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「長い廊下がある家」 有栖川有栖

2011年09月11日 | 本(ミステリ)
お馴染みのシリーズだけれど決してマンネリじゃない

長い廊下がある家
有栖川有栖
光文社


           * * * * * * * *

火村准教授シリーズの短編集です。
本格推理ものとして、私には最もなじみ深く安心して読めるものの一つ。
かといって、決してマンネリではなく、
この本の4篇もそれぞれの趣向が凝らされており、納得の一冊です。


表題の「長い廊下がある家」は、ちょっと怖いですよ。
非常に長い廊下・・・というよりは地下通路ですが、
それでつながっている二つの家があります。
殺人事件はその地下通路の中央部で起こるのですが、
そこで殺人を行うための時間が誰にもない。
・・・そういうアリバイ崩しの作品です。
その二つの家は、廃村となった山奥にありまして、
その異常に長い地下通路・・・となると考えるだけで気味悪くありませんか? 
しかも、この物語、夜中にそこに幽霊が出没するなどという設定になっていまして、
私は、昼間でもそこには近づきたくないですね・・・。
アリスは非常に大胆な推理を展開しますが、
真相はそこまで大胆ではないけれど、意表を突くもの。
まあ、どっちにしても私には歯がたちません。


「天空の眼」は、珍しく火村准教授が登場せず、
アリスだけで推理を展開し解決します。
こちらも心霊現象めいた話が出てきます。
ある人の写した写真で、空の雲が邪悪な人の顔になって映り込んでいたというもの。
アリスは、そのことで相談を受けるのですが、
まあ、彼は心霊現象の専門家ではありませんよね。
ところが、この話の関係者と、別件で警察が調べている事件の容疑者と
重なっている人物が出てくるのです。
事件のカギは、その怪しい写真。
火村准教授の手を借りずにとけた謎ではありますが、
アリスにとっては苦い結末なのでした。


「ロジカル・デスゲーム」では火村准教授が、とんだ災難に遭います。
狂った男に、生死を賭けたゲームを無理矢理ふっかけられてしまう。
そのゲームとはこんな風です。

ゲームに参加するのは二人。
主催者Aとその相手Bということにしましょう。
コップが三つ用意してあり、見かけは全く同じ液体が同量ずつ入っています。
でもその中の一つは毒。
Aにだけ、どれが毒か解っています。
まずBが毒が入っていないと思われるコップを一つ選びます。
ここではまだ呑みません。
次にAが残りの二つのうちの一つを飲み干します。
Aにはどれが毒か解っているのですから、ここで毒を飲むことはあり得ませんね。
さて、のこるコップは二つ。
次に、Bが二度目の選択をします。
先に選んだままでもいいし、変えてもいい。
決めたところで、残った方が否応なくAのものとなります。
ここで二人同時に一気にそのコップを飲み干さなければならない。
・・・実際、そこでAが毒と解っていて飲めるかどうかはともかくとして、
この話、確率の問題ですが、
算数に特に疎い私からすれば、結局は確率1/2と思えるのですが・・・。
実はそうではないと言うのです。
くわしい解答を知りたい方は是非ともお読みください。
それはともかく、この絶体絶命のピンチを切り抜けた火村氏の機転には頭が下がります。
まさに、頭脳のゲームです。

「長い廊下がある家」有栖川有栖 光文社

満足度★★★★☆