先日に続いて、明日付で警察庁交通規制課長が秋田県警本部長として赴任されるのを記念(?)して、道路標識の話題です。
昨年末の記事で、歩行者と自転車が通行できる道路において、本標識(絵がかいてあるもの)と補助標識(規制対象などを文字で示したもの)の組み合わせにより、「一見違う標識に見えるが、言っていることは実は同じ」という標識を紹介した。
その続きとして、今回は「歩行者専用」と「自転車及び歩行者専用」標識に付けられた補助標識を見てみたい。
まず、補助標識は「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の別表第一において種類や意味が定められている。
それによれば、本標識の規制や指示などが適用される区域、時間、車輌の種類、理由などを表示することになっている。しかし、具体的に「こう表記しなさい」と厳密には定められていないようだ(警察庁からの通達や各公安委員会の内規などはあるかもしれない)。
その結果、各都道府県公安委員会ごとあるいはケースバイケースで、以下のようにバラつきが見られる。
●親切な補助標識
熊本市中心部のアーケード
この補助標識には「歩行者用道路/自転車も乗れません」とある。
「歩行者用道路」という表示は秋田県でも見かける。あまり意味がなさそうに思うが、いちおう「規制理由」を示しているのだろうか。
一方、下の段「自転車も乗れません」は、命令で定めた補助標識の規定外の使い方。上の本標識の意味を補足というか解説している。
「歩行者専用」の道路では、当然車両は通れない。自転車も車両だから、乗ったままで通ることはできず、降りて押さないと通れないのだが、標識の意味(自転車もダメなこと)を知らない人もいるだろうから、強調のためにも設置した意義はあるだろう。
●軽車両を除く=自転車・原付?
別の熊本市内の商店街
右側の標識はこちらも(時間を区切っているが)歩行者専用。
しかし、「自転車も乗れません」の補助標識はない(商店街が設置した看板はあった)。
そして左側の進入禁止の補助標識。対象車両が「自動車・原付」とある。
普通こういう場合、「軽車両を除く」と表示されることが多いが、どう違うんだろう?
道路交通法では「自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバス」を車両という。(以下、この道には架線がないからトロリーバスは置いておく)
「自動車・原付」の場合、軽車両が対象外で、「軽車両を除く」の場合、自動車と原付が対象ということになり、結局言っていることは同じ。
「軽車両を除く」では、原付で通り抜けてしまう人がいるなどの理由で、「自動車・原付」としたのかもしれない。
設置場所の状況に応じて臨機応変にやっているとも言えなくもないが、統一性がない。
初めてその場に来て初めてその標識を見る人もいるだろうし、運転しながら瞬時に判別できるものでなければならないだろう。そのために全国共通の図柄にしているのに、その下にうじゃうじゃ日本語で書かれていては、意味がない。統一するべきと思う。
●指定車・許可車
鹿児島市内の「歩行者専用」
秋田市内にあるものと同様、補助標識(3行目)に「軽車両を除く」とあるので、「自転車及び歩行者専用」を設置すればよさそうなものだが。
では、補助標識2行目の「指定車・許可車を除く」はどういう意味だろう。
まず「指定車」。
北海道警のサイトに参考になる情報があった(http://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/koutuu/chukin_jogai/tukokinsi_jogai.html)。
ここで取り上げている通行禁止関係の場合(駐停車禁止の場合とは対象が異なる)、警察や消防の車両、ごみ収集車やバキュームカー、道路維持作業車(除雪車も入るかな)が該当する。これらは性質上当然だろう。あとは選挙カーも該当するのはちょっと意外。狭い道で騒いでほしくないけど。
また、郵便や電報の集配、道路標識設置作業などに使う車両は、警察署から標章をもらって掲出すれば、指定車の扱いになるとのこと。
そして「許可車」。
これは規制区域内に住宅や車庫(駐車場)があるなどやむを得ない理由がある場合、警察署長の許可を得て「通行禁止道路通行許可証」を交付され、標章を掲出した車のこと。許可される期間は最長でも3年間(更新が必要)。
指定車とは、通行できる場所と期間が決められている点が異なるようだ。
【15日追記】秋田県警の許可証は、ハガキの半分くらいのサイズの水色の紙に「許」と大きく書かれたもの。秋田市内のある幼稚園の送迎バス(マイクロバスサイズ)を見たら、フロントガラス右上にこの「許」が5~6枚ほど並べて貼られていた。
この園ではおそらくきめ細かな送迎を行うために申請をしていて、警察もその理由を「やむを得ない」と判断して許可を与えているんだ。(もっともマイクロとはいえバスだから、極端な細道ではないと思うけど)
●補助標識コレクションin秋田
では、以上を踏まえて、秋田市中心部の「自転車及び歩行者専用」の標識を見てみましょう。
秋田市内では、小学校の周辺などを中心に、住宅地の細い道で自転車歩行者専用の規制が敷かれている場所が少なくない。
ただ、補助標識がいい加減で、同じ道のこっち端とあっち端で内容が異なることも珍しくない。
基本パターン
時間帯の補助標識はあるが、規制対象の表示はない。
これだと自転車以外の軽車両(リヤカーなど)も通れないことになる。
「軽車両を除く」
ここは軽車両は通行できることになる。秋田市内にはこの組み合わせの標識が多い。
理屈では、上記2つの道路では、指定車や許可車は通行できないことになる。
車止めがあるとか極端に道幅が狭いとかいうわけではないので、緊急自動車が入れないというのは通念上おかしいし、沿道のお宅には車庫があるのでクルマが通っていることになる。
したがって、単に「指定車・許可車を除く」の補助標識設置を省略していると考えるべきだろう。
「軽車両を除く」についても同様ととらえていいかもしれない。
「指定車・許可車を除く」
真面目に表示している道もある。(道幅などは他と同じ)
でも、果たして沿道のお宅の全世帯の全車両が許可をもらっているのだろうか? まともに申請受理、許可証交付していたら、警察署の業務も大変そうに思えるが…(詮索しないでおきます)
比較的新しそうな標識。
「区間内住民の関係車両を除く」
これは新たなタイプ。
沿道住民に関係する車なら、許可がなくても通ってもいいということのようだ。申請や許可証交付の手間も省けるね。
住民だけでなく、住民を訪問するよその人も大丈夫なんだろう。
「指定車・許可車を除く/規制区間内住民の関係車両を除く」
これは長ったらしい。
字体や材質からして、1つ上のよりは古いバージョンらしい。「区間内住民~」が「規制区間内住民~」になっている。
この場合、この区間に該当する「許可車」って極めて少ないのではないだろうか。
住民は無条件で通行できるわけで、許可をもらう必要がないのだから。
許可車が考えられるとすれば、「よそに住んでいるが、駐車場や勤務先が規制区間内にある」とか「よその人が通り抜ける」場合くらいか? でも、この道路沿いには、駐車場やオフィスはなさそうだし、通り抜けるという理由で許可が下りることはあり得ないだろう。(実際には申請の都度、警察署長が判断するのだが)
最後にご覧いただくのは、
フル装備!(ここ1か所しか発見できなかった)
「歩行者用道路/軽車両を除く/指定車・許可車を除く/規制区間内住民の関係車両を除く」と、今まで紹介した補助標識がすべて付いている。
「指定車・許可車を除く」だけ文字が違うので、別の時期の設置だろうか。あえて示す必要があったのだろうか。
以上のようなバラつきは、標識が設置された時期が異なることが最大の原因だと思われる。
統一しようとすれば費用がかかるし、そうしてまでやることではないと思う。(実際には、実情や沿道の住民の意向を受けて警察が判断することですが)
こうした規制が行われるのは、ラッシュ時などに「抜け道」として使う者がいるからだろう。
現に、これらの道でも、朝夕に通り抜けていく車が見受けられる。許可証も掲出していないし、通り抜けるからには住民の関係車両でもないだろう。
やっぱり、補助標識をもっとシンプルにできないだろうか。例えば、「抜け道としての通行禁止」といった内容にするとか。
※関連記事はこちら
昨年末の記事で、歩行者と自転車が通行できる道路において、本標識(絵がかいてあるもの)と補助標識(規制対象などを文字で示したもの)の組み合わせにより、「一見違う標識に見えるが、言っていることは実は同じ」という標識を紹介した。
その続きとして、今回は「歩行者専用」と「自転車及び歩行者専用」標識に付けられた補助標識を見てみたい。
まず、補助標識は「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の別表第一において種類や意味が定められている。
それによれば、本標識の規制や指示などが適用される区域、時間、車輌の種類、理由などを表示することになっている。しかし、具体的に「こう表記しなさい」と厳密には定められていないようだ(警察庁からの通達や各公安委員会の内規などはあるかもしれない)。
その結果、各都道府県公安委員会ごとあるいはケースバイケースで、以下のようにバラつきが見られる。
●親切な補助標識
熊本市中心部のアーケード
この補助標識には「歩行者用道路/自転車も乗れません」とある。
「歩行者用道路」という表示は秋田県でも見かける。あまり意味がなさそうに思うが、いちおう「規制理由」を示しているのだろうか。
一方、下の段「自転車も乗れません」は、命令で定めた補助標識の規定外の使い方。上の本標識の意味を補足というか解説している。
「歩行者専用」の道路では、当然車両は通れない。自転車も車両だから、乗ったままで通ることはできず、降りて押さないと通れないのだが、標識の意味(自転車もダメなこと)を知らない人もいるだろうから、強調のためにも設置した意義はあるだろう。
●軽車両を除く=自転車・原付?
別の熊本市内の商店街
右側の標識はこちらも(時間を区切っているが)歩行者専用。
しかし、「自転車も乗れません」の補助標識はない(商店街が設置した看板はあった)。
そして左側の進入禁止の補助標識。対象車両が「自動車・原付」とある。
普通こういう場合、「軽車両を除く」と表示されることが多いが、どう違うんだろう?
道路交通法では「自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバス」を車両という。(以下、この道には架線がないからトロリーバスは置いておく)
「自動車・原付」の場合、軽車両が対象外で、「軽車両を除く」の場合、自動車と原付が対象ということになり、結局言っていることは同じ。
「軽車両を除く」では、原付で通り抜けてしまう人がいるなどの理由で、「自動車・原付」としたのかもしれない。
設置場所の状況に応じて臨機応変にやっているとも言えなくもないが、統一性がない。
初めてその場に来て初めてその標識を見る人もいるだろうし、運転しながら瞬時に判別できるものでなければならないだろう。そのために全国共通の図柄にしているのに、その下にうじゃうじゃ日本語で書かれていては、意味がない。統一するべきと思う。
●指定車・許可車
鹿児島市内の「歩行者専用」
秋田市内にあるものと同様、補助標識(3行目)に「軽車両を除く」とあるので、「自転車及び歩行者専用」を設置すればよさそうなものだが。
では、補助標識2行目の「指定車・許可車を除く」はどういう意味だろう。
まず「指定車」。
北海道警のサイトに参考になる情報があった(http://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/koutuu/chukin_jogai/tukokinsi_jogai.html)。
ここで取り上げている通行禁止関係の場合(駐停車禁止の場合とは対象が異なる)、警察や消防の車両、ごみ収集車やバキュームカー、道路維持作業車(除雪車も入るかな)が該当する。これらは性質上当然だろう。あとは選挙カーも該当するのはちょっと意外。狭い道で騒いでほしくないけど。
また、郵便や電報の集配、道路標識設置作業などに使う車両は、警察署から標章をもらって掲出すれば、指定車の扱いになるとのこと。
そして「許可車」。
これは規制区域内に住宅や車庫(駐車場)があるなどやむを得ない理由がある場合、警察署長の許可を得て「通行禁止道路通行許可証」を交付され、標章を掲出した車のこと。許可される期間は最長でも3年間(更新が必要)。
指定車とは、通行できる場所と期間が決められている点が異なるようだ。
【15日追記】秋田県警の許可証は、ハガキの半分くらいのサイズの水色の紙に「許」と大きく書かれたもの。秋田市内のある幼稚園の送迎バス(マイクロバスサイズ)を見たら、フロントガラス右上にこの「許」が5~6枚ほど並べて貼られていた。
この園ではおそらくきめ細かな送迎を行うために申請をしていて、警察もその理由を「やむを得ない」と判断して許可を与えているんだ。(もっともマイクロとはいえバスだから、極端な細道ではないと思うけど)
●補助標識コレクションin秋田
では、以上を踏まえて、秋田市中心部の「自転車及び歩行者専用」の標識を見てみましょう。
秋田市内では、小学校の周辺などを中心に、住宅地の細い道で自転車歩行者専用の規制が敷かれている場所が少なくない。
ただ、補助標識がいい加減で、同じ道のこっち端とあっち端で内容が異なることも珍しくない。
基本パターン
時間帯の補助標識はあるが、規制対象の表示はない。
これだと自転車以外の軽車両(リヤカーなど)も通れないことになる。
「軽車両を除く」
ここは軽車両は通行できることになる。秋田市内にはこの組み合わせの標識が多い。
理屈では、上記2つの道路では、指定車や許可車は通行できないことになる。
車止めがあるとか極端に道幅が狭いとかいうわけではないので、緊急自動車が入れないというのは通念上おかしいし、沿道のお宅には車庫があるのでクルマが通っていることになる。
したがって、単に「指定車・許可車を除く」の補助標識設置を省略していると考えるべきだろう。
「軽車両を除く」についても同様ととらえていいかもしれない。
「指定車・許可車を除く」
真面目に表示している道もある。(道幅などは他と同じ)
でも、果たして沿道のお宅の全世帯の全車両が許可をもらっているのだろうか? まともに申請受理、許可証交付していたら、警察署の業務も大変そうに思えるが…(詮索しないでおきます)
比較的新しそうな標識。
「区間内住民の関係車両を除く」
これは新たなタイプ。
沿道住民に関係する車なら、許可がなくても通ってもいいということのようだ。申請や許可証交付の手間も省けるね。
住民だけでなく、住民を訪問するよその人も大丈夫なんだろう。
「指定車・許可車を除く/規制区間内住民の関係車両を除く」
これは長ったらしい。
字体や材質からして、1つ上のよりは古いバージョンらしい。「区間内住民~」が「規制区間内住民~」になっている。
この場合、この区間に該当する「許可車」って極めて少ないのではないだろうか。
住民は無条件で通行できるわけで、許可をもらう必要がないのだから。
許可車が考えられるとすれば、「よそに住んでいるが、駐車場や勤務先が規制区間内にある」とか「よその人が通り抜ける」場合くらいか? でも、この道路沿いには、駐車場やオフィスはなさそうだし、通り抜けるという理由で許可が下りることはあり得ないだろう。(実際には申請の都度、警察署長が判断するのだが)
最後にご覧いただくのは、
フル装備!(ここ1か所しか発見できなかった)
「歩行者用道路/軽車両を除く/指定車・許可車を除く/規制区間内住民の関係車両を除く」と、今まで紹介した補助標識がすべて付いている。
「指定車・許可車を除く」だけ文字が違うので、別の時期の設置だろうか。あえて示す必要があったのだろうか。
以上のようなバラつきは、標識が設置された時期が異なることが最大の原因だと思われる。
統一しようとすれば費用がかかるし、そうしてまでやることではないと思う。(実際には、実情や沿道の住民の意向を受けて警察が判断することですが)
こうした規制が行われるのは、ラッシュ時などに「抜け道」として使う者がいるからだろう。
現に、これらの道でも、朝夕に通り抜けていく車が見受けられる。許可証も掲出していないし、通り抜けるからには住民の関係車両でもないだろう。
やっぱり、補助標識をもっとシンプルにできないだろうか。例えば、「抜け道としての通行禁止」といった内容にするとか。
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