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平岩弓枝著 御宿かわせみ(二十五) 「宝船まつり」

2020年08月25日 07時37分16秒 | 読書記

図書館から借りていた 平岩弓枝著 長編時代小説「御宿かわせみシリーズ」第25弾目の作品、「宝船まつり」(文藝春秋)を 読み終えた。毎度のこと、読むそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本をうっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも 備忘録としてブログに書き留め置くことにしている。

平岩弓枝著 御宿かわせみ(二十五) 「宝船まつり」

本書には 表題の「宝船まつり」の他 「冬鳥の恋」、「西行法師の短冊」、「神明ノ原の血闘」、「大力お石」、「女師匠」、「長崎から来た女」、「大山まいり」の 連作短編8篇が収録されている。

「冬鳥の恋」
大川端の小さな旅籠「かわせみ」の女主人るいは 歳暮の挨拶で 夫神林東吾の実家神林家を訪れ、そこで養子になっていた麻太郎(5歳)と初めて対面する。その翌日、るいは 「かわせみ」を開業する際厄介になった江戸で一、二を争う旅籠「藤屋」の隠居(先代の女房)おせんが梅屋敷の近くの柳島の別宅に移ったことを深川の岡っ引き蕎麦屋長寿庵の長助から聞き、長助の案内で新築祝いに訪ねた。「藤屋」の当主藤兵衛には子供が無く、おせんの実家から宇之助おすみを 養子、養女にしており 複雑な関係なのだが・・・・、
そこに二羽の水鳥が、たがいの首を巻きつけ合うような格好で丸くなっていた。その姿が、たった今、各々にひきさかれた宇之助とおすみの最期の姿に重なって、東吾は足を止めた。

「西行法師の短冊」
神林東吾が 勤務先の幕府講武所から「かわせみ」に帰ってくると、弥吉という男が居間の障子の切り張りをしている。一方で 長助が 深川の質屋千種屋の女隠居(先代の後妻)お辰を、「かわせみ」の近くの家作を隠居所として引っ越してきたことで るいに引き合わせる。東吾は 狸穴の松浦方斎から、旗本青山家の隠居が 倅を推挙してもらうため贈った進物、西行の筆になる自作の和歌が贋物だったことから 窮地に陥っている話を聞かされ、気になり出す。貸本屋の信吉とは?。お辰が 弥吉から100両で買ったという短冊「君がため みたらし河を若水に 結ぶや 千代の始めなるらん 西行」も 贋物だったが・・・。飯倉町の岡っ引き仙五郎、深川の岡っ引き長助が探索、畝源三郎、東吾も謎解きを開始するが・・・、後日談、「おい」、思わず東吾が声をかけ、男が立ち止まった。
東吾「詐欺を働くんなら 本物の西行の歌ぐらいおぼえておけ」・・、「そいつは・・」・・、「あっしの知ってるのは あれ一つきりなもんで・・・」

「宝船まつり」(表題作)
毎年商用で江戸にやってきて「かわせみ」に泊まる小田原の薬種問屋ういろう屋主人三左衛門、その年は 手代忠助の他に 大百姓の名主岡村文太郎の倅の嫁おきのを伴ってやってきた。おきのは元々、亀戸村の名主吉兵衛、おかねの娘で 20年前、当時2歳だった弟吉之助が行方不明になったことが忘れられない。亀戸村の道祖神祭は 子供の祭りで宝船まつりと呼ばれているが 東吾は 麻生宗太郎の娘花世、畝源三郎の息子源太郎を連れて出掛ける。その日、赤子が行方不明事件発生。一方で、「かわせみ」宿泊人おきのが行方不明に。東吾も 源三郎、長助等と 真相究明、探索、謎解き開始する。米津藩士磯貝十兵衛、磯貝秀太郎とは?、明かされた真実、篇末は 涙、涙・・、
「お姉さんが・・・おきのさんがどんなにお喜びなさるか・・・」、るいは涙声になり、秀太郎はうつむいた。

「神明原の血闘」
東吾は 勤務先の軍艦操練所の同僚伊勢崎辰次郎にもてなされかなり酔って「かわせみ」へ帰る途中、湯島天神の裏の道で5~6人の盗賊に襲われ、二人を倒したが、他は大八車に千両箱を残して逃げ去った。番屋で偶然 畝源三郎と出会い現場へ戻ると、致命傷を負っていない二人は 口封じに殺されていた。襲われた福成寺では寺男が斬り殺されており、かなりの遣い手の仕業。東吾は あの夜のもてなし側だった戸張喜太夫から呼び出され 伊勢崎辰次郎と向島の戸張の別宅に出掛けたが、辰次郎の妹藤江(21歳)の縁談を探せとの言。愚弄された東吾、腹の中が煮えくり返り 太刀を取って立ち上がった。その帰り道、背後から斬り掛かられたが、そこに、八丁堀の定廻り同心村越市十郎(35歳)が現れる。
講武所に 嘉助がやってきた。「暮六ッ、駒込神明宮だな」。幼馴染の定廻り同心畝源三郎が危ない。神明ノ原へ一目散の東吾。敵は4人。「貴様、仁村大助・・・」。前篇の御殿山滝川大蔵の茶の催しの際、清水琴江遭難事件で、東吾に斬りかかって来た後 川に飛び込み消息不明になっていた男だ。
「全く、世も末だな」、東吾も源三郎も顔を見合わせ、肩を落とした。

「大力お石」
3月は奉公人の出替りの季節。大方の女中は 自分が暇をもらう時、同郷の者で奉公に出たいという者を雇ってもらえないか申し出る事が多い。「かわせみ」の女中お松が故郷に帰るに伴い 所沢からお石(14歳)が「かわせみ」にやってきたが・・・。なにしろ、大女。
「凄いのがきたな」、暖簾をくぐりながら東吾が苦笑し、嘉助が首を振った。
金物屋伊坂屋安兵衛の倅安吉達 悪餓鬼に絡まれるお石、お吉までも誘い出され、あわやの事態に・・・。
出入りの魚金の倅の三吉が 「勘弁しとくれよ、お石ちゃん・・・」・・、「魚金の三公、鬼より怖い、馬鹿で間抜けで へそまがり・・・」、勝手口でるいとお吉が笑っている。

「女師匠」
巷の情報キャッチが得意な女中頭お吉は 1日だけ大安売りの深川門前仲町の足袋屋三河屋に出掛けたが 混雑する店先で、15~16歳の娘とぶつかり、もう一人の娘から1歩銀を取り上げられた。一人は 船頭助造おかねの娘お鹿、一人は深川の料理屋ます梅の娘お照。深川の岡っ引き長助が 「かわせみ」に その二人を連れてきた。
「返しゃいいんだろう、返しゃ・・・」、
神林家からの届け物砂糖を持って長寿庵へやってきた東吾の目の前で、寺子屋の師匠杉江が 顔半分、咽喉、胸部分に大火傷する事件が発生。居合わせた麻生宗太郎の手当も有り、快方に向かっているが、杉江の気持ちが通じるのだろうか。
「声をかけたのに、すっと行っちまって。・・・全く・・・」、長助の女房が苦い顔をし、東吾は外に出た。
だが誰も知らなかった。・・・、お照は必死になってお百度をふんでいる。・・・「お師匠さんの火傷が早くなおりますように・・・」

「長崎から来た女」
東吾の勤務先は 幕府の講武所と軍艦操練所だが その年の春、練習艦で長崎に行った。10年前に目付役の麻生源右衛門のお供で陸路、長崎を訪れたことのある東吾、2度目の長崎だ。訓練生の中に、今崎貞二郎(28歳)佐久間香介がいたが、5月になってから 今崎貞二郎が、品川で女と心中したという知らせが 軍艦操練所に入り、上司篠崎武右衛門から後始末を頼まれた東吾、佐久間香介と品川に出掛け、飯倉町の岡っ引き仙五郎と現場検証。服毒死?、遺書は?、女は 長崎の千波屋の?、不審だらけ。畝源三郎、長助、仙五郎が探索、長崎から出てきたお新とは?、
るいがそっと言った。「どなたかさんが勇んで船にお乗りになるのがよくわかりました。どんなに波が高くても、お船の行くつく先には良いことが待っているのですもの。なにしろ長崎の女は情が深くて、激しくて・・・」、源三郎はそろり立ち上がり、東吾は慌てた。「源さん、待てよ、たまには一献酌みかわそうといっただろう」、江戸の空は高く澄んでいた。

「大山まいり」
江戸の庶民にとって、相州大山寺石尊大権現への参詣・大山まいりは 参詣にかこつけての遊山気分の旅でもあった。この年、深川の岡っ引き長寿庵の長助も町内の旦那衆から頼まれて、30年ぶりに大山まいりに同行したが 一方で 東吾は、親友麻生宗太郎から 知人の薬種問屋徐敬徳が 大山まいりに出掛けたまま行方不明になっていると相談される。東吾、長助、畝源三郎、麻生宗太郎が 探索、真相究明に乗り出したが・・・・。大木刀に刻まれた「羽満船阿不用、惶謹言乞助、吾命 朝露徐書」の謎解きが決めてとなる。横浜を舞台にしたアヘン密輸絡らみの殺人事件か?、麻生宗太郎が看破。
東吾・・「どうも 俺と長助は骨折り損、いいところは みんな 本所の名医と源さんに持っていかれちまったな」
御宿かわせみシリーズの時代背景も、刻々と変わりつつある。

(つづく)

 


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