秋田市を代表するイベント「竿燈(かんとう)まつり」まであと1か月。
青森ねぶた、仙台七夕と合わせて東北3大夏まつり(山形の花笠を入れて4大とすることもある)とされ、「祭り(民俗行事)」というより「イベント」化した感も強く、秋田市民からは「ほとんど見に行かない」「参加できない(=見ているだけ)のでつまらない」「うちの地域の祭りの方がいい」という声も耳にするが、僕にとっては“地元のお祭り”だし、美しくかつ力強く見ごたえのある祭りだと思う。
由来はねぶたなどとおなじく、七夕の疫病除けの行事。かつては「ねぶり流し」と呼ばれたが、「ねぶり」とは「眠り=病魔、邪気」のことで、「ねぶた・ねぷた」と同じ語源ではないかと思う。
竿燈は「豊作を願う行事」とされることもあるが、竿燈の形が稲穂に似ていて、秋田が米所なのにちなんだ、どちらかと言えば二次的なものではないだろうか。
なお、常用漢字の「竿灯」が正式表記だった時期もあるが、現在は本来の「竿燈」に戻っている(ATOKでは両方辞書に入っていた)。
元々は各町ごとにそれぞれの地域で数本の竿燈を上げていたようだが、現在は、各町内や企業・学校から200本以上の竿燈が大通りに集結して一斉に上げる。さしずめ「光の稲穂の波」になるが、本来の姿とは少し違うわけだ。
竿燈は100万人以上の観客が来るとはいえ、他の3大まつりほど多くないのは、基本的に観客も演技者も移動しないから、ねぶた(ねぶたが動く)や七夕(観客が歩きながら見る)のように、大量の観客をさばけないのだと思う。また、演技者が体力を消耗するから、日程的にも4日間と短い。
6月頃になると、市内中心部の町内や企業では、夜に駐車場などで竿燈の練習が行われる。練習なので、提灯に明かりが灯らないばかりか、ボロボロの使い古しの提灯を使うことが多いのであまり美しくはないが、秋田市中心部の住民にとっては、夏が近いのを感じる風景だ。
ただし、本番1か月前頃に、「合同練習」として、いくつかの町内が集まって、提灯に灯を入れて練習を行っている。今年も7月1日から4日まで行われている。秋田市役所前での合同練習を見に行った。
19時から始まったようで、山王大通りに面した芝生には、10町内から1本ずつ参加していたようだ。この芝生は、普段は秋田市役所の竿燈会(職員有志で竿燈に出場する団体)の練習場所だが、今日は合同練習に場所を譲ったらしく、市役所竿燈会は玄関前付近でひっそりと練習していた。
竿燈は、演技者(「差し手」という)の年齢に合わせてサイズがあるが、今日はすべて、大人用の一般的な「大若(おおわか)」。高さ12メートル、重さ50キロで竹の骨組みに46個の提灯が付いている。てっぺんに日の丸が付いているが、本番では神社の御幣を取り付ける。
19時半前にホイッスルが鳴って一斉に中断、横に倒して、ろうそくに点火。灯が入ると、本番同様に、ホイッスルを合図に一斉に立ち上げ、次の合図で演技開始。本番では、200本の竿燈の列が一斉に立ち上がるこの瞬間がとても美しい。
最初の合図では立てるだけ(根元は地面に付いている)
次の合図で持ち上げて演技開始
各町名、数人の差し手が交代で、手のひら、腰、額などに50キロの不安定な竿燈を乗せていく。風などでバランスが崩れて倒れることもある。
ゆらゆら揺れる竿燈と、ろうそくの柔らかい明かりが、まさに稲穂のようできれい。
ギャラリーはご近所さんや通りがかりなどがそれなりにいたが、関係者の方が多いくらい。ロープなどもなく、接近して見られる(倒れてきたら自己責任で!)。
太鼓と笛のお囃子を担当するのは「囃子方」。かつては女人禁制の竿燈だったが、今は囃子方は女性も参加でき、むしろ女性の方が多い。
本番ではトラックの荷台を飾り付けた屋台に太鼓を乗せているが、今日は芝生上の一角に各町内の太鼓を並べていた。
本番ではそろいの衣装だが、今回は差し手・囃子方とも服装は自由(はんてんを羽織っていた町内はあった)で、高校の制服で笛を吹く女の子なんかもいてほほえましい。
こういう風に竿燈が横に広がって重なり合う光景は、ビルに挟まれた細長い通りで行われ、人が多い本番ではなかなか見られない。
倒れたり、バランスを崩した勢いで、消えてしまうろうそくもある。本番では点けなおすのだろうが、30分ほどで終わる今日はそのままだった。
竿がずいぶんしなって、提灯が高い位置にあるが、「継ぎ竹」といって、竿燈本体の下に1本120センチほどの延長用の竹を何本か足している(銀色の部分がつなぎ目?)。足すほど難易度が上がり、バキッと折れることもあるが、7本足すツワモノもいるとか。写真は4本くらい足している。
こういう「技」を楽しむには、昼に見た方がいいかもしれない。
光の重なりは瞬間ごとに異なり、全部違う写真が撮れる。
提灯の図案は、各町内ごとの伝統のマーク。企業ロゴのものもあるが、その企業の人たちが実際にやっている場合と、町内についているスポンサーの場合がある。
それにしても1個6000円(つまり竿燈1本30万円弱!)の提灯は職人の手作り。伝統の町内別の図柄も見て楽しいが、企業のロゴマークもまるでカラーコピーしたかパソコンでデザインしたかのように、本物に忠実に描かれているのはすごい技だと思う。後日の記事でも取り上げました
7月2日の秋田さきがけ新報25面には「1、2両日は上通りの町内が市役所庁舎前庭で、3、4両日は下通りの町内が同市旭南の秋田銀行馬口労町支店駐車場で、それぞれ行う」とあった。
記事中の「上通り/下通り」とは初めて聞く言葉だ。どこかを境にして区分けするんだろうけど、どこだろう?
【7月26日追記】竿燈まつり実行委員会に伺ったところ、五丁目橋の横町通りを境にして、北が上、南が下とのこと。かつては上下の町内から世話役を出し、祭りの運営を行っていたらしい。
ともかく、今週の金曜と土曜は旭南地区で見られるようです。こちらで紹介しています
本番の頃はもう真っ暗な時間帯だが、一月早くまだ明るさが残る空に浮かぶ竿燈もきれいだった。
音に驚いたのか、ムクドリが近くの遊歩道の木の中でギャアギャア騒いですごかった。下を歩くと、ムクドリの落とし物の被害に遭う確率が高そう…
【7月26日追記】対策として枝打ち作業が行われた。
青森ねぶた、仙台七夕と合わせて東北3大夏まつり(山形の花笠を入れて4大とすることもある)とされ、「祭り(民俗行事)」というより「イベント」化した感も強く、秋田市民からは「ほとんど見に行かない」「参加できない(=見ているだけ)のでつまらない」「うちの地域の祭りの方がいい」という声も耳にするが、僕にとっては“地元のお祭り”だし、美しくかつ力強く見ごたえのある祭りだと思う。
由来はねぶたなどとおなじく、七夕の疫病除けの行事。かつては「ねぶり流し」と呼ばれたが、「ねぶり」とは「眠り=病魔、邪気」のことで、「ねぶた・ねぷた」と同じ語源ではないかと思う。
竿燈は「豊作を願う行事」とされることもあるが、竿燈の形が稲穂に似ていて、秋田が米所なのにちなんだ、どちらかと言えば二次的なものではないだろうか。
なお、常用漢字の「竿灯」が正式表記だった時期もあるが、現在は本来の「竿燈」に戻っている(ATOKでは両方辞書に入っていた)。
元々は各町ごとにそれぞれの地域で数本の竿燈を上げていたようだが、現在は、各町内や企業・学校から200本以上の竿燈が大通りに集結して一斉に上げる。さしずめ「光の稲穂の波」になるが、本来の姿とは少し違うわけだ。
竿燈は100万人以上の観客が来るとはいえ、他の3大まつりほど多くないのは、基本的に観客も演技者も移動しないから、ねぶた(ねぶたが動く)や七夕(観客が歩きながら見る)のように、大量の観客をさばけないのだと思う。また、演技者が体力を消耗するから、日程的にも4日間と短い。
6月頃になると、市内中心部の町内や企業では、夜に駐車場などで竿燈の練習が行われる。練習なので、提灯に明かりが灯らないばかりか、ボロボロの使い古しの提灯を使うことが多いのであまり美しくはないが、秋田市中心部の住民にとっては、夏が近いのを感じる風景だ。
ただし、本番1か月前頃に、「合同練習」として、いくつかの町内が集まって、提灯に灯を入れて練習を行っている。今年も7月1日から4日まで行われている。秋田市役所前での合同練習を見に行った。
19時から始まったようで、山王大通りに面した芝生には、10町内から1本ずつ参加していたようだ。この芝生は、普段は秋田市役所の竿燈会(職員有志で竿燈に出場する団体)の練習場所だが、今日は合同練習に場所を譲ったらしく、市役所竿燈会は玄関前付近でひっそりと練習していた。
竿燈は、演技者(「差し手」という)の年齢に合わせてサイズがあるが、今日はすべて、大人用の一般的な「大若(おおわか)」。高さ12メートル、重さ50キロで竹の骨組みに46個の提灯が付いている。てっぺんに日の丸が付いているが、本番では神社の御幣を取り付ける。
19時半前にホイッスルが鳴って一斉に中断、横に倒して、ろうそくに点火。灯が入ると、本番同様に、ホイッスルを合図に一斉に立ち上げ、次の合図で演技開始。本番では、200本の竿燈の列が一斉に立ち上がるこの瞬間がとても美しい。
最初の合図では立てるだけ(根元は地面に付いている)
次の合図で持ち上げて演技開始
各町名、数人の差し手が交代で、手のひら、腰、額などに50キロの不安定な竿燈を乗せていく。風などでバランスが崩れて倒れることもある。
ゆらゆら揺れる竿燈と、ろうそくの柔らかい明かりが、まさに稲穂のようできれい。
ギャラリーはご近所さんや通りがかりなどがそれなりにいたが、関係者の方が多いくらい。ロープなどもなく、接近して見られる(倒れてきたら自己責任で!)。
太鼓と笛のお囃子を担当するのは「囃子方」。かつては女人禁制の竿燈だったが、今は囃子方は女性も参加でき、むしろ女性の方が多い。
本番ではトラックの荷台を飾り付けた屋台に太鼓を乗せているが、今日は芝生上の一角に各町内の太鼓を並べていた。
本番ではそろいの衣装だが、今回は差し手・囃子方とも服装は自由(はんてんを羽織っていた町内はあった)で、高校の制服で笛を吹く女の子なんかもいてほほえましい。
こういう風に竿燈が横に広がって重なり合う光景は、ビルに挟まれた細長い通りで行われ、人が多い本番ではなかなか見られない。
倒れたり、バランスを崩した勢いで、消えてしまうろうそくもある。本番では点けなおすのだろうが、30分ほどで終わる今日はそのままだった。
竿がずいぶんしなって、提灯が高い位置にあるが、「継ぎ竹」といって、竿燈本体の下に1本120センチほどの延長用の竹を何本か足している(銀色の部分がつなぎ目?)。足すほど難易度が上がり、バキッと折れることもあるが、7本足すツワモノもいるとか。写真は4本くらい足している。
こういう「技」を楽しむには、昼に見た方がいいかもしれない。
光の重なりは瞬間ごとに異なり、全部違う写真が撮れる。
提灯の図案は、各町内ごとの伝統のマーク。企業ロゴのものもあるが、その企業の人たちが実際にやっている場合と、町内についているスポンサーの場合がある。
それにしても1個6000円(つまり竿燈1本30万円弱!)の提灯は職人の手作り。伝統の町内別の図柄も見て楽しいが、企業のロゴマークもまるでカラーコピーしたかパソコンでデザインしたかのように、本物に忠実に描かれているのはすごい技だと思う。後日の記事でも取り上げました
7月2日の秋田さきがけ新報25面には「1、2両日は上通りの町内が市役所庁舎前庭で、3、4両日は下通りの町内が同市旭南の秋田銀行馬口労町支店駐車場で、それぞれ行う」とあった。
記事中の「上通り/下通り」とは初めて聞く言葉だ。どこかを境にして区分けするんだろうけど、どこだろう?
【7月26日追記】竿燈まつり実行委員会に伺ったところ、五丁目橋の横町通りを境にして、北が上、南が下とのこと。かつては上下の町内から世話役を出し、祭りの運営を行っていたらしい。
ともかく、今週の金曜と土曜は旭南地区で見られるようです。こちらで紹介しています
本番の頃はもう真っ暗な時間帯だが、一月早くまだ明るさが残る空に浮かぶ竿燈もきれいだった。
音に驚いたのか、ムクドリが近くの遊歩道の木の中でギャアギャア騒いですごかった。下を歩くと、ムクドリの落とし物の被害に遭う確率が高そう…
【7月26日追記】対策として枝打ち作業が行われた。