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麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

眼のある風景

2007年06月23日 | 鑑賞
 劇団文化座第126回公演『眼のある風景』は、副題が、「夢しぐれ東長崎バイフー寮」(原作/窪島誠一郎 脚本/杉浦久幸 演出/西川信廣)。
 また、劇団創立65周年記念作品の一本であり、主人公の画家・靉光生誕100年の節目の年に公演される舞台でもある。
                             【文中敬称略】

 まずご自身が「池袋モンパルナス」を実際見て知っている、巨匠・朝倉摂の美術が圧巻だ。
 おっと、急に「池袋モンパルナス」と言われてもネ・・・。
 昭和のはじめから戦後にかけて池袋(千早町、要町、椎名町周辺)に芸術家が集ったアトリエや下宿が多くあった。その総称が「池袋モンパルナス」で、バイフー寮は靉光らの住む、その中のひとつの下宿である。
 で『眼のある風景』は、靉光の代表作で、独立美術協会賞受賞(1938年)作品のこと。

 以前、劇団銅鑼が、タイトルもズバリ『池袋モンパルナス』と題して、やはり靉光を主人公に舞台化している。。。

 本作は、まず靉光(白幡大介)らの絵を傷つけた青年(後藤晋)の裁判から始まる、という意表をつく切り口で幕が開く・・・靉光の最期を看取った男・串方良朗(米山実)の登場もシャープで格好良く、さすが西川演出!と思わせる。

 が、このあと串方が廃墟となったバイフー寮で、大家だった花岡とり子(佐々木愛)と会い、ようやく「靉光たちの時代」に入るまでの助走が長い…。
 そして長すぎた助走のせいか、そのあと作品は低空飛行のまま起伏なく、2時間20分休憩なしの、淡々とした滑空で終幕してしまう。
 残念

 戦時下にもがく画家や音楽家や雑誌編集者…それを支える妻や妹らの激しい慟哭がない。

 描かれてはいる。ユーモアも交えながら・・・確かに当時の日常は、楽しいこともあったろうし、わかった上であえて重くならない庶民の知恵も働いただろうから、なるほどアプローチとしては「あり」だ。けれども登場人物が余りに紋切り型で・・・恐らくそれは役者というより、ホンとして書けていない点が大きいと思う。
 そのくせクライマックスで、靉光は突如正面を切って、熱く語ってしまうのだ!

 靉光を演じた白幡大介は、まっすぐな天才画家を生き生きと演じ、その妻キエの高橋美沙も、明るく人を包み込む人間性を醸しだし、好感の持てる舞台を構築した。脇を固めた中堅やベテラン陣も適材適所で、劇団の力が張り出し舞台以上に、客席に迫ってきて・・・「おお!65周年にふさわしい!」と思えただけに、惜しまれる筋立てだった。
コメント
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