映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ

2011年09月06日 | 映画(な行)
行き場のない少年がみつけたもの



              * * * * * * * *

若き日のジョン・レノンを描いた作品。
1950年代のリバプール。
ジョンは、叔父夫婦と暮らしていました。
5歳の時に実の母の元を離れ、叔母に育てられたのです。
けれどこの叔母は厳格で窮屈。
物語では、話のわかる陽気な叔父が亡くなり、
この叔母と二人きりになってしまったところから始まります。

さて実の母はどうなったかといえば、
今は別の人と結婚し、子供もいて、割と近所に住んでいることを知ります。
おそるおそるジョンは彼女の元を訪れるのですが、その母は彼を大歓迎。
自由奔放な母は、彼にロックを聞かせたり、バンジョーを教えたり。
そのおかげで彼もロックの音楽活動を始めるのです。
初めてのバンジョーを弾いて弾いて弾きまくって、モノにしていくシーンが印象的。
とにかく好きだったのでしょう。
プレスリーに心酔し、リーゼントにも。
当時イギリスのこのスタイル、さぞかし大人たちからは白い目で見られたでしょうね。

そもそも、実の母がいながら彼が叔母に育てられることになったのには、
それ相応のいきさつがあったわけです。
17歳の誕生日に、彼はそれを打ち明けられるのですが、むろん聞いて楽しい話ではない。
傷つき落ち込むジョン。



彼は学校ではかなりの落ちこぼれ。
素行も悪くて、学校側から見ると問題児だったのでしょうね。
教師は彼に、このままだと進学もできないし、どこにも居場所がない(Nowhere)
ことになってしまう、などといわれてしまう。
このことは、母と叔母に引き裂かれた彼の心、
結局どちらにも居場所がない状況とオーバーラップしているわけです。
どちらへ行っても、どちらかを傷つける。
どちらからも望まれているようでもあり、疎まれているようでもある。
肉親の愛とはいえ、なんと重くそしてやっかいなことなのでしょう。
そんな一方、彼はそんな気持ちを忘れるようにロックにのめり込んでいくのですね。
仲間とバンドを組んでライブをしたり・・・。
ポールやジョージとの出会いも描かれています。

行き場のない孤独な少年が、
ロックの活動を通して叔母や母の愛を理解し、
仲間を作り、自分の居場所を作っていく、
そういう青春の物語です。
単に、ミュージシャンとしてのサクセスストーリーでないところがいいと思います。

ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ コレクターズ・エディション [DVD]
アーロン・ジョンソン,アンヌ=マリー・ダフ,クリスティン・スコット・トーマス,デヴィッド・モリッシー,デヴィッド・スレルフォール
Happinet(SB)(D)


2009年/イギリス・アメリカ/98分
監督:サム・テイラー=ウッド
出演:アーロン・ジョンソン、クリスティン・スコット・トーマス、アンヌ=マリー・ダフ