ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲

2012-04-11 23:05:15 | クラシック(協奏曲)
本日はエーリッヒ・コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を取り上げます。一時熱心だったヴァイオリン協奏曲の名曲探しもしばらくUPしていませんでしたが、その間も決して全くサーチしていなかったわけではなく、ミャスコフスキー、エルガー、バーバー、プロコフィエフと主に20世紀の作品を中心に聴いていました。ただ、どれも決め手に欠けるというか、部分的には良くても全体を通して聴くと今ひとつなんですよねえ。

その中でコルンゴルトの作品は久々のヒットです。これも1945年の作曲と時代的には完全に現代の作品なのですが、ヴァイオリンソロで随所に20世紀らしい鋭利な響きを聴かせながらも、バックのオーケストラは新ロマン主義の香りを色濃く漂わせた実にメロディアスな作品です。コルンゴルトはオーストリアの出身ですが、ナチスの迫害を逃れてアメリカに定住して以降はもっぱら映画音楽の作曲をしていたらしく、この協奏曲にも自身の映画音楽の転用があちこちにあるようです。そのため、発表当時は芸術作品としては軽く扱われ、評価も芳しくなかったとか。ただ、近年は再評価され、演奏機会も増えているようです。

第1楽、冒頭からヴァイオリンが美しく幻想的な旋律を歌いあげます。続くオーケストラの雄大な響きも実に甘美でファンタスティック。映画音楽と言われれば確かにそんな感じもしますが、メロディは実に魅力的です。第2楽章は緩徐楽章で、幻想的なオーケストラサウンドをバックにヴァイオリンが透き通るような鋭利なソロを奏でます。第3楽章は一転してド派手なフィナーレで、超絶技巧を駆使した冒頭のヴァイオリンソロに始まり、オーケストラが華やかで歌心あふれる主題を奏でます。クライマックスはフルオケでジャジャーンと盛り上がって終了。



CDはアンネ=ゾフィー・ムターのヴァイオリン、アンドレ・プレヴィン指揮ウィーン・フィルのものを買いました。10代の頃からカラヤンと共演したかつての天才少女も40歳を過ぎて成熟した大人の演奏を聞かせてくれます。ジャケ写真も美しいですね。指揮者のアンドレ・プレヴィンとは録音時点で夫婦だけあって実に息の合った演奏です。残念ながらその後離婚したそうですが。なお、CDにはもう1曲チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲も収録されています(と言うかむしろこちらがメインかも)。この曲についてはあえて紹介することもないですね。ロシアの大地を思い出させる雄大さとチャイコフスキー特有のロマンチシズムが結実した至上の名曲です。
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ドヴォルザーク/交響詩集

2012-04-10 23:58:59 | クラシック(管弦楽作品)
本日はドヴォルザークの交響詩集を紹介します。全部で5曲あり、それぞれ「水の精」「真昼の魔女」「金の紡ぎ車」「野ばと」「英雄の歌」の題名が付けられています。いずれも「新世界」やチェロ協奏曲などの大傑作を発表した直後の1896年から1897年にかけて作曲されたもので、円熟の境地に達したドヴォルザークの見事な管弦楽法が堪能できる名作だと思うのですが、演奏機会はあまり多くありません。もったいない話です。

5曲のうち「英雄の歌」以外の4曲はチェコの詩人エルベンの詩集からインスピレーションを得て作られたもので、一連の作品とみなしていいでしょう。この4曲はどれもベースとなる物語が非常に残酷です。ちょっと紹介してみましょう。

まず「水の精」は湖で洗濯をしていた美しい少女が水の精に見初められ、水中に連れ去られて妻にされてしまいます。やがて子供も生まれた彼女ですが、故郷が忘れられず一人で里帰りしたところ、怒った水の精が彼女の家にやって来て子供の首を切って投げつけるという話。「真昼の魔女」は、駄々をこねる子供に手を焼いた母親が「静かにしないと魔女を呼ぶよ」と叱りつけると、本当に魔女がやって来て子供をとり殺してしまうという話。「金の紡ぎ車」は村の娘ドルニチカが王に見初められ求婚されるが、意地悪な継母が彼女を殺し、自分の連れ子を妃に据える。ところが不憫に思った魔法使いの手によってドルニチカは生き返り、しかも魔法使いの贈った金の紡ぎ車を偽の妃が回すと、糸を紡ぐ代わりに彼女と継母の悪事が歌い上げられるという話。「野ばと」は妻が夫を毒殺し、若い男と再婚するが亡き夫の墓の上に生えた樫の木に鳩が巣を作り、哀しげな声で鳴く。その泣き声で自責の念にかられた彼女は遂に自殺してしまうという話。

昔話は残酷なものが多いと言いますが、これは極め付きというか、どれもこれも人が殺される陰湿な話ばかりです。従って、交響詩の方も暗めの曲が多いのですが、そこはドヴォルザークらしく随所に魅力的な旋律を挟み、ドラマチックに盛り上げます。「水の精」ではいかにも神経質そうな水の精の主題の合間に、娘の主題でしょうか牧歌的な旋律が効果的に組み込まれます。「野ばと」も哀愁漂う旋律が基調ですが、中間部で未亡人と若者の再婚の宴の主題としてスケルツォ風の魅力的な舞曲が現れます。「金の紡ぎ車」は4曲中で一番明るく、とりわけ王の狩りのシーンの勇ましい主題とロマンチックなドルニチカの主題が素晴らしいです。この「金の紡ぎ車」などもっと知れ渡ってもいい名曲だと思うのですが・・・



CDはボフミル・グレゴル指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団のものを買いました。と言うよりもドヴォルザークの交響詩がセットになったCDはこれぐらいしか出回っていません。他にサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルのCDがありますが、こちらは「英雄の歌」も入っていませんし、値段も結構高いです。上掲作は1500円の廉価版でドヴォルザークの交響詩集としてはベストではないでしょうか?
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マーラー/交響曲第3番

2012-04-08 22:33:10 | クラシック(交響曲)
本日はマーラーの交響曲第3番を取り上げます。以前に第2番「復活」でも書きましたが、マーラーの作品はどれも魅力的なんですが、何せ長いので敬遠しがちでした。第3番はそのマーラーの中でも一番長大で演奏時間はなんと95分。これは相当覚悟が要りますね。

何せ第1楽章だけで30分超のボリューム。冒頭の重苦しい弦の響きから始まり、行進曲風の明るい中間部を経て、フルオーケストラが高らかに鳴り響くクライマックスと内容的にも一個の独立した作品と呼んでいいぐらいのスケールです。第2楽章は一転して優雅なメヌエット。マーラー自身が草原の花々をイメージして書いただけあって、穏やかで愛らしいメロディです。第3楽章は中間部で現れるポストホルンの響きが印象的。第4楽章と第5楽章はマーラーらしく声楽パートが入ります。特に前者の美しいアルト独唱は個人的には本作のハイライトと思っています。第5楽章は“ビム!バム!”と繰り返す児童合唱が楽しげ。第6楽章は再びオーケストラのみで静かに盛り上がっていき、フィナーレで感動的なクライマックスを迎えます。

全体的に見ればマーラーらしいド派手なオーケストレーションは第1楽章ぐらいで、後半は静かな印象ですね。でも、メロディの豊かさはマーラーならではで、100分近い長さも苦になりません。むしろ聴けば聴くほど味の出てくる作品と言えるでしょう。



CDはケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団のものを買いました。名前と風貌からわかるとおり日系アメリカ人ですが、今や世界を代表する指揮者の一人です。ワーナーの廉価版シリーズで1800円と価格的にも申し分なしです。
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プロコフィエフ/ロメオとジュリエット

2012-04-05 19:05:53 | クラシック(管弦楽作品)
本日はプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」を紹介します。かの有名なシェイクスピアの物語をバレエ化した作品で全曲だと52曲、2時間半もあるらしいですが、私が買ったのは抜粋版の組曲です。それでも全20曲、80分近いボリュームなので聴き応えは十分です。プロコフィエフと言えば曲によってはかなり現代音楽的なものもあり、やや取っつきにくい印象があったのですが、本作は全編親しみやすい旋律に溢れており、誰でも楽しめる作品ではないでしょうか?

作品は第1組曲、第2組曲、第3組曲に分かれています。これは全曲の中から組曲にアレンジされた順番で、物語の時系列とは違いますが、大ざっぱに分類すると第1組曲は明るく希望に満ちあふれた内容。第2組曲は悲劇を暗示させる不安げな旋律が支配的。第3組曲はもう1度全体をおさらいしてヒロインの死で終わるという内容でしょうか?

何せ魅力的な曲がたくさんありますが、第1組曲では祝祭的な雰囲気を持つオープニングの「民族舞踊」、有名なバルコニーで愛を語り合う場面を描いたロマンティックな「ロメオとジュリエット」、第2組曲冒頭で後の悲劇を暗示する重々しい「モンタギュー家とキャピュレット家」、ドラマチックな「別れの前のロメオとジュリエット」、第3組曲ラストを飾る美しくも物哀しい「ジュリエットの死」などが特に秀逸です。特に「モンタギュー家とキャピュレット家」はソフトバンクのCM“予想GUY”などでも使われていたので誰でも知っている旋律ではないでしょうか?



CDはスタニスワフ・スクロヴァチェフスキ指揮ケルン放送交響楽団のものを買いました。ポーランド出身の名指揮者ですが、読売日本交響楽団の常任指揮者も務めていたので日本には特に馴染みが深いかもしれません。「ロメオとジュリエット」は組曲版もさらに抜粋されているのが多いので、全曲版のCDとしてはこれが最適かもしれません。
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ビゼー/アルルの女

2012-04-03 21:58:19 | クラシック(管弦楽作品)
本日はジョルジュ・ビゼーの「アルルの女」を取り上げます。ビゼーと言えば何と言ってもオペラ「カルメン」が圧倒的に有名ですが、この「アルルの女」も負けず劣らず魅力的です。スペインが舞台の「カルメン」に対し、こちらは南フランスのプロヴァンス地方が舞台。民族音楽をベースにしながら、ビゼーらしい絢爛豪華なオーケストレーションで味付けされた名曲と言っていいでしょう。ビゼーはこの2大名曲を世に残してわずか36歳で病死したそうですが、長寿を全うしたら一体どれほどの大作曲家になったのでしょうか?歴史に「もし」は禁物ですが、思わずそう言いたくなるほどの名旋律の宝庫です。

まず、第1組曲「前奏曲」の冒頭は誰もが聞いたことあるほど有名な旋律ですが、これは実は現地の民謡らしいです。ビゼーの天賦の才能はむしろ他の曲に感じることができます。金管楽器が高らかに鳴り響く「カリヨン」、壮麗な「パストラール」、牧歌的なフルートとハープが美しい「メヌエット」、ひたすら楽しい舞曲風の「ファランドール」と全編歌心にあふれています。



CDはチョン・ミョンフン指揮パリ・バスティーユ管弦楽団のものを買いました。彼はかの有名なヴァイオリニスト、チョン・キョンファの弟で自身もピアニストとして活躍していますが(以前にチョン・トリオで紹介もしました)、むしろ指揮者としての名声の方が高いかもしれません。東洋人でありながらフランスの名門オケの音楽監督を務め、フランス音楽の傑作を見事に料理しました。大したもんです。

このCDにはビゼーの作品が他に2つ収録されています。「カルメン」組曲はオペラの名アリア集を管弦楽にアレンジしたもの。この作品の真の魅力を知るには全曲版オペラを聴くのが一番ですが、3時間近くもあるので手っ取り早く聴きたい時、あるいはオペラ鑑賞の予習代わりにはいいかもしれません。「闘牛士」「アラゴネーズ」「セギディーリャ」「ジプシーの歌」はじめ問答無用の名旋律のオンパレードです。

「子供の遊び」は5曲で11分余りしかない小品ですが、タイトル通り人形遊び・こま・おままごとなど子供の遊びの数々をビゼーらしい豊かな旋律とオーケストレーションで味付けた逸品です。特に「小さな旦那様、小さな奥様」の美しい旋律はビゼーならではです。
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