったアルバムです。深い理由は特にないのですが、あえて挙げるとすればベイシー楽団はサド・ジョーンズ、フランク・フォスターらソロ活動を行っているメンバーが多く、ハードバップを聴いているうちに自然に彼らのプレイに触れていたというのがあります。一方、エリントン楽団の方はジョニー・ホッジスやポール・ゴンサルヴェスら一部を除いてあまりソロ活動は行っていませんし、またホッジスらにしてもスタイル的にはバップ以前のオールドスタイルなのであまり親しみがなく、若干敷居が高かったのが大きいです。
今日ご紹介するRCA盤「ザ・ポピュラー・デューク・エリントン」は私のようなエリントン入門者にも最適の1枚で、エリントン楽団の全盛期である30~40年代の名曲を、新たに1966年5月に録音したものです。メンバーは総勢15名。列挙してみましょう。トランペットがキャット・アンダーソン、クーティ・ウィリアムズ、息子のマーサー・エリントン、ハービー・ジョーンズ、トロンボーンがローレンス・ブラウン、バスター・クーパー、チャック・コナーズ、サックスがポール・ゴンサルヴェス(テナー)、ジョニー・ホッジス(アルト)、ハリー・カーニー(バリトン)、サックス兼クラリネットがジミー・ハミルトンとラッセル・プロコープ、リズムセクションが御大エリントン(ピアノ)、ジョン・ラム(ベース)、サム・ウッドヤード(ドラム)です。
全11曲。ほとんどの曲がエリントン楽団のレパートリーとして良く知られた曲です。オープニングを飾るのはその中でも最も有名であろう"Take The A Train"。彼らの代表曲にとどまらず、
ジャズファン以外にも知られている超有名曲ですね。
最初に御大エリントンが華やかなピアノソロを取り、
その後はお馴染みのテーマを経てクーティ・
ウィリアムズが派手なトランペットを響かせます。2曲目"I Got It Bad And That Ain't Good"はジョニー・
ホッジスの官能的なアルトが味わえる名バラード。
ホッジスと言えばパーカーやコルトレーンが憧れた
存在として良く名前が出ますが、
それも納得の素晴らしい演奏です。3曲目"Perdido"
はかつてエリントン楽団員だったファン・ティゾルの名曲。バップ世代にも比較的よく取り上げられる曲ですが、ここではスイング風のオールドスタイルな演奏です。4曲目"
Mood Indigo"は幻想的な雰囲気を持つ名曲で、
ムードたっぷりのアンサンブルが奏でる独特の世界観はまさにエリントン楽団ならではで、ベイシー楽団にはないものです。続く"Black And Tan Fantasy"も同じく流れを組む曲で、ジャズと言うよりクラシックの管弦楽作品を思わせる凝った構成の曲です。ローレンス・
ブラウンとクーティ・ウィリアムズがプランジャーやカップを駆使したワーワー・ミュートと呼ばれる独特のソロで盛り上げます。
後半1曲目は"The Twitch"。アルバム中唯一の新曲ですが、割とシンプルなブルースです。後半にド派手なトロンボーンを聴かせるのはバスター・クーパーです。続く"Solitude"と"Do Nothin' Till You Hear From Me"はどちらともエリントンのピアノとローレンス・ブラウンのトロンボーンをフィーチャーした曲。エリントンは67歳とは思えない力強くパーカッシブなピアノを披露し、ブラウンもワーワーではない正統派のトロンボーンソロでじっくりと聴かせます。特に"Solitude"は名演だと思います。"The Mooche"も独特の妖しげなムードで有名な曲で、この曲でもクーティーとブラウンのワーワーが炸裂します。"Sophisticated Lady"もエリントン楽団を代表する名バラードで、エリントンの独特の間のピアノソロが魅力的です。ラストトラックの"Creole Love Call"はあまり知らない曲ですが、これも幻想的な雰囲気を持った曲でクーティ・ウィリアムズがワーワーとミュートの両方を駆使します。個人的にはワーワーが若干うるさい気もしますがそれでも磨き上げられた鉄壁のアンサンブルはさすがの一言で、ベイシー楽団とはまた一味違うエリントン楽団の魅力を知るには最適の1枚と思います。
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