映画と本の『たんぽぽ館』

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日輪の遺産

2011年09月16日 | 映画(な行)
少女たちの純粋さが招く悲劇



               * * * * * * * *

昭和20年8月10日。
ポツダム宣言受諾や否やにゆれる日本中枢。
帝国陸軍の真柴少佐(堺雅人)が、
900億の財宝を陸軍工場へ移送し、隠匿するという密命を受けます。
なんとそれは陸軍がタイで極秘に取得したマッカーサー個人の財宝である・・・と。
軍の上層部は既に敗戦を悟っており、この財宝に祖国の復興を託そうとしたのです。
日本は負ける。
負けるけれども、いつかこの資金できっとまた立ち上がる。
なかなか凛とした決意の表れと思えます。

この作品は浅田次郎原作の映画化ということで、
つまりフィクションなのですが、
だからと言うべきでしようか、
若干、登場人物の思いが高潔に過ぎるような気がしなくもありません。
でもまあ、フィクションと割り切れば、なかなか悲しく美しい物語ではあります。



この密命を実行するのは真柴少佐の他、
小泉中尉(福士誠治)、
望月曹長(中村獅童)の3人と、
現地で運搬作業に当たる勤労奉仕の20人の少女たち、
そしてその担任、野口(ユースケ・サンタマリア)。
この少女たちが何とも屈託がなくけなげなのです。
お国のためと心から信じ、力を尽くそうとしている。
少女たちには、もちろん財宝のことは伏せられ、
新兵器の輸送ということにしてあります。
しかし、軍はあくまでもこのことは極秘にしようと、
非情な命令を少佐に下すのです・・・。


作品を見ながらも、嫌な予感はしたのですが・・・。
結局は、少女たちの純粋さが悲劇を招くという、
一筋縄ではいかないストーリーの進行をします。
この辺がまさに、その当時の「時代」を描いているわけなんですね。



しかし、もしそんな財宝があるものならば、今の日本こそそれが欲しいですね。
震災の復興費用として・・・。
結局、私たちに「遺産」として残ったのは財宝ではなく、
この自国を愛する心、
自国の未来を信じる心なのかもしれません。
だからこそ、戦後の日本、
信じられないほどの経済の成長を果たし、ここまで来たのです。
でもこれが本当に当時の人たちが夢見た日本の未来なのかどうか。
今の若い人たちはこの作品をどう思うのでしょう。
聞いてみたい気がしますが・・・
やはり見に来ているのは圧倒的に中高年の方々でしたねえ・・・。

2011年/日本/134分
監督:佐々部 清
原作:浅田次郎
出演:堺雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、八千草薫