映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

J・エドガー

2012年02月07日 | クリント・イーストウッド
真の姿を覆い隠すヨロイ



                 * * * * * * * * * *

さて、イーストウッド監督作品なので、久しぶりにまた出てきました~。
007よりはハリキリがいがある。
でも、実はこの作品を見るのは、あんまり乗り気ではなかったんだよね。
うん、ジャンル的に、政治ネタと言うか社会ネタがどうも苦手なんだなあ・・・。
しかし、イーストウッド作品は見逃す訳にはいかない、と。
そう。けれどこの作品、フーバー長官と腹心の部下の秘められた愛も描かれている
・・・と聞きまして、やっとその気になったのでした!!



さてまず、レオナルド・ディカプリオとイーストウッド監督、これで初タッグなんだね。
そういうこと。だからこそ、もうちょっと私好みのテーマ作であって欲しかったと余計に思うのよね・・・。
まあ、まあ・・・。
えーと、まずこのジョン・エドガー・フーバーについて。
29歳でアメリカ連邦捜査局つまりFBI局長に就任して
約半世紀にわたって局長を勤め上げた、FBIの顔ともいえる人。
現場検証、指紋採取、筆跡鑑定、操作情報のデータ化等々・・・
現在の犯罪捜査の基礎を築いた人だね。
ははあ・・・、今時のミステリはこのあたりが基礎基本だもんね。
そういうこと考えると、なかなか偉大ではないの。
ところがですね、そういう功績の一方で、
政治家や左翼系の活動家の言動を監視。
歴代の大統領の弱みを握って脅していたらしい。
すごい自己顕示欲だよね・・・
そもそもそういうところのトップが何十年もずっと同じ人物なんて、普通は考えられないよ・・・。
誰も恐ろしくて、変われとは言えなかったのかな・・・。
まあ、とにかくFBIの活躍は様々なTVや映画で語られる所でもあるし、
実際数々の大きな事件を解決してきたわけだ。
だからアメリカではこの人はまあ、英雄として誰もが知っているということらしい。
でも残念ながら日本では知名度はイマイチだよね。
そう、結局日本で盛り上がりに欠けるのは、そういうことだから仕方ないんじゃないかな・・・。



で、今作ではその伝説的フーバー氏の実像を描こうということだね。
まず表面上見えるのは、ものすごい上昇志向。自己顕示欲の塊。
狡猾。共産主義嫌い。正義の人と見られたがっている。
ところが次第に見えてくる内面は・・・。
根っこは、マザコンなんだろうなあ。
何しろ母親があのジュディ・デンチだよ。
この迫力には大抵の男は負ける・・・。
まあ、それはともかく、幼少の時から全てに母親が支配していただろうことが伺えるよね。
で、男は強くなくてはならない!!という呪縛を植えつけられる。
しか~し、そのためなのかどうか・・・、彼は女性を好きになれない。
と言うかむしろ男が好きだ!!
FBI副局長クライド・トルソンとの秘められた恋。
いや実際そんなエロいシーンがあるわけではないのだけれど、
トルソンはフーバーの下で働き始める時に、こう約束するんだね。
「毎日昼食か夕食を共にすること」。
口には出さないけれど、二人の心の絆が一目会ったその日から結ばれる。
あるとき、珍しく二人が大げんかをするのだけれど、その時トルソンはこういうね。
「お前なんか小心者で嘘つきで、凡庸だ!」
若干違うかもしれないけど、まあ、そんなセリフでした。
が、実はこの言葉こそが核心を突いているよね。
そうなのです。女々しい・・・って女の立場では嫌な言葉なんだけど、
フーバーは母親が求めていた「男らしい」男という理想とは真逆・・・。
彼の自己顕示欲たっぷりの言動は、つまり自分の真の姿を覆い隠す鎧なんだよ・・・。
結局なんだかんだと言いながら、そういうフーバーをトルソンは愛したわけなんだな・・・。
うーん、それにしてもやっぱり老人男性同士の愛って・・・。
正直気色悪いわな・・・。
むろん、この解釈が正しいというわけじゃないよね。
こういうふうにも考えられるんじゃないかって、イーストウッド監督の投げかけだから。
人の内面は、本人にだってわからないものだから・・・。
だからドラマになるってことか。
ディカプリオの老人姿は評判がいいようだけど・・・。
老人の動作とか、すごくそれらしかったと思うよ。
私が思うに、昔はさっそうとかっこ良くキビキビ動けたけど、年をとるとこんなふうになっちゃうって、
若干イーストウッド監督の実感もあったんじゃないかなあなんてね・・・。
そうだねえ・・・。



で、全然別の話だけど、今作を見たときに「タイタニック」の予告編をやってたね!
そう、今度3Dで、また公開になるとかで。
そこで写ったディカプリオのなんと若々しいこと!!
はあ~、やっぱり若いということはそれだけで美しいのだわ。
タイタニックは一度ならず見たけど、やっぱりまた見たくなっちゃったなあ。
ぜひ、3Dで!!
船の舳先で二人で風を切って・・・!、あの名シーンが3Dだと一層盛り上がりそうだ~!!


J・エドガー
2011年/アメリカ/138分
監督:クリント・イーストウッド
出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー、ジョシュ・ルーカス、ジュディ・デンチ、ジェフリー・ピアソン