※本記事の写真はE-520でなくコンパクトデジカメで撮影したものです※
広島の街を語るに欠かせない、広島電鉄(通称「ひろでん」)の路面電車について書いてみる。
その名の通り、自治体が経営する公営交通事業でなく、民間企業経営の私鉄。全国的には、富山地鉄・岡山・松山・長崎などが民営だ。
だから「市電」とは呼べない。まあ、「市内電車」の略でも「市電」だろうけれど、僕には抵抗がある。正確には広電には(それ以外の多くの街でも)「路面」でない区間も一部あるのだが、「路面電車」の呼び方が、このタイプの鉄道に対する当たり障りのない呼び方だと思うので、本ブログでもそう呼ばせてもらう。
広島の路面電車網は日本最大だという、広島市内のみならず西隣の廿日市(はつかいち)市方面ではJR山陽本線と並走し、宮島口までの路線もあるのは、先に記事にした通り。
広島市内ではかなり複雑な運行系統で、枝分かれした路線、系統間の直通運転、途中電停止まりなどもあって、特に中心部の「紙屋町」辺りから電車に乗るときは戸惑う。
広島駅前でも原爆ドーム・宮島口方面と市役所・宇品方面など乗り場が分かれているから注意が必要。
運転系統が複雑なのは、街の大きさと便利さの裏返しだから、旅行者が迷うのは仕方ないが、広電の場合、乗車の“作法”がやや独特で、それが敷居を高くしてしまっているように感じた。鉄道好きの僕から見ても、一瞬迷うような場面がいくつかあった。
今まで、いくつかの街の路面電車に乗ったが、基本的には(首都圏以外の)バス感覚-つまり降車ボタンで合図して、降りる時に(均一・区間制の違いがあるにせよ)運賃箱に料金を入れればよかった。
ところが、広電でまず驚くのは、降車合図ボタンがない車両がたくさん走っているのだ。
ボタンがないのは数量の電車がつながった「連節車」と呼ばれる、ワンマン運転でなく車掌が乗っている電車だ。
バリアフリーの低床車として有名な「グリーンムーバー」もこの仲間であり、市内線の一部と宮島口方面の全便が連節車だから、結構な頻度でお目にかかる。
夜の広島駅前で発車を待つ最新の国産低床電車「Green mover max」こと5100形。ホームと車両がほぼ同じ高さで、ステップもない。
短い車両が5両つながっており、全体で30メートルになる。
連節車では、前の運転席と後ろの車両中ほどの車掌台の2か所に運賃箱があり、両方から降車できる。
そして降車ボタンがないので降りる時は、「乗客が車掌か運転士に降りる意志表示をする」ようだ。
車掌に明確に「降ります」と言っている人もいたが、立ち上がって、降車口の近くまで行けばいいようだ。運転士の場合はミラーで確認するか、後ろから車掌が見て判断しているのかもしれない。
空いている場合は、降りるのが自分だけで、うっかりしていると通過されそうで、タイミングが難しい。
ただ、広電の乗務員は、皆親切だったので、乗車時など事前に車掌に「○○で降りたい」と不慣れな乗客であることをアピールしておけば、便宜は図ってくれそう。
Green mover maxの車内。全長30メートルだけあって、路面電車とは思えない長さ。連結部も段差ができないよう工夫されている。
黄色のポールが目立つが、降車ボタンはない。肩にかばんを掛けて立っているのが車掌。
何度か、そんな光景を見ていたが、僕にもついにその時が来た。
停留所の放送が入ったので、立ち上がると、すぐに車掌が気が付いてくれた。
そして、その車掌は自分の前にある運賃箱に手を向けて「どうぞ」と言った。
これが、初めてだと戸惑う2つめの広電独特のルール、「停車前に精算をしてしまう」ことだ。
車両前方の運賃箱では、運転士が運転中だから、バスや他の電車と同様、停まるまで精算できないが、車掌側では、停留所に停車する前から、順次、精算をするのだ。電停に着いてドアが開けば、ぞろぞろと降りるだけ。
車掌は精算時に「ありがとうございます」と言うが、降りるときにも再び「ありがとうございました」と言ってくれた。
日頃後払いのバスに乗っていることもあって、何もせずにただ降りるだけという行為が、何か忘れ物をしたようで、変な感じがした。
少しでもスムーズに降りてもらうためだろうが、混雑している時など、誰が精算済みか分からなくならないだろうか。
連節車・低床車における、この2つの作法さえ知っておけば、初めて広島の路面電車に乗る人でも安心だと思う。
なお、他にも小さなことだが、気づいた点がいくつかあるので、書いておく。
広島の電車に乗車予定でお暇な方は、予備知識として一読いただくと、より安心して移動できると思う。
運賃制度は均一・区間制が共存する。
広島市内の路線は150円均一(白島線という支線は100円)。西広島~広電宮島口間を乗車する時は区間ごとに運賃が異なるので、乗車時に整理券を取る。
一日乗車券が便利。(600円。宮島への船やロープウェーに乗れるタイプもある)
駅前の電車乗り場に販売機がある。一部ホテルでも買える。日付指定不要なので、例えば前日に買っておくことも可能。
広島駅前などのターミナルは一見駅だが、あくまでバス停感覚の電停。
「きっぷをどこで買うのか」と迷っている人がいたが、車内で精算するので、きっぷはない。乗るだけでいい(ただし広電宮島口駅には券売機があるらしい)。
ホーム上に「カードリーダー」が立っていて、プリペイドカードや一日乗車券で乗車する時は、事前に通しておくことができるが、車内にもリーダーがあるのでどちらでもよい。
車掌台のカードリーダー挿入方向に注意
ホーム上や運転席側のカードリーダーは、カードの表面を上向きにして挿入する。
しかし車掌台のリーダーは垂直に設置されていて、表面を手前にして挿入する。
正しく挿入されると、別の取出口から出てくるが、逆に入れると挿入口に戻ってきてしまう。
「移動式運賃箱」がおもしろい
広島駅前、西広島など主要ターミナルの混雑時間帯などには、運賃箱を載せた台車を押している駅員の姿を見かける。
普通なら乗り物の床に固定されている運賃箱が、台車に載ってゴロゴロ移動するのが、なんとなくおかしい。
混雑解消のため、正規の降車口以外に乗務員がいない入口用のドアも開放するので、そこから降りた客の精算用である。
車内にあるのと同じタイプの銀色の運賃箱だが、自動車用のようなバッテリーも台車に載っていた。
「平面電停」に注意
広島に限らず、古くから路面電車がある街では、バリアフリー対応工事が進んでいるとはいえ、道幅が狭いため電停も狭くなってしまい、車と電車両方に注意して利用しなければならない電停が結構ある。
さらに広電では、路上に色を塗っただけで「ホーム」がない、「平面電停」というものがある。観光客はほとんど乗降しない場所であり、放送でも案内されるが、幅の狭さのみならず、車両との段差が大きくなるので注意が必要だ。
「平面電停」のある辺りなどをぶらぶらしたので、別記事でご紹介したい。
広島の街を語るに欠かせない、広島電鉄(通称「ひろでん」)の路面電車について書いてみる。
その名の通り、自治体が経営する公営交通事業でなく、民間企業経営の私鉄。全国的には、富山地鉄・岡山・松山・長崎などが民営だ。
だから「市電」とは呼べない。まあ、「市内電車」の略でも「市電」だろうけれど、僕には抵抗がある。正確には広電には(それ以外の多くの街でも)「路面」でない区間も一部あるのだが、「路面電車」の呼び方が、このタイプの鉄道に対する当たり障りのない呼び方だと思うので、本ブログでもそう呼ばせてもらう。
広島の路面電車網は日本最大だという、広島市内のみならず西隣の廿日市(はつかいち)市方面ではJR山陽本線と並走し、宮島口までの路線もあるのは、先に記事にした通り。
広島市内ではかなり複雑な運行系統で、枝分かれした路線、系統間の直通運転、途中電停止まりなどもあって、特に中心部の「紙屋町」辺りから電車に乗るときは戸惑う。
広島駅前でも原爆ドーム・宮島口方面と市役所・宇品方面など乗り場が分かれているから注意が必要。
運転系統が複雑なのは、街の大きさと便利さの裏返しだから、旅行者が迷うのは仕方ないが、広電の場合、乗車の“作法”がやや独特で、それが敷居を高くしてしまっているように感じた。鉄道好きの僕から見ても、一瞬迷うような場面がいくつかあった。
今まで、いくつかの街の路面電車に乗ったが、基本的には(首都圏以外の)バス感覚-つまり降車ボタンで合図して、降りる時に(均一・区間制の違いがあるにせよ)運賃箱に料金を入れればよかった。
ところが、広電でまず驚くのは、降車合図ボタンがない車両がたくさん走っているのだ。
ボタンがないのは数量の電車がつながった「連節車」と呼ばれる、ワンマン運転でなく車掌が乗っている電車だ。
バリアフリーの低床車として有名な「グリーンムーバー」もこの仲間であり、市内線の一部と宮島口方面の全便が連節車だから、結構な頻度でお目にかかる。
夜の広島駅前で発車を待つ最新の国産低床電車「Green mover max」こと5100形。ホームと車両がほぼ同じ高さで、ステップもない。
短い車両が5両つながっており、全体で30メートルになる。
連節車では、前の運転席と後ろの車両中ほどの車掌台の2か所に運賃箱があり、両方から降車できる。
そして降車ボタンがないので降りる時は、「乗客が車掌か運転士に降りる意志表示をする」ようだ。
車掌に明確に「降ります」と言っている人もいたが、立ち上がって、降車口の近くまで行けばいいようだ。運転士の場合はミラーで確認するか、後ろから車掌が見て判断しているのかもしれない。
空いている場合は、降りるのが自分だけで、うっかりしていると通過されそうで、タイミングが難しい。
ただ、広電の乗務員は、皆親切だったので、乗車時など事前に車掌に「○○で降りたい」と不慣れな乗客であることをアピールしておけば、便宜は図ってくれそう。
Green mover maxの車内。全長30メートルだけあって、路面電車とは思えない長さ。連結部も段差ができないよう工夫されている。
黄色のポールが目立つが、降車ボタンはない。肩にかばんを掛けて立っているのが車掌。
何度か、そんな光景を見ていたが、僕にもついにその時が来た。
停留所の放送が入ったので、立ち上がると、すぐに車掌が気が付いてくれた。
そして、その車掌は自分の前にある運賃箱に手を向けて「どうぞ」と言った。
これが、初めてだと戸惑う2つめの広電独特のルール、「停車前に精算をしてしまう」ことだ。
車両前方の運賃箱では、運転士が運転中だから、バスや他の電車と同様、停まるまで精算できないが、車掌側では、停留所に停車する前から、順次、精算をするのだ。電停に着いてドアが開けば、ぞろぞろと降りるだけ。
車掌は精算時に「ありがとうございます」と言うが、降りるときにも再び「ありがとうございました」と言ってくれた。
日頃後払いのバスに乗っていることもあって、何もせずにただ降りるだけという行為が、何か忘れ物をしたようで、変な感じがした。
少しでもスムーズに降りてもらうためだろうが、混雑している時など、誰が精算済みか分からなくならないだろうか。
連節車・低床車における、この2つの作法さえ知っておけば、初めて広島の路面電車に乗る人でも安心だと思う。
なお、他にも小さなことだが、気づいた点がいくつかあるので、書いておく。
広島の電車に乗車予定でお暇な方は、予備知識として一読いただくと、より安心して移動できると思う。
運賃制度は均一・区間制が共存する。
広島市内の路線は150円均一(白島線という支線は100円)。西広島~広電宮島口間を乗車する時は区間ごとに運賃が異なるので、乗車時に整理券を取る。
一日乗車券が便利。(600円。宮島への船やロープウェーに乗れるタイプもある)
駅前の電車乗り場に販売機がある。一部ホテルでも買える。日付指定不要なので、例えば前日に買っておくことも可能。
広島駅前などのターミナルは一見駅だが、あくまでバス停感覚の電停。
「きっぷをどこで買うのか」と迷っている人がいたが、車内で精算するので、きっぷはない。乗るだけでいい(ただし広電宮島口駅には券売機があるらしい)。
ホーム上に「カードリーダー」が立っていて、プリペイドカードや一日乗車券で乗車する時は、事前に通しておくことができるが、車内にもリーダーがあるのでどちらでもよい。
車掌台のカードリーダー挿入方向に注意
ホーム上や運転席側のカードリーダーは、カードの表面を上向きにして挿入する。
しかし車掌台のリーダーは垂直に設置されていて、表面を手前にして挿入する。
正しく挿入されると、別の取出口から出てくるが、逆に入れると挿入口に戻ってきてしまう。
「移動式運賃箱」がおもしろい
広島駅前、西広島など主要ターミナルの混雑時間帯などには、運賃箱を載せた台車を押している駅員の姿を見かける。
普通なら乗り物の床に固定されている運賃箱が、台車に載ってゴロゴロ移動するのが、なんとなくおかしい。
混雑解消のため、正規の降車口以外に乗務員がいない入口用のドアも開放するので、そこから降りた客の精算用である。
車内にあるのと同じタイプの銀色の運賃箱だが、自動車用のようなバッテリーも台車に載っていた。
「平面電停」に注意
広島に限らず、古くから路面電車がある街では、バリアフリー対応工事が進んでいるとはいえ、道幅が狭いため電停も狭くなってしまい、車と電車両方に注意して利用しなければならない電停が結構ある。
さらに広電では、路上に色を塗っただけで「ホーム」がない、「平面電停」というものがある。観光客はほとんど乗降しない場所であり、放送でも案内されるが、幅の狭さのみならず、車両との段差が大きくなるので注意が必要だ。
「平面電停」のある辺りなどをぶらぶらしたので、別記事でご紹介したい。