だまし、だまされ・・・
* * * * * * * *
私、道尾秀介作品はあまり多く読んでいません。
というのも、その数少ない読書体験では、
やや陰湿というイメージがありまして、あまり得意ではない。
それでやや敬遠気味だったわけですが、
この本を読んでそのようなイメージがすっかり払拭されました。
詐欺を生業とする男が、とある男と知り合い、二人組で仕事をすることになります。
次にそこへ一人の少女が加わり、さらにまた同居人が増えていって、
とうとう5人と一匹に。
他人同士の奇妙な生活が始まりますが、
やがて彼らは人生を懸け彼らの敵と対峙することに・・・。
いわばコン・ゲーム。
だましだまされ、立場がくるくる入れ変わり、
やがて感動の大逆転!
実に爽快な物語。
ただし、彼らそれぞれが抱えている問題は結構根深く悲惨なのです。
そうして負け犬となってしまった面々。
彼らが絆を結んで大きな力に対抗していくという、再生の物語でもあります。
この何気なく集まった知り合い同士が、連係プレーで・・・というあたりは、
伊坂幸太郎作品にも似ているのですが、
それよりももっとミステリファンを楽しませる仕掛けがいっぱいです。
アナグラム。
文字の並び替えですね。
詐欺で使った偽名が「石霞(いしがすみ)」。
これをローマ字で書くとisigasumi。
逆さまから読むとアイム・サギシ、なんていう具合です。
こういうのがあちこち散りばめられているのが楽しい。
また、章立ての表題が"HERON" ,"BULLFINCH","CUCKOO"・・・などとなっていまして、
これは鳥の名前なんですね。
HERONというのは鷺(さぎ)のことで、
つまり詐欺と懸けてある。
こんな工夫が何とも心憎いのです。
かと思えば、表題「カラスの親指」の意味なのですが、
私たちはしばしば指を家族に見立てますね。
お父さん指、お母さん指、兄さん指・・・というように。
そういうことを見立てた心温まるエピソードもあったり、
なんだか非常に得した気分になる本なのです。
これにはまって、道尾作品、もっと読んでみたくなりました。
一冊二冊で作家の傾向を知った気になるのは大変危険なことだとわかりました。
よい経験でした。
「カラスの親指」道尾秀介 講談社文庫
満足度★★★★★
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) | |
道尾 秀介 | |
講談社 |
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私、道尾秀介作品はあまり多く読んでいません。
というのも、その数少ない読書体験では、
やや陰湿というイメージがありまして、あまり得意ではない。
それでやや敬遠気味だったわけですが、
この本を読んでそのようなイメージがすっかり払拭されました。
詐欺を生業とする男が、とある男と知り合い、二人組で仕事をすることになります。
次にそこへ一人の少女が加わり、さらにまた同居人が増えていって、
とうとう5人と一匹に。
他人同士の奇妙な生活が始まりますが、
やがて彼らは人生を懸け彼らの敵と対峙することに・・・。
いわばコン・ゲーム。
だましだまされ、立場がくるくる入れ変わり、
やがて感動の大逆転!
実に爽快な物語。
ただし、彼らそれぞれが抱えている問題は結構根深く悲惨なのです。
そうして負け犬となってしまった面々。
彼らが絆を結んで大きな力に対抗していくという、再生の物語でもあります。
この何気なく集まった知り合い同士が、連係プレーで・・・というあたりは、
伊坂幸太郎作品にも似ているのですが、
それよりももっとミステリファンを楽しませる仕掛けがいっぱいです。
アナグラム。
文字の並び替えですね。
詐欺で使った偽名が「石霞(いしがすみ)」。
これをローマ字で書くとisigasumi。
逆さまから読むとアイム・サギシ、なんていう具合です。
こういうのがあちこち散りばめられているのが楽しい。
また、章立ての表題が"HERON" ,"BULLFINCH","CUCKOO"・・・などとなっていまして、
これは鳥の名前なんですね。
HERONというのは鷺(さぎ)のことで、
つまり詐欺と懸けてある。
こんな工夫が何とも心憎いのです。
かと思えば、表題「カラスの親指」の意味なのですが、
私たちはしばしば指を家族に見立てますね。
お父さん指、お母さん指、兄さん指・・・というように。
そういうことを見立てた心温まるエピソードもあったり、
なんだか非常に得した気分になる本なのです。
これにはまって、道尾作品、もっと読んでみたくなりました。
一冊二冊で作家の傾向を知った気になるのは大変危険なことだとわかりました。
よい経験でした。
「カラスの親指」道尾秀介 講談社文庫
満足度★★★★★