古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

終の住処(ついのすみか)   磯崎憲一郎

2016-08-18 06:20:19 | 小説の紹介
新潮文庫。第141回芥川賞受賞。


しがないサラリーマンが女にモテてしょうがない、


というのも首をひねらざるをえない。また11年口


を利かなかったとあるが、果たしてそんなことが


可能か疑問に思わざるを得ない。不自然なことが


多すぎるのである。文章もわざとむずかしく書い


ている節がある。とはいえ、それはこの小説とい


う手法そのものが「フィクション」であるという


ことに尽きるのである。すべては作り事……そうな


のだ、この作品は作者のイメージをすべて肯定し


ていたのだ、と気づかされる。


ペナントでは少年時代のペナントとここちいいベッ


ドが描かれ、イメージの放埓さが窺われる。そこでも、


イメージ全てが肯定されていることが分かるだろう。


我々はすべてイメージすることを否定してはいけない


のである。
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楽文カフェ 特別篇

2016-08-14 04:51:47 | カフェ、ギャラリー
ベベさんのヲシテ文字の特別講義を今日いたします。


ベベさんは事情により、広島での講義はこれで最後


になります。



広島でのラストメッセージに耳を傾けて、サヨナラの


意味も含めて、ぜひ出席されてみては?


まだ募集中です、ご一報を。


参加費用   二千円(アイスコーヒー付)


時間  13:30~
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熱帯魚     吉田修一

2016-08-13 19:48:31 | 小説の紹介
大工の修業をしている大輔。中学生と建


築中の家でオイタしようとして、火事に


なって、親方にしこたま殴られたり……そ


の文章はリアルという言葉が良く似合う。


同棲している真実と扶養している光男も


話しに肉をつける。そしてもう一つの軸


は、託児所の立てこもり事件だ。色々な


要素を巧みに盛り込んでいる。
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プールサイド小景・静物    庄野潤三

2016-08-12 13:58:51 | 小説の紹介
ダンナが浮気をしていたり、金を使い込んだり


あるいは、家族を描いたりして、常のこの人は



日常を描いているのだな、と思う。その日常の


特殊性みたいなものが、このひとの描く世界には


確かに存在している感じがする。通俗小説として



読むこともできるが、それほど軽い訳でもなく、


芥川賞を獲っていることから分かる通り、文学的



重さも兼ね備えている、そんな短編7編だった。
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飼育     大江健三郎

2016-08-09 23:59:22 | 小説の紹介
第三十九回昭和33年上半期



大江氏の文章は難解である、が故に読んでいると



中毒性があり、イメージが絡みついてくる。この


作品にこの文体と云うのは非常によくあっている


と感じた。山に戦闘機が墜落し、その生き残りの


黒人を”飼育”するという話しだが、その話しの



突飛おしのなさが、この作品を特別なものにして



いるようである。
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日記  8・6   

2016-08-07 10:30:41 | 日記
昨日は、広島にとって重要な一日でした。僕も


バスに乗って、中区の某所にあるお墓に参って


その足で、平和公園の学徒動員の碑に手を合わ


せました。その後で、八時十五分になり、黙


とうしました。川っぷちで黙とうしたのですが、


ふらふらしてきて、危うく川に落ちそうになっ


てしまいました。


僕のそんなふらふらな平和へのささやかな祈り



さえ、いつか大きなものになるかもしれません。



デモ隊の拡声器の声をしり目に、路面電車に飛



び乗り、帰ってきました。暑い一日でした。




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棚谷彰 被爆じぞう展 2

2016-08-04 10:55:07 | 日記
広島もとても暑い日が続きます。カフェは



残念なことにクーラーがなく(奥の座敷には



有り〼)、扇風機の冷却機能付きのはありま


すが、川風が吹くので、気持ちはいいのですよ。



棚谷さんの写真展も、今週から始まっていま


す。21日(日)までやっています。



癒しの中に、凛としたものをうかがわせる写真



です。原爆について、核について考える契機に



していただければと思います。



水出しコーヒー、生の梅ジュース、カキ氷などをご用意



してお待ちしております。
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硫黄島     菊村到

2016-08-03 21:08:45 | 小説の紹介
第三十七回昭和三十二年上半期



硫黄島で生き残った日本兵が、二人の日本兵を



殺したと思い込み、苦労し、自殺する。推理も



の仕立てで、読んでいて、謎は深まってゆく。



文学的な趣きも深く、その自殺の理由を究明し


ていこうとする。菊村氏は、銓衡委員の予想通


り、この後、作品を量産してゆくこととなる。
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海人舟      近藤啓太郎

2016-08-02 17:12:09 | 小説の紹介
第三十五回昭和31年上半期



海人の勇は、ナギと結婚したいがため、村一番に


なることを誓い、倒れるほどの努力をする。必死


になって村一番を目指していたのに、いざ、ナギ


が呆気なく結婚してもいい、と云うと、なんだか



そんなに、欲しいとは思わなくなる。人間という



ものの本質を突いていると思う。メチャクチャ苦


労して村一番になろうとする姿の描き方も、さすが、



という感じである。

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