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「天才柳沢教授の生活34」 山下和美

2013年07月11日 | コミックス
桜の満開の下で母を思う教授・・・泣けます。

天才 柳沢教授の生活(34) (モーニングKC)
山下 和美
講談社


* * * * * * * * * *

本巻、好きな作品が多かったのです。お気に入りの一冊になりました。


233話 「オー・マイ・リトル・ガール」
柳沢夫妻のまだ若い頃のお話です。
奥さん(正子さん)が盲腸で入院。
家には教授とまだ幼い長女いつ子と次女奈津子が取り残されている。
全く家事も育児もしたことがない教授。
しかし、こうなったからにはやらねばならぬ! 
そこでまず教授が始めたことは育児書を読むこと・・・。
5歳くらいのいつ子は、それを見てはじめから諦めの心境で、
健気にもテキパキと10ヶ月の妹の世話を始めるのです・・・。
「いつ子はいつもおかあさん見てまちゅから」と。
ここの家の家族は、教授は勉強しかしないと皆諦めきっているわけです。
お父さんは、お母さんがいつもどんなに一生懸命に家事や育児をこなしているのか、
なんにも見ていない。
そんな無言の非難がイタいですよね。
教授は皆からそう思われていることを知って
ちょっとショックを受けている。
何やらいつもと違う展開に、クスリと笑ってしまいます。
でも、研究好きの教授ですからねえ・・・、
もう少し長い目で見て待てば、家事も育児も完璧にこなしてくれそうな気はします・・・。


234話「おじいちゃんと技術革命」
華子ちゃんの幼稚園に転入してきたせりなちゃん。
彼女はなんと「ハイパッドミニ」を持っています。
・・・まあ、パッドです。
華子ちゃんは、意味もわからないおじいちゃんの分厚い「本」を持ち歩いて、
幼稚園のみんなにも憧れられているのですが、
この時ばかりは分が悪い。
しかし、彼女自身もパッドには興味があって、
面白いし、わかりやすい。
だけどよくわからないものを努力して勉強して、
おじいちゃんのようになるのが夢の華子には、
パッドの手軽さを認めることが
おじいちゃんへの裏切りのように感じるのでしょう。
このへんの複雑な葛藤。
幼児ですから、そんなふうに自分の気持を分析なんか出来ません。
だた混乱してむしゃくしゃして・・・というあたりが、
すごく良く描かれています。
そしてせりなちゃんも、賢い子で、
素敵なひらめきを見せてくれますよ。
私は感動してちょっと泣けてしまいました。


235話「いつのまにか少女は」は
世津子が教育実習に行くという話で、
これもいいのですがラスト236話がまた一段といい。


236話「桜の杜の満開の下」
教授が、折り合いのあまり良くないお父さんのところへ出向きます。
そこで、お父さんが長くヨーロッパへ行っていた時に、
お母さんが描いた手紙を見つけるのです。
(お母さんは教授がまだ子供の時に亡くなっていまして、
この時のことを切なく描いたストーリーも以前ありました。)
手紙には子どもたちの様子がステキなカットを交えて、
丁寧に描かれています。
それにはさすがの教授も涙、涙・・・。
満開のサクラの舞い散る春の日の出来事。
思わずもらい泣きです。

まさに、お買い得の一冊!

「天才柳沢教授の生活34」山下和美 モーニングKC
満足度★★★★★