古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

活字中毒者の一日  山口瞳

2024-12-08 05:22:47 | 本の紹介

集英社 1983年

 

この「素敵な活字中毒者」椎名誠選 日本ペンクラブ

 

編の21編をみていこう、とこういう趣向である。

 

まずは、栄えある第一発目は山口瞳氏であり、氏は

 

「江分利満氏の優雅な生活」(読了済み)で直木賞を

 

獲った文豪である。

 

開高健大兄と切磋琢磨した、御大でもある。

 

この短編では自身の一日を追っている。午前十時ごろに

 

起き出し、新聞六紙をむさぼり読み、週刊誌は十五、六

 

種類、雑誌は三十種類を越すという。朝から晩までずっと

 

読み、TVで相撲、野球など気になるものを全部視る、

 

という生活態度。その間に来訪者を八人から十人相手にする

 

らしい。それだけでもタイヘンだろうに、なんという生活。

 

でも、自身は読書家ではないと言う。古典を読むのが本当

 

の読書家らしい。では、きっと、ぼくも読書家ではない、

 

とそういうことになるのだろうなあ。

 

(読了日 2024年11・22(金)17:30)

                 (鶴岡 卓哉)

 

 

 

 

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ユーコン漂流  野田知佑

2024-12-02 01:45:00 | 本の紹介

文春文庫 1998年

 

約三千キロを三年にわたり、夏の間だけ二か月間、

 

計六か月かけて、カヌーで下った冒険譚。

 

一週間も川辺のキャンプで泊まってしまうとは、

 

ぼくには考えられない。なんとも自由、気まま、漂泊

 

を繰り返し、ああ、と溜め息しか出ない。

 

ある村で、鮭のイクラの売買をしている村の日本人に

 

会って、つれなくされ、逆に白人に手厚く歓待された、

 

と云う話しは心に残った。けど、分かるような気もする。

 

外地で同じ日本人に会うバツの悪さみたいなものも

 

多少あったのかもしれない。本の中の本を読む場面が

 

ぼくは好きで、この本の中でも度々、本を読んでいる。

 

犬のガクも登場し、野田氏とふたりきりで心が通じ合って

 

いたと思っていたのに佐藤秀明氏と合流して、意気が分か

 

らなくなってしまって、ガクはすごく怒ったらしい。そういう

 

気持ち、よく分かる気がする。

 

(読了日 2024年11・20(水)12:40)

                 (鶴岡 卓哉)

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もたない男 中嶋タツヤ

2024-11-26 02:18:43 | 本の紹介

新潮文庫 平成二十二年

 

漫画家である著者のものを持たない生活

 

の在り様を淡々と描いたエッセイ。

 

部屋にはレンガにテープを巻いたものが

 

ひとつ転がっているだけ。

 

ボールペンも使うとインクが減る分削って

 

いくというヘンタイぶり。けど、ここまで

 

いくと、潔くって、気持ちがいい。

 

ぼくは、この文章もムダがなくって、シンプル

 

な文章に、ちょっと、と思ったが、読むと

 

くせになり、断捨離男のIZMと云うか哲学も

 

気になり、ほぼ一気読みだった。

 

最近ではこんなに夢中になった本はあんまり

 

ないかな。

 

バイクのフェンダーまで捨てちゃって、雨

 

の日にびしゃびしゃになったらしい。

 

ぼくも人と比すると、物を持たない方だとは

 

思うが、部屋にはけっこう小物が溢れていて、

 

CDとか、その方が安心するタイプみたいね。

 

今度、この本を読んで、いろいろ捨てるのも

 

アリかもな、と思ったりしているのでした。

 

(読了日 2024年11月7日(木)22:05)

                 (鶴岡 卓哉)

 

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食べるのが好き 飲むのも好き 料理は嫌い 内館牧子

2024-11-25 06:29:21 | 本の紹介

講談社文庫 2004年

 

本書はお皿などの料理に関する小物が好きで

 

集めるが、料理は嫌いと云う著者が出来合い

 

を自分でつくりました的に出して来た、と語る

 

一方、なかなかの光る料理のセンスを見せる。

 

ちょっと笑っちゃうエッセイなのであります。

 

センテンス、長すぎ! ですね。

 

著者は薄幸の女を気どり、木村多江主演で映画

 

でも撮れそうな、爆笑なシナリオを書いて、気仙沼

 

で「お牧」と云うおでん屋を開きたい、と各所で

 

言って来たそうな。そのくせ、おでんはおでんの素

 

でしかつくったことがなくて、妄想はどんどんエスカ

 

レートし、ふくらみ、暴走してゆく。

 

最終的には、料理をつくる時間があったら、格闘技と

 

相撲を視に行くという位だから、時津風部屋の「豚

 

キムチちゃんこ」は抜群においしかったので、

 

時津風部屋風にアレンジして、ちゃんこ鍋屋にしようと

 

いうことになるが、? ちゃんこと薄幸? と疑問に

 

思わざるを得ない。元気いっぱいイメージしかちゃんこ

 

にはないのですが、とツッコミを入れておいた。

 

(読了日 2024年11月4日(月)22:15)

                 (鶴岡 卓哉)

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映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その4(最後)

2024-11-24 12:48:53 | 本の紹介

今回は、「泣蟲小僧」1938年(昭和十三年)を

 

みてゆこう。

 

ずい分、しみったれた貧乏くさい子供の出て来る可

 

哀想な話しのようだ。

 

貞子と云う女性がふたりの子供と共に住んでいるが

 

その子供、啓吉少年がたらい回しにされ、すごく

 

憐れだ。この作品を片岡氏は高く評価していて、

 

特に子役がすばらしい、透明度の高い静かな佳作

 

と評している。なかなかいい映画のようだ。

 

(映画の内容は違えど、文体はいつなので、同じ

 

印象を持ってしまい、その文体も退屈この上ない

 

ので、これにて終了)

 

(読了日 2024年11・2(土)22:04)

                (鶴岡 卓哉)

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映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その3

2024-11-23 05:19:05 | 本の紹介

今回は、「母の曲」1937年(昭和十二年)を

 

みてゆこう。

 

この娯楽映画は、稲と云う名のひとりの女性の、

 

妻として、母としての身の上話だ。

 

上流社会に入ったお稲さんが、上流社会に馴染めず

 

はじき出され、工場で働いているような男、田中

 

龍作の元に転がり込み、娘の幸せのために身を引く

 

という話しだ。

 

お稲さんは女工だったのだが、そのとき、知り合った

 

夫の職工だった純弥が、どうして数年して、世界を

 

飛び回る医学博士になったのか、ヘンな話しだ。

 

ここで当然、この話は破綻している。

 

昔の映画は、ムリも通れば道理引っ込む、といった

 

感じだったらしい。

 

(読了日 2024年11月3日(日)23:50)

                 (鶴岡 卓哉)

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映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その2

2024-11-22 01:00:11 | 本の紹介

今回は「東京ラプソディ」1936年(昭和十一年)

 

を見てゆこう。

 

舞台は銀座、若い女性の足で有楽町の駅から小走りに

 

三分ほどのところに若原クリーニングがある。

 

そのクリーニング店の子供で働いているのが藤山一郎

 

扮する一郎という青年だ。クリーニング屋の向かい側の

 

煙草屋の看板娘が一郎の恋人のような存在だ。

 

その子はハト子といい、友人のマキという女性とお茶の水

 

の近くのダン・アパートメント・ハウスで都会の独身

 

生活を送っている、という設定で、この本編のエッセイ

 

では細々としたストーリー展開が語られてゆく。

 

一郎は歌手になり、いろいろ込み合った男と女の

 

もつれ、キビなどが描写されてゆく。随分と都会的な

 

映画であると云う印象だった。

 

(読了日 2024年11・2(土)13:12)

                (鶴岡 卓哉)

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映画を書く 日本映画の原風景 片岡義男 その1

2024-11-21 13:14:30 | 本の紹介

文春文庫 1996年

 

これからは、この義男氏の映画を書く、を一本

 

一本検証してゆこうという趣向である。

 

今回は、この「東京の宿」1935年(昭和十年)と

 

云う映画を見てゆこう。この片岡氏は、この映画を

 

一回だけみて、書いたのだろうか。それにしては、

 

細部のストーリーまで心ゆくまで追っているようだ。

 

この作品は小津安二郎氏が作ったサイレント映画だ。

 

コメディと云うことだ。喜八という男が出て来る夏の

 

日の物語、身上話と云うことだ。長屋に住んでいて、

 

殺風景な工場地帯で男と女が出合い、病気の娘の話し

 

とかが出て来て、破綻した話しが展開される。不幸な

 

身の上話の展開に、実際に映画やTVなどで見たならば、

 

消していただろうな、と思う。ぼくは映画を途中で

 

やめることは多々あるのだ。

 

(読了日 2024年11・1(金)14:32)

               (鶴岡 卓哉)

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月島物語 四方田犬彦

2024-11-20 14:37:57 | 本の紹介

集英社文庫 1992年

 

丁度、「ストレンジャー・ザン・ニューヨーク」

 

と出会い、読了し、次に出くわした四方田氏の

 

本が「ストレンジャー・~」のあとの話しになる

 

本書だった。ニューヨークに住んだ後、月島に

 

住むって、なかなかどうして、面白い人だ。

 

月島は文字通り島で、泥棒が入っても橋を封鎖

 

すれば良いらしいので、泥棒もいないから、

 

鍵も鍵屋に行くと同じのが幾つもあるんだそうだ。

 

小津映画に出てきそうな、長屋に住み、二時、三時

 

まで起きて仕事をし、友達は来るわ、酒は飲むわ、

 

で先生と呼ばれる人の生活も実に楽しそうだ。

 

レバカツと云うのがあるそうで、牛のレバーを揚げた

 

のだそうだが、吉本隆明氏が氏のところに遊びに来た

 

折、六本ペロッと食べてしまったという。吉本氏は

 

月島の出身と云うことだ。

 

東京の下町研究の書としては、面白さでも秀でていて、

 

四方田氏のファンを自称してもいいと思うのだ。

 

(読了日 2024年11・2(土)22:07)

               (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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いつか旅する人へ 勝谷誠彦

2024-11-16 03:59:32 | 本の紹介

講談社文庫 1998年

 

紀行家と云う肩書きをもった第一作だということだ。

 

なんでも、一発目は良いという通り、本書は何とも

 

良かった。

 

文章が技巧的でありつつ、素直な心情の風景を

 

活写していて、読んでいて心地よかった。

 

第一章では、ユーモア、冗談を交え、軽快な文章

 

で攻めて来るが、第二章以降は軽い感じは影を

 

ひそめ、シリアスに攻めて来る。手紙と云う形

 

であったり、旅を誰かと共に行ったりする。

 

ぼくは、やはり第一章が一番楽しく読めた。

 

このまま、行くのかと思ったが、がらっと作風

 

を変えて来たので、おや、と思った。

 

外国を旅すると、日本の素晴らしさが分かると言う。

 

ぼくもいつか日本を巡る旅をしてみたい。

 

(読了日 2024年10・25(金)15:00)

                (鶴岡 卓哉)

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