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葉室麟著 「玄鳥さりて」

2024年02月28日 21時59分55秒 | 読書記

図書館から借りていた、葉室麟著 「玄鳥(げんちょう)さりて」(新潮文庫)を、読み終えた。
先日、著者創作の架空の小藩「蓮乗寺藩(れんじょうじはん)」を舞台にした「おもかげ橋」を読んだばかりだが、その際、同じく「蓮乗寺藩」を舞台にした作品として、「玄鳥さりて」が有ることを知り、図書館に予約してあったものだった。


振り返り記事
葉室麟著 「おもかげ橋」
👇
こちら


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


■目次
 (一)~(二十七)
 解説「友情の賦を歌い続けて」島内景二

■主な登場人物
 三浦圭吾(みうらけいご)・美津・与市・琴、
 樋口六郎兵衛(ひぐちろくろべい)、芳賀作之進(はがさくのしん)、柴省吾、
 津島屋伝右衛門・美津、
 今村帯刀、沼田嘉右衛門、
 蓮乗寺藩藩主永野備前守利景、梟衆(ふくろうしゅう)頭大藏、
 庄屋作右衛門、

■あらすじ等
 本書の舞台は、著者が設定した九州肥前付近(?)の架空の小藩
 「蓮乗寺藩(れんじょうじはん)」(四万石)、
 「忍坂藩(おしざかはん)」(十二万石)の支藩である。

 城下の林崎夢想流、正木十郎左衛門の道場で、先輩後輩の間柄になった、三浦圭吾と、
 8歳年上の樋口六郎兵衛が、藩内の派閥抗争に巻き込まれ、運命に翻弄されていく中で、
 最終的には、「何を守るために刀を振るのか」「本当に大切なものは何なのか」を、
 描いている作品なのではないかと思う。

 片や、豪商津島屋伝右衛門の一人娘美津を娶り、有力派閥の後継者となり、次席家老にまで
 出世するエリート圭吾、片や、藩内随一の剣士でありながら、世渡り下手で、遠島、出奔を
 繰り返す、不運な下級武士六郎兵衛、
 しかし、その対照的な二人の間には、友情の美しさと悲しさが同居、互いを思いやりながらも、
 藩政に翻弄されることになる。男たちの葛藤と覚悟が見事に描かれている。

   吾が背子と二人し居れば山高み 里には月は照らずともよし
   (とても親しいあなたと二人でいるので、高い山が遮って月が、
    この里を照らさなくとも構わない)

 執政達の派閥争いと親政を目論む藩主永野利景の陰謀が複雑に絡み合い、圭吾もまた、
 権勢欲に駆られてしまい、翻弄されるばかりで、幾度となく命を狙われる。
 そのたびに六郎兵衛に助けられ、思慕に似た友情はゆるぎないものだったが、
 不幸な藩に生まれた武士の悲運、圭吾は、藩主永野利景に、六郎兵衛との決闘を命じられ、
 窮地に追い込まれ、死を覚悟する。

  「武士には、殿に命じられたほかの生き方がない」
 凄まじいクライマックス、圭吾は刀を捨て、目を閉じた。・・・・・・、「三浦殿ーー」、
 「玄鳥(げんちょう)」とは、「燕(つばめ)」の異称である。

 表題の「玄鳥さりて」の「玄鳥」は、六郎兵衛を指しているのだろうが、圭吾もまた「玄鳥」
 なの
かもしれない。
  大阪に出た圭吾は、箭内仙庵(やないせんあん)という学者の塾に入って、
  次第に学問を究めていった。そのころ圭吾は頭を総髪にして、
  「燕堂(えんどう)」と号した。号の謂れをひとから訊かれると、
  「去った燕に戻ってきて欲しいからです」と笑みを浮かべて答えた。
  蓮乗寺藩藩士、樋口六郎兵衛については、藩の記録に、
  「不祥ノ事アリて出奔ス」と、記されているだけだった。
 で、終わっている。


「玄鳥」で、
藤沢周平著の「玄鳥」を思い出した。
振り返り記事
藤沢周平著 「玄鳥」
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こちら


 


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