図書館から借りていた 諸田玲子著 「心がわり・狸穴あいあい坂」(集英社文庫)を 読み終えた。「狸穴あいあい坂シリーズ」第3作目である。
諸田玲子著 狸穴あいあい坂・「心がわり」
(目次)
「月と幽霊」、「父子」、「心がわり」、「大火のあと」、
「平左衛門の心」、「小山田家の長い一日」、「夫婦」
江戸時代の麻布・狸穴町界隈を舞台にした、恋と事件が絡み合う時代小説。
前作「恋かたみ」からの続きで 主人公結寿(ゆず)が 旗本小山田家に嫁いでから1年経過、「小山田家のご新造」と呼ばれるようになり、
夫万之助も舅万右衛門も姑久枝も義弟新之助も優しく、平穏な日々を過しているが やはり 次々起きる出来事、事件に関わり 解決していく物語である。
そんなある日 小山田家に居候していた遠縁の老女(お婆さま・認知症の症状有る)のもとに親類だと名乗る愉快な大男柘植平左衛門が転がりこんできて その後 小山田家の存亡に関わる大事件が発生する。
結寿に 待望の初子が宿り 喜びに沸く小山田家だったが その大事件発生後 知らなかったこととは言え、実は 盗賊の片割れだった柘植平左衛門を半年も居候させたことへの処罰として 小山田家は 御手先組与力から無役の小普請組に格下げとなった。
小山田家当主万右衛門は 家督を万之助に譲るが 格下げになった抗議と責任から 切腹を決意する。
それに気付いた結寿は 百助とはかり 登場人物全員参加の大芝居を打ち 結果 万右衛門と幸左衛門が出家(頭を丸める)する形でおさまるが ハラハラドキドキの切羽詰った状況にも関わらず アニメ漫画的ユーモラスさが有り 笑いを誘われる。
出産のため 実家溝口家に戻った結寿は 小山田家が小普請組に格下げになったことを理由に 出産後に 小山田家と離縁させる家同士の約束が交わされたことを知る。
結寿は 実家を忍び出て 祖父溝口幸左衛門の住む 狸穴町の口入屋「ゆすら庵」の離れで 出産、そこで 改めて 夫小山田万之助や小山田家の人たちへの思慕が、それまでずっと抱き続けてきた妻木道三郎への恋心より ずっと強くなっていることに気がつき そのことを祖父 幸左衛門に訴え 力を借りて 結果 転居して手狭になった小山田家の嫁におさまる。
新春の朝、結寿は 初めて夫万之助に誘われたのは 麻布十番先の稲荷社詣。
かって 結寿が 妻木道三郎と逢い引きを重ねた場所である。
寡黙で穏やかながら洞察力の有る夫万之助には 結寿の気持ちの揺れ動きを全てを知りつつ温かく受け止める懐の大きさを感じられる場面である。
「寒風と共に 仄かな梅の香が流れてきた」で 物語が終わっている。
結寿の切ない恋こころ、個性溢れる登場人物の活躍、思いやり、愛情の深さ、鷹揚さ、坂の多い麻布界隈の情景描写、
諸田玲子氏独特の ほんわか、おっとりした作風、心温まる作品だと思う。
第4作目、第5作目・・・続編を期待したいところだ。
(おわり)
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