映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

黄色い星の子供たち

2012年02月09日 | 映画(か行)
ユダヤ人の受難はドイツ内のみのことではなかった



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1942年7月。ナチス占領下パリ。
実話に基づく物語です。


11歳のジョーはパリで家族とともに幸福に暮らしていたのですが、
パリがドイツ軍に占領されてから、様子が変わってきます。
胸にユダヤ人であることを表す黄色い星をつけることを義務づけられてしまう。
ユダヤ人は立ち入り禁止の場所があったりします。
そしてある日13000人ものユダヤ人が一斉に検挙され、
ヴェル・ディヴ自転車競技場に収容されてしまいます。
当時のフランス政府がナチスに協力してしまったのです。
ろくに水も食料も与えられずに閉じ込められた人々。
それから彼らはまたフランス国内の収容所に移され、
その後またポーランドへと移されるのですが・・・。
先に出発した母親はジョーに最後に言い残すのです。
「ここから逃げ出しなさい。なんとしても生き延びるのよ」・・・と。



こんなことが実際に起こったというのは何とも信じがたいことです。
人道的に明らかに誤っているのですが、
唯々諾々と上からの指令に従い続けた人々・・・。
でもフランス国民の中にはドイツへの反感もあったのでしょう、
率先してユダヤ人をかくまい、守り通した人々も多くいます。
この作品ではそれが唯一の救いですね。



ある日突然、職も財産も、住んでいる家も奪われ、強制的に移送されて収容所に入れられてしまう。
たとえば、アメリカに住む日本人たちも戦時中そんな目にあったのでした。
けれど、そのままガス室に送られたりはしなかった。
生きる権利まで奪われはしなかったのです。
なぜ当時ナチスがそんなにまでもユダヤ人に対しての悪意をむき出しにしたのか・・・
私たちにはちょっと理解しがたいですね。
ヨーロッパの長い歴史の中で、そんな感情が密かに受け継がれてきていたのも確かなのでしょう。
でも、もうそんな感情は断ち切られた。
そのように私は信じたいのです。
まだまだこのような作品が繰り返し作られているのは、
世界中の人々の祈りと願いの証ですね。

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ジャン・レノ/メラニー・ロラン
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「黄色い星の子供たち」
2010年/フランス・ドイツ・ハンガリー/125分
監督・脚本:ローズ・ボッシュ
出演:メラニー・ロラン、ジャン・レノ、ガド・エルマレ、ラファエル・アゴゲ、ユーゴ・ルベルデ