こんなにどこまでも続いているピアノの鍵盤を、私は弾くことができない
* * * * * * * *
ヨーロッパとアメリカを結ぶ豪華客船ヴァージニアン号。
この作品は、その船上で生涯を送った天才ピアニストのストーリーです。
映画の冒頭、船上で誰かが自由の女神の象をみつけ、
「アメリカだ!!」と叫ぶシーンがあります。
アメリカ、新天地へは、誰もが夢と希望とあこがれを持ってやってくる。
自由の女神を見て思わずわき上がる歓声、皆の輝く瞳。
今も昔も、自由の女神像はそうしたアメリカの象徴なのでしょう。
そんな感慨を、私もいつか実物で感じてみたいものです。
さて、常に旅の船上にあり、幾度も自由の女神を眺めたに違いないけれど、
そんな希望やあこがれから最も遠いのが、
このピアノ弾きのナインティーンハンドレッドです。
彼は赤ん坊の頃、この客船のピアノの上に置き去りにされてしまいました。
機関士のダニーに拾われ、船底で育てられます。
折しもちょうど西暦1900年。
それで、ナインティーンハンドレッドと名付けられました。
幼いある日、美しいメロディにさそわれてホールを覗いてみると、
その音はピアノから聞こえている。
すっかり魅せられてしまう彼。
そうしていつのまにか彼は、全く自己流に自在にピアノを覚え弾きこなすようになるのです。
これぞ天才。
この船という小さな世界の中で、
彼は好きなだけピアノに触れ、賞賛をほしいままにします。
けれども、彼は生まれてこの方、この船から一歩も外に出たことがない。
ある日、彼は決心し、ニューヨークで地上に降りようとするのですが・・・。
あまりにも広く、終わりのない大地に彼は恐怖してしまうのです。
こんなにどこまでも鍵盤が続いているピアノを、
私は弾くことはできない・・・・。
そうして、また船に戻るしかなくなってしまう。
船のバンドで彼と共にトランペットを演奏していたマックスは、
戦火をくぐり抜け、変わり果てた姿となったこの船が処分されると聞き、
船を訪ねてくるのですが・・・。
波が高く、大揺れに揺れる人気の無いホールで、
ピアノのストッパーを外し、
音楽をかき鳴らしつつホール中を滑り回る若き日の
マックスとナインティーンハンドレッドの二人。
このシーンが素晴らしく印象的で忘れることができません。
この時、二人にはまだ前途が洋々と広がっていた。
音楽と友。
これがあれば他に必要なものなどないと思えた。
ナインティーンハンドレッドのピアノは時に言葉よりも饒舌です。
ピアノでホールにいる人物の描写をしたりする。
そんな彼が、あるとき一人の若い女性に目が釘づけになってしまいます。
その人を見つめながら奏でるピアノの調べの、何という柔らかさ美しさ・・・。
このとき、その音をレコードに録音したのですが、
そのたった一枚の録音原盤の運命も気になるところです。
哀しく美しい物語・・・。
お気に入り作品のご紹介でした。
1999年/イタリア・アメリカ/
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
原作:アレッサンドロ・バリッコ
出演:ティム・ロス、プルイット・テイラー・ビンス、メラニー・ティエリー
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ヨーロッパとアメリカを結ぶ豪華客船ヴァージニアン号。
この作品は、その船上で生涯を送った天才ピアニストのストーリーです。
映画の冒頭、船上で誰かが自由の女神の象をみつけ、
「アメリカだ!!」と叫ぶシーンがあります。
アメリカ、新天地へは、誰もが夢と希望とあこがれを持ってやってくる。
自由の女神を見て思わずわき上がる歓声、皆の輝く瞳。
今も昔も、自由の女神像はそうしたアメリカの象徴なのでしょう。
そんな感慨を、私もいつか実物で感じてみたいものです。
さて、常に旅の船上にあり、幾度も自由の女神を眺めたに違いないけれど、
そんな希望やあこがれから最も遠いのが、
このピアノ弾きのナインティーンハンドレッドです。
彼は赤ん坊の頃、この客船のピアノの上に置き去りにされてしまいました。
機関士のダニーに拾われ、船底で育てられます。
折しもちょうど西暦1900年。
それで、ナインティーンハンドレッドと名付けられました。
幼いある日、美しいメロディにさそわれてホールを覗いてみると、
その音はピアノから聞こえている。
すっかり魅せられてしまう彼。
そうしていつのまにか彼は、全く自己流に自在にピアノを覚え弾きこなすようになるのです。
これぞ天才。
この船という小さな世界の中で、
彼は好きなだけピアノに触れ、賞賛をほしいままにします。
けれども、彼は生まれてこの方、この船から一歩も外に出たことがない。
ある日、彼は決心し、ニューヨークで地上に降りようとするのですが・・・。
あまりにも広く、終わりのない大地に彼は恐怖してしまうのです。
こんなにどこまでも鍵盤が続いているピアノを、
私は弾くことはできない・・・・。
そうして、また船に戻るしかなくなってしまう。
船のバンドで彼と共にトランペットを演奏していたマックスは、
戦火をくぐり抜け、変わり果てた姿となったこの船が処分されると聞き、
船を訪ねてくるのですが・・・。
波が高く、大揺れに揺れる人気の無いホールで、
ピアノのストッパーを外し、
音楽をかき鳴らしつつホール中を滑り回る若き日の
マックスとナインティーンハンドレッドの二人。
このシーンが素晴らしく印象的で忘れることができません。
この時、二人にはまだ前途が洋々と広がっていた。
音楽と友。
これがあれば他に必要なものなどないと思えた。
ナインティーンハンドレッドのピアノは時に言葉よりも饒舌です。
ピアノでホールにいる人物の描写をしたりする。
そんな彼が、あるとき一人の若い女性に目が釘づけになってしまいます。
その人を見つめながら奏でるピアノの調べの、何という柔らかさ美しさ・・・。
このとき、その音をレコードに録音したのですが、
そのたった一枚の録音原盤の運命も気になるところです。
哀しく美しい物語・・・。
お気に入り作品のご紹介でした。
海の上のピアニスト [DVD] | |
ティム・ロス,ブルート・テイラー・ロビンス | |
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン |
1999年/イタリア・アメリカ/
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
原作:アレッサンドロ・バリッコ
出演:ティム・ロス、プルイット・テイラー・ビンス、メラニー・ティエリー