ハードバピッシュ&アレグロな日々

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ザ・ヤング・ライオンズ

2024-12-25 19:20:10 | ジャズ(ハードバップ)

ヴェージェイ・レコード(Vee-Jay)と言うレーベルがあります。シカゴが拠点のレコード会社で本業はどちらかと言うとR&Bで、”Sherry"の大ヒットで知られる白人ドゥーワップ・グループのフォー・シーズンズや"Oh, What A Night"で有名なザ・デルズ等が所属していました。一方、50年代後半から60年代前半にかけてはジャズにも力を入れており、枚数は少ないながらリー・モーガンやウィントン・ケリー、ポール・チェンバースと言った大物の作品をリリースしています。モーガンの「ヒアズ・リー・モーガン」やケリーの「枯葉」、チェンバースの「ゴー」は名盤として知られていますね。

他に同レーベルがプッシュしていたジャズマンはウェイン・ショーターとフランク・ストロージャー。前者は泣く子も黙るジャズ・ジャイアントですが、デビュー作は同レーベルに残した「イントロデューシング・ウェイン・ショーター」。1959年11月録音でこの時26歳でした。時を同じくしてジャズ・メッセンジャーズに加入し、黄金期を築き上げます。後者のフランク・ストロージャーはさほどメジャーとは言えませんが、メンフィス出身の白人アルト奏者でシカゴをベースにした"MJT+3"と言うグループに参加し、ヴィージェイから何枚か作品を発表しています。

本作「ザ・ヤング・ライオンズ」は1960年4月に吹き込まれたリーダーレス・セッションで、上述のショーターとストロージャーに加え、同じくヴェージェイ・レーベルのスターだったリー・モーガンを加えた3管編成のセクステット。言わば同レーベルのオールスター共演ですね。これでリズムセクションにウィントン・ケリーとポール・チェンバースが加われば最強だったのですが、さすがにそこまでは揃わなかったのかボビー・ティモンズ(ピアノ)、ボブ・クランショー(ベース)、ルイス・ヘイズまたはアルバート・ヒース(ドラム)のトリオがバックを務めています。これでも十分豪華ですけどね。特にモーガン、ショーター、ティモンズの3人は同時期にジャズ・メッセンジャーズでもプレイしており、前月に「ザ・ビッグ・ビート」を吹き込んだばかりです。

全5曲。全てメンバーのオリジナルで、ショーターが4曲、モーガンが1曲と言う構成です。リーダーは誰とは決まっていませんが、ショーターが音楽的主導権を握っているのは明らかですね。オープニングトラックの"Seeds Of Sin"からショーター節が全開で、従来のハードバップとは明らかに違う少し調子っ外れの独特のメロディです。とは言え、前衛的とまではいかず普通に聴けるジャズの範囲にとどまっています。個人的ベストトラックは3曲目”Fat Lady"。いかにもこの時期のショーターらしいクール&ファンキーな曲で、ショーター→モーガン→ストロージャー→ティモンズとソロをリレーします。"Scourin'"や"Peaches And Cream"と言った曲もモードジャズを先取りしたような曲です。ラストトラックの”That's Right"はリー・モーガン作で11分を超すミディアムテンポのファンキーチューン。序盤の主役はボビー・ティモンズでいかにも彼らしいソウルフルなピアノソロを披露した後、ストロージャー→モーガンのカップミュート→ショーターとたっぷりソロを取ります。録音時でメンバー全員が20代。まさに才能溢れる若獅子達による意欲作です。

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