図書館から借りていた、葉室麟著 「風かおる」(幻冬舎)を、読み終えた。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。
▢目次
(一)~(二十六)
▢主な登場人物
佐久良亮(さくらりょう)・菜摘(なつみ、佐久良亮の妻、23歳、渡辺半兵衛の三女)
千沙(ちさ、稲葉照庵の次女、16歳、男装の美少女)
渡辺誠之助(渡辺半兵衛の次男、菜摘の弟、18歳)
嘉村吉衛(かむらきちえ)・多佳(たか)、
竹内佐十郎・松江、河合源五郎、
峰次郎右衛門(勘定奉行)、佐竹陣内(郡奉行)、高瀬孫大夫(側用人)、
間部暁斎(まなべぎょうさい)
田代助兵衛(横目付)、井上庄助(郡方)、
関根寛斎・英太郎、
平田武兵衛(対馬藩長崎聞役最古参)
▢あらすじ等
筑前国黒田藩郡方五十石、渡辺半兵衛の三女菜摘は、幼くして、同じ藩の竹内佐十郎・松江夫婦のもとに養女に出され育ったが、佐十郎が、「妻敵(めがたき)討ち」のため致仕したことから、離縁され実家に戻され、16歳のときに、鍼灸医の佐久良亮に嫁していた。その養父だった佐十郎が帰藩、10年振りに再会するが、すでに死病に侵され、かつての優しい面影はなく、ひたすら「妻敵討ち」を唆した者との果し合いを望んでいる。養父佐十郎が討たれること明白、治療を施しながら葛藤を覚えた菜摘は、弟誠之助、男装の美少女千沙等と共に、果し合いをやめさせるべく、相手とは誰なのかを探索するが・・・。その佐十郎の元に、果し状が届き、差出し人は、楊梅(やまもも)。楊梅とは、いったい何者?、
かって、佐十郎と出世を競った、峰次郎右衛門?、佐竹陣内?、高瀬孫大夫?、なのか?
なぜ、養父佐十郎が、「妻敵討ち」に出なければならなかったのか?。養父の知られざる過去とは?、
嘉村吉衛の無念の死の真相とは?、田代助兵衛を刺殺したのは誰?、多佳の覚悟とは?
なかなか解けない謎、やがて哀しい真実に突き当たる。一連の事件には大きな仕掛けがあり、推理の謎解きも面白く、推理小説のような一面もあるが、組織の不条理、人間の業と欲、嫉妬、憎しみ、恨み、そして人を信じることの忍耐と苦悩、おのれの背負った罪を知らず生きていく人間が描かれている。
その結末は・・・。哀歓溢れる作品である。
菜摘は亮を見て怪訝そうに訊いた。
「どうしたのですか」
亮はしみじみと言った。
「いや、皆が長崎に来ると聞いて、なんだかよい風が吹くような気がしたのだ。
長崎での悲しい出来事を、わたしたちが吹き飛ばしたほうがいいと思う。」
菜摘は涙が出そうになった。そうなのだ、どのような悲しい思い出も乗り越えて
いかねばならない。
風がかおるように生きなければ。
菜摘は、そう思いつつ中庭に、目を遣った。
朝方の光があふれる中、風がさわやかに庭木の枝を揺らしている。
佐十郎と多佳の死により、事件は一段落し、亮と菜摘の夫婦、菜摘の弟の誠之助、誠之助の恋人、千沙、4人がそろって長崎へ旅立とうというところで、物語は終っている。