ハードバピッシュ&アレグロな日々

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サラ・ヴォーン・イン・ザ・ランド・オヴ・ハイファイ

2024-11-13 18:45:13 | ジャズ(ヴォーカル)

本日は3大黒人女性ヴォーカルの1人、サラ・ヴォーンを取り上げます。1955年10月にマーキュリー傘下のエマーシー・レコードに吹き込まれた1枚ですね。サラのエマーシー盤と言えば一般的には前年のクリフォード・ブラウンとの共演盤が有名ですが、本作も内容的には遜色のない出来と思います。「イン・ザ・ランド・オヴ・ハイファイ」と言うタイトルが少し変わっていますが、当時はちょうど録音技術が進化して原音により忠実なハイファイ(High Fidelity)録音が普及し始めた頃で、本作以外にも様々なアーティストが「~イン・ハイファイ」と言うタイトルのアルバムを出しています。

メンバーですが、合計7名の管楽器奏者を加えたミニ・ビッグバンド編成で、トロンボーンのジェイ&カイやテナー兼フルートのジェローム・リチャードソンらも参加していますが、彼らはアンサンブル要員です。大きくフィーチャーされているのがキャノンボール・アダレイのアルトで、多くの曲で彼にソロの出番が与えられています。キャノンボールは同年にエマーシーと契約したばかりで、クリフォード・ブラウンとともに同レーベル期待の若手として将来を嘱望されていました。本レコードはサラとともにキャノンボールを売り出す意図もあったと推測されます。なお、リズムセクションはターク・ヴァン・レイク(リズムギター)、ジミー・ジョーンズ(ピアノ)、ジョー・ベンジャミン(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラム)、アレンジャーはベイシー楽団出身のアーニー・ウィルキンスです。

全12曲。うち半分ぐらいは定番スタンダード曲ですが、サラの抜群の声量と表現力に裏打ちされたヴォーカルとキャノンボールの元気いっぱいのアルト+豪華ビッグバンドの伴奏のおかげで新たな生命を吹き込まれています。中でもおススメは”Cherokee"。爆発するホーンセクションをバックにサラがノリに乗って歌い、中間部ではキャノンボールもパワフルなソロを披露します。この曲はクリフォード・ブラウンはじめインストゥルメンタルで演奏されることが多いですが、歌バージョンでは本作がベストではないかと思います。一転してバラードを甘美に歌い上げる”I'll Never Smile Again"、中間部でサラのスキャットとキャノンボールのアルトがスリリングな掛け合いを見せる”How High The Moon"、フレディ・グリーン風のリズムギターに乗せてサラがスインギーに歌う”Sometimes I'm Happy"も充実の出来です。

定番曲以外ではベイシー楽団を思わせるブルージーなサウンドに乗せてキャノンボールのファンキーなアルトソロもフィーチャーされる”Don't Be On The Outside"、美しいバラードの”It Shouldn't Happen To A Dream"、パワフルなホーンアレンジが施されたキャッチーな”An Occasional Man"、フルートが奏でるラテン調の妖しいムードの中サラがドスの利いたヴォーカルを聴かせる”Oh My"も聴きモノです。

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