図書館から借りていた、葉室麟著 「潮鳴り(しおなり)」(祥伝社)を、読み終えた。本書は、著者創作の架空の小藩、九州豊後の「羽根藩(うねはん)」を題材にして描かれた長編時代小説「羽根藩シリーズ」第2弾の作品である。先日、第1弾「蜩ノ記」を読んだばかりだが、さらに、第3弾「春雷」、第4弾「秋霜」、第5弾「草笛物語」が有ることが分かり、引き続き読んでみたくなっているところだ。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
▢目次
(一)~(三十一)
▢主な登場人物
伊吹櫂蔵(いぶきかいぞう、襤褸蔵、新田開発奉行並)、伊吹新五郎、染子、お芳、
宗平、千代
咲庵(しょあん、元江戸三井越後屋大番頭佳右衛門)、お朝、長次郎、
仙右衛門(納谷村庄屋)、さと(千早)、
小倉屋義右衛門、
播磨屋庄左衛門、
長尾四郎兵衛、浜野権蔵、重森半兵衛、笹野信弥、
井形清左衛門、小見陣内、
三浦兼重(羽根藩藩主)、妙見院(先代藩主の正室、現藩主の実母)、
田代宗彰(西国郡代)
▢あらまし等
九州豊後の小藩羽根藩にあって、俊英と謳われた伊吹櫂蔵は、狷介さゆえに勘定方での役目をしくじり、役御免となり、襤褸蔵(ぼろぞう)とまで呼ばれる無頼暮らしを送っていたが、ある日、家督を譲った義弟新五郎が切腹?、その遺書から、借銀を巡る藩の裏切りが原因であることを知る。直後、なぜか藩から弟と同じ新田開発奉行並として出仕を促された櫂蔵、弟の無念を晴らすべく城に上がる決意を固めるが・・・・・・、
「落ちた花は、二度と咲かない」・・・・、それを咲かすことが出来るのか?
「生きることが、それがしの覚悟でござる」
堕ちるところまで堕ちた男の不屈の生き様。
本書の主人公は、もちろん、男気溢れる櫂蔵であり、その生き様を描いているが、男の背中を言葉で押す、賢明で、芯がしっかりしている、女性脇役の存在が大きく印象に残る作品だ。
櫂蔵を立ち直らせた女お芳であり、理路整然、厳然とした武家の女染子であり、見識高い藩主の実母妙見院である。
潮鳴りはいとおしい者の囁きだったのかもしれぬ、と櫂蔵は思った。
いまもお芳が静かに囁き、励ましてくれているのだ。
(わたしは一生、潮鳴りを聞くことになるだろう)
櫂蔵は染子に頭を下げ、
「行って参ります」と告げた。
(中略)
風が吹き、白い雲がゆっくりと流れていく。
で、終わっている。