ハードバピッシュ&アレグロな日々

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モダン・ジャズ・セクステット

2024-12-19 20:04:14 | ジャズ(ビバップ)

本日はモダン・ジャズ・セクステットです。モダン・ジャズ・カルテットなら知ってるけどセクステットなど知らん!と思われる方もいるでしょうが、本作1枚のためだけに集められた即席のコンボなので知らなくても当然と言えば当然です。MJQとの混同を避けるためか、私が買った日本盤のCDはそもそもディジー・ガレスピーがリーダーで「モダン・ジャズ・セクステット」は作品名として扱われていますが、ジャケットを見る限り特にリーダーの記載はなく、一応メンバー6人が対等に参加しているようです。

企画したのは名プロデューサーのノーマン・グランツ。彼の設立したノーグラン・レコード(後のヴァーヴ・レコード)に1956年1月に吹き込まれたものです。ジャケットはグランツお抱えの名物画家デイヴィッド・ストーン・マーティンによるデザインで、右下でトランペットを持っているのがディジー・ガレスピー、左下でピアノを弾いているのがジョン・ルイス、その上でサックスを吹いているのがソニー・スティット、右上のベースがパーシー・ヒース、真ん中の方でゴチャゴチャっと書かれて判別しにくいのがギターのスキーター・ベストとドラムのチャーリー・パーシップです。6人対等と言いながらジャケットの絵の大きさからもガレスピー、ルイス、スティットの3人が音楽的リーダーシップを取っているのがわかります。なお、ジョン・ルイスに加えてパーシー・ヒースも参加していますので、MJQとはあながち無関係とも言えません。

さて、ノーマン・グランツはハードバップより少し前のビバップやスイング~中間派の音楽を愛好しており、起用するのもその世代のミュージシャンが多いですが、本作でもドラムのパーシップだけが26歳と若く、後は全員が30超えで40年代から活躍しているメンバーばかりです。そのせいか少し音的には古いと言えば古いですね。特にガレスピーのトランペットはちょうどこの時期に台頭しつつあったクリフォード・ブラウンやドナルド・バード(リー・モーガンはまだデビュー前)に比べると少しオールドスタイルな印象は拭えません。一方、スティットのアルトは絶好調で、お得意の音数の多いこねくり回すようなフレーズを全編で披露します。ルイスのピアノは評価が難しいですね。この人は作曲家・編曲家としては大変優れており、MJQでも独特の世界観を築き上げているのですが、1人のピアニストとしてはどうなんでしょうか?訥々としたピアノは好みが分かれるところかも。他ではスイング時代から活躍するスキーター・ベストも随所でギターソロを聴かせます。

肝心の曲の解説ですが、これは何と言っても1曲目"Tour De Force”が素晴らしいです。ディジー・ガレスピーのオリジナルで大変魅力的なメロディを持った名曲です。11分を超す大曲なのですが、スティット→ガレスピー→ルイス→ベストとたっぷりとソロを取り、最後までダレることがありません。2曲目”Dizzy Meets Sonny"は文字通りガレスピーとスティットのアドリブ合戦なのですが、絶好調のスティットに対し、ひたすらハイノートを連発するガレスピーのトランペットが個人的にはややしんどいかな?3曲目はスタンダード曲のメドレーで、スティットが”Old Folks"、ルイスが”What's New"、ガレスピーが”How Deep Is The Ocean"とそれぞれバラードを演奏しますが、個人的にはメドレーと言う企画自体があまり好きではないので評価の対象外です。4曲目はスタンダードの”Mean To Me”でミディアムテンポの軽快な演奏。ラストトラックはガレスピーとスティットの共作のブルースで前年に亡くなったチャーリー・パーカーに捧げた”Blues For Bird"。パーカーはガレスピーにとってはかつての"バード&ディズ”の相棒、スティットにとっては盟友であり比較の対象ともなったライバルと言うこともあり、両者とも情感たっぷりのプレイを繰り広げます。ジョン・ルイスの独特の語り口のピアノ、スキーター・ベストの意外とブルージーなギターソロも良いアクセントを加えています。

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