本日はレッド・ガーランドです。先日ご紹介した「レッズ・グッド・グルーヴ」でも述べたように、60年代に入ってからのガーランドはモードジャズやフリージャズの潮流には全く乗れず、徐々に活動を縮小していきます。この頃のガーランドはリヴァーサイド傍系のジャズランドに目立たない作品を何枚か残していますが、今日取り上げる「ソーラー」もそのうちの1枚で1962年1月30日の録音。上述の「レッズ・グッド・グルーヴ」の2カ月前の作品ですね。
メンバーはサム・ジョーンズ(ベース)、フランク・ガント(ドラム)から成るトリオにギターのレス・スパンが加わっています。このレス・スパンは1932年生まれと比較的若い世代ですが、共演歴を見てみるとデューク・エリントンやジョニー・ホッジス、ディジー・ガレスピーはじめ比較的上の世代のジャズマンが多く、スタイル的にもややオールドスタイルな感じです。ガーランドクラスならケニー・バレル等もっと大物のギタリストを呼ぶこともできたでしょうが、あえてスパンを起用したのは狙いがあるのでしょう。なお、スパンはギターだけでなくフルートも吹く変わり種で実際本作でも2曲でフルートを演奏しています。
全8曲。ガーランドのオリジナルが2曲で、後はスタンダードです。1曲目はウィル・ハドソンと言うあまり知らない人が書いた”Sophisticated Swing”というスイング時代の曲。いきなりブロックコードで弾き始めるあたりがガーランドならでは、と言う感じですが演奏自体はリラックスした雰囲気で、基本的に作品全体の基調となっています。スパンのギターソロもあまり自己主張し過ぎない感じでしょうか?続く”Solar”は本作のタイトルトラックでかつてのボスだったマイルスの曲ですが、こちらも同じような曲調ですね。"Where Are You?”はバラードでレス・スパンがギターではなくフルートを吹いています。6曲目の”The Very Thought Of You”も同じくバラードとフルートと言う組み合わせですが、個人的にはやや眠たくなる感じです。
4曲目”Marie’s Delight"はガーランドが妻に捧げたオリジナル、となっていますがどこかで聴いたことがある曲。パーカーの”Dexterity”に少し似てますかね。この曲と続くロジャース&ハートの”This Can’t Be Love"、もう1曲のオリジナル”Blues For News”はアップテンポの曲でガーランドのノリノリのピアノが堪能できます。スパンもギターでバックにソロにと盛り立てますが、やはりそこまで前面に出る感じはないですね。テクニック的には十分上手いと思うのですが、印象に残るフレーズがないというか。でも、ガーランドとしてはそこがスパンを起用した意図で、あくまで主役の自分を邪魔しない人を起用したのでしょう。ラストの”I Just Can’t See For Lookin’”はナット・キング・コールのカバーらしいですが、再びリラックスしたムードの曲で締めます。ガーランドの諸作品の中ではとりわけ名盤という訳ではないですが、聴いて損はない1枚と思います。