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「新選組 幕末の青嵐」 木内昇

2011年09月15日 | 本(その他)
激動の時代の中で、夢を追う若者たちの成功と挫折の物語

新選組 幕末の青嵐 (集英社文庫)
木内 昇
集英社


          * * * * * * * *
 
特に時代小説好きな方でなくても、好きな人は多いはず。
新選組のストーリーです。
土方歳三、近藤勇、沖田総司、永倉新八、斎藤一・・・。
一人一人にスポットを当て、その人物の思いを語りながら、
時の流れを追っていきます。


一番手は、土方歳三。

疑問を抱えながら、歩くだけの毎日だ。
どこまで歩いても、目の前には茫漠とした暗闇しかないようだった。


これはまだ武州で薬売りをしていた頃、18歳の土方歳三です。
まだ、自分が何をなすべきなのか何も見えておらず
・・・だから、目の前には暗闇しかないような気がしているのです。

そんな彼が天然理心流という剣術に興味を持ち、
試衛館という道場に出入りするようになりますが、
上記の面々は皆ここで知り合ったわけです。
皆若く、エネルギーをもてあましており、
何物かになりたいのだけれど、
当時の身分制度では、何者にもなりようがない・・・。
そんなとき、幕府が京に上る将軍の警護のために、
浪士を募集しているという話を聞きます。
身分は問わないという。
一同、その浪士隊に応募し、京へ上ることに・・・。


浪士隊が新選組と名を変え、人斬り集団と恐れられ、
内部の凄まじいまでの粛清を繰り返し・・・、
やがて大政奉還となり、逆賊として追われる立場になる
・・・そうしたすべての状況を描き出していきます。
激動の時代の中で、夢を追う若者たちの成功と挫折の物語。
やはりこれは語り継がれるべき物語なのでしょう。


中でも私は、やはり土方歳三に心惹かれます。
本作中では、土方さんを、尊皇攘夷などに対しての思想的なことではなく、
とにかく信頼する仲間、近藤勇をもり立てる、
そのために組織を強固なものにする、
戦闘の計画を練る、
そういうマネジメント的なことに生き甲斐を見いだしていたと、とらえています。
鬼のように冷徹と人からは恐れられるのですが、実はとても情に厚い。
しかもイケメン。
時流にのって、巧く有利な方につこうとするもの者が多い中、
最後まで自分の立場を貫くその生き様はかっこいいですよねえ。
最も最後の方は、敗走に次ぐ敗走・・・、
読むのがつらくなってきますが、
こうして土方さんは函館の五稜郭にたどり着くんですね。
作中その当たりの描写は非常に駆け足であっさりしていますが、
実際はどうだったのでしょう。
ほとんどあきらめの心境だったのか。
それとも、まだまだ十分勝算ありと思っていたのか・・・。
この本の流れだと前者のような気もしますが。
死んでいった仲間たちのことを思うと、今さらひくにも引けない。
最後まで闘って死ぬまでと、
思い定めていたように見受けられます。
しんみりと、幕末に心を馳せてしまう一冊。

「新選組 幕末の青嵐」 木内昇 集英社文庫
満足度★★★★☆