※本記事の写真はコンパクトデジカメで撮影しました。機会があればE-520撮影のものに差し替えたいと思います。
10月4日にE-520で写真が撮れたので、別記事に掲載しました。(クリックで移動)
現在、秋田市内の路線バスは、緑色の車体の秋田中央交通が大部分を占めている。
ところが、中央交通のバスに乗ろうとバス停で待っていると、こんなバスが来るかもしれない。
白い塗装のバスの正面には魚(鮎【2010年5月23日訂正】ヤマメ?)の絵と「三平バス」という文字が書かれている。
車体に緑色の部分はないから、旅行者とか不慣れな人には「さんぺいバス」とか「みひらバス」という社名の、中央交通とは別のバス会社のバスに見えなくもないと思う。
(ちなみにラッピング広告バスの場合、正面は中央交通の標準の緑色塗装で会社名も表記されているから、正面から見る限り、同社のバスであるのが一目瞭然である)
実は、このバスも秋田中央交通の車両であり、側面の後輪の直後にはちゃんと会社名が書かれている。
「三平」とは矢口高雄氏の漫画「釣りキチ三平(さんぺい)」の主人公「三平三平(みひらさんぺい)」であり、三平バスはそれが車体に描かれたバスなのだ。
2001年に秋田中央交通の創業80周年を記念して、秋田県出身の矢口氏の作品を車体に描いたバスを導入したのだが、その話を聞いたとき、僕は意外に感じた。
なぜなら、矢口氏は県南部、内陸の旧増田町(現・横手市)出身であり、県中央部で営業する同社との縁が感じられなかったからだ。(矢口氏は漫画家になる前は秋田市に本店を置く銀行の行員だったから、無縁ではないだろうけれど)【2010年5月23日追記】矢口氏とバス会社社長が旧知の仲だったため、実現したらしい。
そして、同社の80周年といっても特に一般向けイベント(記念式典とか出発式とか)があるわけでもなく、唐突に車両を導入しただけで、物足りない感じがした。
車内や同社ホームページを見ても、矢口氏や本作品、同社の80周年記念車であることなどの説明は一切ない。
そもそも、作品名の「釣りキチ三平」から「釣りキチ」を取って「三平バス」にしてしまったのは、“キチ”の表現に配慮したつもりだろうが、「三平」だけではかえって分かりづらい。秋田+三平=釣りキチ三平作者の矢口氏の出身地という連想ができない人だって大勢いるのだから、説明不足だ。
1983年に週刊誌連載を終了した作品だから、作品やキャラクター自体を知らない人もいるだろう。
矢口氏とどういう契約になっているのか分からないが(著作権表示もない)、ちょっとした解説を車内に掲示するとか、矢口氏のメッセージを掲載するとかしてもいいと思う。
折りしも、同作品の映画撮影が進んでいるというから、それに合わせて、キャンペーンを展開などしてもおもしろそうなのだが・・・
三平バスも以前記事にした広島の路面電車の乗り方のように、その土地の人には常識だが、旅人や引っ越してきたばかりの人の目線で見るとそうでないものの1つといえる。
山口県の岩国市交通局には「島耕作バス」がある(2003年運行開始)。三平と同様、作者の出身地にちなむものだが、こちらは車両正面に市章が付くが、「岩国市営」などの表記はない。しかし、「岩国出身の社会派漫画家。弘兼憲史」「ようこそ弘兼憲史の世界へ!」などと車体に表示(著作権表記もある)があるほか、車内はギャラリーになっており、1台しかないが時刻表にはどの便に使用されるか明記されている。
観光地の錦帯橋経由の路線で運用されるということもあるだろうが、説明・PRという点では、非常に分かりやすい。
本記事いちばん上の三平バスと同じ「日野レインボー」だが、こちらはウインカーの位置がヘッドライトと同じ高さ。
三平の方はもっと上に付いていて「雪国仕様」なのかもしれない。
【2022年12月15日追記】島耕作バスは2013年頃に廃車となって、後継の車両はなく、終了してしまった。
三平バスの話題に戻るが、車両側面には釣竿を振る三平くんが躍動的に大きく描かれていて、彼の上半身と左足は窓ガラスにかかっている。
この部分を車内から見ると・・・
外が透けて見えるような特殊フィルムではないので、絵の真横の席に座ると外が見えない!
以前乗った時、窓ガラスに細長い汚れが付いたか何かパッキンのような部品が垂れ下がっていると思い、よく見たら、絵の釣竿部分だった-ということがあった。
でもこの写真のように外が明るいと、車内からも三平くんが見える。
さらに楽しいのが、
シートの背もたれには楽しそうな三平くんとたくさんの鮎がいる。
ちなみに、三平バスの路線バス用の車両は多数(確か16台)ある。
日野自動車の「レインボー」(いちばん上の写真)と当時モデルチェンジして間もなかった、縦に並んだヘッドライトが斬新ないすゞ自動車の「エルガ・ミオ」(それ以外の車内も含めた本記事中全ての三平バスの写真)の2車種で、台数はいすゞの方が多い。
三平の絵は同一だが、車両メーカーにより、窓枠などのデザインや色が異なるので、受けるイメージは少し違う。(日野製は窓の位置が高すぎると思う)
やや残念なのは、秋田県中央部に5つの営業所と広い路線網を持つ同社でありながら、16台全部が秋田東営業所に集中して配置されているので、見たり乗ったりできる場所が限られているということ。
秋田市内の桜ガ丘、大住、南高校、御野場、将軍野方面などが秋田東営業所担当路線だ。
しかも、他の一般車両と共通で使用されるので、この時刻の便には必ず三平バスが来るというわけでもない。もっとも見るだけなら、昼間に秋田駅西口か東口のバス乗り場に30分もいれば数台はやって来るだろう。
行き先表示機が多くの路線に対応できるLED式に更新された車もあるようだから、他営業所に転属し、より多くの路線を走ることが将来あるかもしれない。
ほかにも、見られたらラッキーなのだが、1台だけ、貸切車両の三平バスもある。
貸切だからいつどこを走るか全く分からないが、大川反の秋田営業所に所属しており、年に数回見かける。路線車両とは図柄が違うような気がする。
※貸切用についてはこちら
【2017年4月10日追記】この後、2016年秋までに、路線用三平バスの全車両が緑の一般塗装に変更され、外観としての三平バスはなくなってしまった。
【2019年11月29日追記】2019年11月に秋田魁新報の連載「シリーズ時代を語る」で矢口高雄氏が取り上げられ、釣りキチ三平のタイトルと三平バスについて、少々触れられていた。
11月19日27回
作品名は当初、「「釣りバカ三平」になる予定だった。ところが週刊少年マガジンの編集部が釣りキチに変えちゃったの。」
理由は、「当時は「空手バカ一代」や「天才バカボン」、それに「野球狂の詩(うた)」という漫画があった」ためか、「新たにバカが加わるのはさすがに…と考えて変更したのでしょう。」。
後に「アニメ化されても、一部地域ではテレビで放映されなかった。「キチ」は不快用語だという理由でね。じゃあ抗議を受けたかというと、そんなことは一度もなかった。」。
原作は1973年から、アニメ化は1980年。「キチ」という言葉への認識が、その7年間で変わったということもあるのかも。
26日34回
「釣りキチ三平は秋田中央交通のバスやJA秋田ふるさとの段ボールなんかにも描かれている。」など「(昔は低く見られていた)漫画が目を引く存在になるなんて、感無量」。
だけど掲載時点では、外観が釣りキチ三平のバスはもうなくなっており、さらに廃車されたものもあり、車内の座席のみの三平バス。そんな現状を矢口氏はご存知なのだろうか。
10月4日にE-520で写真が撮れたので、別記事に掲載しました。(クリックで移動)
現在、秋田市内の路線バスは、緑色の車体の秋田中央交通が大部分を占めている。
ところが、中央交通のバスに乗ろうとバス停で待っていると、こんなバスが来るかもしれない。
白い塗装のバスの正面には魚(
車体に緑色の部分はないから、旅行者とか不慣れな人には「さんぺいバス」とか「みひらバス」という社名の、中央交通とは別のバス会社のバスに見えなくもないと思う。
(ちなみにラッピング広告バスの場合、正面は中央交通の標準の緑色塗装で会社名も表記されているから、正面から見る限り、同社のバスであるのが一目瞭然である)
実は、このバスも秋田中央交通の車両であり、側面の後輪の直後にはちゃんと会社名が書かれている。
「三平」とは矢口高雄氏の漫画「釣りキチ三平(さんぺい)」の主人公「三平三平(みひらさんぺい)」であり、三平バスはそれが車体に描かれたバスなのだ。
2001年に秋田中央交通の創業80周年を記念して、秋田県出身の矢口氏の作品を車体に描いたバスを導入したのだが、その話を聞いたとき、僕は意外に感じた。
なぜなら、矢口氏は県南部、内陸の旧増田町(現・横手市)出身であり、県中央部で営業する同社との縁が感じられなかったからだ。(矢口氏は漫画家になる前は秋田市に本店を置く銀行の行員だったから、無縁ではないだろうけれど)【2010年5月23日追記】矢口氏とバス会社社長が旧知の仲だったため、実現したらしい。
そして、同社の80周年といっても特に一般向けイベント(記念式典とか出発式とか)があるわけでもなく、唐突に車両を導入しただけで、物足りない感じがした。
車内や同社ホームページを見ても、矢口氏や本作品、同社の80周年記念車であることなどの説明は一切ない。
そもそも、作品名の「釣りキチ三平」から「釣りキチ」を取って「三平バス」にしてしまったのは、“キチ”の表現に配慮したつもりだろうが、「三平」だけではかえって分かりづらい。秋田+三平=釣りキチ三平作者の矢口氏の出身地という連想ができない人だって大勢いるのだから、説明不足だ。
1983年に週刊誌連載を終了した作品だから、作品やキャラクター自体を知らない人もいるだろう。
矢口氏とどういう契約になっているのか分からないが(著作権表示もない)、ちょっとした解説を車内に掲示するとか、矢口氏のメッセージを掲載するとかしてもいいと思う。
折りしも、同作品の映画撮影が進んでいるというから、それに合わせて、キャンペーンを展開などしてもおもしろそうなのだが・・・
三平バスも以前記事にした広島の路面電車の乗り方のように、その土地の人には常識だが、旅人や引っ越してきたばかりの人の目線で見るとそうでないものの1つといえる。
山口県の岩国市交通局には「島耕作バス」がある(2003年運行開始)。三平と同様、作者の出身地にちなむものだが、こちらは車両正面に市章が付くが、「岩国市営」などの表記はない。しかし、「岩国出身の社会派漫画家。弘兼憲史」「ようこそ弘兼憲史の世界へ!」などと車体に表示(著作権表記もある)があるほか、車内はギャラリーになっており、1台しかないが時刻表にはどの便に使用されるか明記されている。
観光地の錦帯橋経由の路線で運用されるということもあるだろうが、説明・PRという点では、非常に分かりやすい。
本記事いちばん上の三平バスと同じ「日野レインボー」だが、こちらはウインカーの位置がヘッドライトと同じ高さ。
三平の方はもっと上に付いていて「雪国仕様」なのかもしれない。
【2022年12月15日追記】島耕作バスは2013年頃に廃車となって、後継の車両はなく、終了してしまった。
三平バスの話題に戻るが、車両側面には釣竿を振る三平くんが躍動的に大きく描かれていて、彼の上半身と左足は窓ガラスにかかっている。
この部分を車内から見ると・・・
外が透けて見えるような特殊フィルムではないので、絵の真横の席に座ると外が見えない!
以前乗った時、窓ガラスに細長い汚れが付いたか何かパッキンのような部品が垂れ下がっていると思い、よく見たら、絵の釣竿部分だった-ということがあった。
でもこの写真のように外が明るいと、車内からも三平くんが見える。
さらに楽しいのが、
シートの背もたれには楽しそうな三平くんとたくさんの鮎がいる。
ちなみに、三平バスの路線バス用の車両は多数(確か16台)ある。
日野自動車の「レインボー」(いちばん上の写真)と当時モデルチェンジして間もなかった、縦に並んだヘッドライトが斬新ないすゞ自動車の「エルガ・ミオ」(それ以外の車内も含めた本記事中全ての三平バスの写真)の2車種で、台数はいすゞの方が多い。
三平の絵は同一だが、車両メーカーにより、窓枠などのデザインや色が異なるので、受けるイメージは少し違う。(日野製は窓の位置が高すぎると思う)
やや残念なのは、秋田県中央部に5つの営業所と広い路線網を持つ同社でありながら、16台全部が秋田東営業所に集中して配置されているので、見たり乗ったりできる場所が限られているということ。
秋田市内の桜ガ丘、大住、南高校、御野場、将軍野方面などが秋田東営業所担当路線だ。
しかも、他の一般車両と共通で使用されるので、この時刻の便には必ず三平バスが来るというわけでもない。もっとも見るだけなら、昼間に秋田駅西口か東口のバス乗り場に30分もいれば数台はやって来るだろう。
行き先表示機が多くの路線に対応できるLED式に更新された車もあるようだから、他営業所に転属し、より多くの路線を走ることが将来あるかもしれない。
ほかにも、見られたらラッキーなのだが、1台だけ、貸切車両の三平バスもある。
貸切だからいつどこを走るか全く分からないが、大川反の秋田営業所に所属しており、年に数回見かける。路線車両とは図柄が違うような気がする。
※貸切用についてはこちら
【2017年4月10日追記】この後、2016年秋までに、路線用三平バスの全車両が緑の一般塗装に変更され、外観としての三平バスはなくなってしまった。
【2019年11月29日追記】2019年11月に秋田魁新報の連載「シリーズ時代を語る」で矢口高雄氏が取り上げられ、釣りキチ三平のタイトルと三平バスについて、少々触れられていた。
11月19日27回
作品名は当初、「「釣りバカ三平」になる予定だった。ところが週刊少年マガジンの編集部が釣りキチに変えちゃったの。」
理由は、「当時は「空手バカ一代」や「天才バカボン」、それに「野球狂の詩(うた)」という漫画があった」ためか、「新たにバカが加わるのはさすがに…と考えて変更したのでしょう。」。
後に「アニメ化されても、一部地域ではテレビで放映されなかった。「キチ」は不快用語だという理由でね。じゃあ抗議を受けたかというと、そんなことは一度もなかった。」。
原作は1973年から、アニメ化は1980年。「キチ」という言葉への認識が、その7年間で変わったということもあるのかも。
26日34回
「釣りキチ三平は秋田中央交通のバスやJA秋田ふるさとの段ボールなんかにも描かれている。」など「(昔は低く見られていた)漫画が目を引く存在になるなんて、感無量」。
だけど掲載時点では、外観が釣りキチ三平のバスはもうなくなっており、さらに廃車されたものもあり、車内の座席のみの三平バス。そんな現状を矢口氏はご存知なのだろうか。