本日は白人ベーシストのマックス・ベネットをご紹介します。あまりメジャーとは言えませんが、ベツレヘム・レコードを中心に50年代のウェストコーストジャズでそれなりに活躍した存在です。60年代から70年代にかけてはスタジオミュージシャンとしてポップスやロックの分野にも活動の場を広げ、ザ・モンキースやジョニ・ミッチェル、バーブラ・ストライザンド等の作品でベースを弾いていたようです。ジョニ・ミッチェルがジャズ~フュージョン畑のプレイヤーを起用した大名盤「コート・アンド・スパーク」にもトム・スコット、ジョー・サンプル、ラリー・カールトンと並んで彼の名前があります。
本作「マックス・ベネット・プレイズ」は1955年にベツレヘムに吹き込まれた1枚です。録音は2つのセッションに分かれており、1955年1月がロサンゼルス録音でフランク・ロソリーノ(トロンボーン)、チャーリー・マリアーノ(アルト)、クロード・ウィリアムソン(ピアノ)、スタン・リーヴィ(ドラム)と西海岸のオールスターメンバーから成るクインテット。同年12月のセッションがニューヨーク録音でカール・フォンタナ(トロンボーン)、デイヴ・マッケンナ(ピアノ)、メル・ルイス(ドラム)を加えたカルテットです。
全12曲、うち1月の西海岸セッションが8曲、12月の東海岸セッションが4曲です。まず、1月のセッションの方ですが、西海岸No.1トロンボーンのロソリーノ、パーカー派アルトとして絶賛売り出し中のマリアーノ、”白いパウエル”ことウィリアムソンが大きくフィーチャーされており、1曲目のロソリーノの自作曲”Rubberneck”、急速調のスタンダード"Jeepers Creepers"”Sweet Georgia Brown"では彼らのソロを存分に堪能できます。一方、”Just Max""T.K."ではロソリーノらはアンサンブルに回り、ベネットがピチカートソロでリーダーとしての面目を施します。一風変わっているのがヘレン・カーと言う女性ヴォーカル入りが2曲あること。”They Say"はあまり聞いたことない曲ですが、マリアーノとロソリーノのソロを挟んでスインギーに、”Do You Know Why"ではバラードをしっとり歌います。
一方、12月の東海岸セッションの方ですが、メンバーの知名度という点では西海岸に比べると一段落ちますね。カール・フォンタナは正直この作品ぐらいでしか名前を見かけないですし、デイヴ・マッケンナもズート・シムズの作品等に参加していますがお世辞にもメジャーとは言えません。ただ、スタンダードの”Taking A Chance On Love””Sweet Sue"あたりも悪くないですし、何よりベネット自作の”Blues"が良いです。他が全て3分前後の短い曲の中で唯一5分を超える演奏で、マッケンナのピアノソロに続き、フォンタナが歯切れの良いトロンボーンソロを聴かせます。"S'Posin'"は再びベネットのベースソロが大きくフィーチャーされます。