映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「奇面館の殺人」 綾辻行人 

2012年02月21日 | 本(ミステリ)
吹雪で孤立した館で、やはり事件は起こる

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)
綾辻 行人
講談社


                 * * * * * * * * * *

綾辻行人氏「館」シリーズ最新刊。
シリーズ9作目は、まさにミステリのためのミステリといったお膳立てで、
本格ミステリファンを楽しませてくれます。


名探偵、鹿谷門実(ししやかどみ)は、「奇面館」と呼ばれる館を訪れます。
そこの主人は6人の男を館に招いたのですが、
館に伝わる奇妙な仮面をつけるように要求します。
頭全体を覆い隠す仮面。
さてその夜。
季節外れの吹雪で館は孤立。
もうおきまりのお膳立てですが、これで事件が起こらないわけがありません。
翌朝、発見される主人(と思われる)の首なし死体。
そして6人の客にはそれぞれ仮面がかぶせられ、
鍵をかけられてしまっていて、外すことができない!!
この中の誰かが犯人。
けれど、死んだのは本当に主人なのか。
かぶせられた仮面の意味は・・・?


ミステリファンならすぐに気がつきますが、
普通首なし死体は、死んだ人の身元をわからなくするためにそのように仕立てるのですね。
しかも今作中では指まで切断されています。
だから、もしかするとここの主人自身が犯人で、
自分が死んだふりをして仮面をかぶり、客の誰かになりすましているのでは?
・・・という想像は割と簡単にできてしまいます。
しかし、これは綾辻作品ですからね! 
そんな一筋縄のトリックのはずがない!
案の定、まもなくあっさりと首は見つかり、
死者の正体は確定してしまいます。
ではいったい誰が犯人なのか・・・。
ただでさえ登場人物の名前を覚えるのが苦手な私は、ちょっと苦戦しました。
それぞれが「嘆きの仮面」とか「驚きの仮面」、「歓びの仮面」など、別々の表情の仮面をかぶっているのですが、
誰がどの仮面だったのやら、すぐ訳がわからなくなる・・・。
栞に図説をつけて欲しかった・・・。
でも、結局誰がどの仮面でもさして意味はなくて、
それを覚えていなくてもさほど支障はなかったようです。
なぜ、わざわざ仮面をつけたのか。
問題はそこなので。


近頃幻想ホラー風作風となっている綾辻氏ですが、
今作も終盤でそういった雰囲気が醸し出されています。
それは、この館に伝わる最も重要な「未来の仮面」。
その本当の意味。
私は今作の「仮面」では「鉄仮面」を思い出してしまいましたが、
そのようにヨーロッパ中世から伝わる陰湿な伝承のようなものが、
全体の不気味なムードをもりあげています。


今作で登場する紅一点、新月瞳子は、
館のピンチヒッターのメイドですが、パキパキしていて元気。
なんだかほっとさせられる存在です。
彼女が問題の夜、眠れずにサロンで見ていたのが「世にも怪奇な物語」のビデオ。
なんだか私もとても見たくなってしまいましたので、近いうちに拝見することにしましょう!!

「奇面館の殺人」 綾辻行人 講談社ノベルス

満足度★★★★☆