図書館から借りていた 藤沢周平著 「麦屋町昼下がり」(大活字本)を 読み終えました。
短編小説が多い藤沢周平作品の中にあって 比較的長い作品(中編小説とでも言えるんでしょうか)、4作品が収録されている書です。
(大活字本)
目次
「麦屋町昼下がり」
片桐敬助は 深夜 抜刀して女を追いかけてくる男を斬ってしまった。それが 偏執的な剣士 弓削新次郎の 隠居した父親であることを知り 愕然とする。弓削新次郎とは いづれ 一悶着は避けられないとして 大塚七十郎に 剣術の教えを乞うた。
弓削新次郎は 妻と密会相手、料理茶屋使用人、逮捕に向かった徒目付を 斬殺して 麦屋町の茶屋に立て籠もった。
弓削新次郎の討手の命を受けたのは 片桐敬助。凄まじい斬り合いの末 これを討ったが それを見守っていた娘がおり それは 縁談を断られていた 寺内瑞江であった。
「三ノ丸広場下城どき」
次席家老臼井内蔵助は 江戸の側用人三谷甚十郎から 中老新宮小左衛門宛ての密書を奪わないと 新海屋との繋がり等真相が明るみになってしまうため、新宮小左衛門の身辺に貼り付けていた腹心守屋市之進と策略し 使者の護衛に 過去の剣の名手、酒びたりの粒来重兵衛を 充てて これを襲い 使者田口庄蔵を斬り 密書を奪ってしまった。粒来重兵衛は 逃げ切り 真相を探っていく。
はめられたことが分り 怒りがつのり 酒を止め 剣術にみがきをかけた重兵衛。最後には 藩の査問の席で抜刀した 臼井内蔵助と斬り合うことになったが 重兵衛の剣が 臼井の脾腹を切り裂いた。重兵衛も 傷を負い 疲れ果てて 帰った家には 5年もの間 一度も触れることのなかった馬鹿力の 茂登が待っていた。
「山姥橋夜五ツ」
男と密会したといううわさが立ったことで 妻 瑞江と離縁していた 柘植孫四郎は 藩士 野々村新蔵が言ったことから 先代の藩主が病死ではなく謀殺されたのではないか、それに絡んだ一連の事件にも 疑念をもった。
最後には 恩田中老の刺客となって現れた野々村新蔵を 孫四郎は倒し 大目付に引渡し 大目付から 真相が語られる。
妻 瑞江の不義の疑いも晴れ 帰ってきた家に 瑞江が待っており 抱き寄せるシーンで終わる。「事情は大目付に聞いた。苦労をかけた」
「榎屋敷宵の春月」
家老の急死により 後任執政の候補とうわさされる人物の一人 寺井織之助の妻、田鶴の 気丈な活躍を中心に 描かれいる。
競争相手の一人、宗方惣兵衛の妻 三弥は お理江と共に、田鶴にとって古い女友達であったが 次第に敵対意識(女の戦い)が高まってしまう。現代社会にも通じるような 人間模様が描かれている。