映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ふむふむ おしえて、お仕事!」三浦しをん 

2015年06月10日 | 本(その他)
女のお仕事入門

ふむふむ: おしえて、お仕事! (新潮文庫)
三浦 しをん
新潮社


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あなたがなりたかった職業は何ですか。
靴職人、お土産屋、動物園飼育係、
フィギュア企画開発、漫画アシスタントにフラワーデザイナー。
夢を叶え、技能と情熱をもって働く15職種16人の女性に、
作家が直撃インタビュー。
時に持ち前の妄想力を炸裂させ、時にキレキレの自己ツッコミを展開し、
時に物欲の鬼と化しながら、聞き取った素晴らしき人生の物語。
さあ皆でレッツ"ふむふむ"!


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昨今、お仕事小説できらめきを見せる三浦しをんさんが、
様々な職業で活躍する女性たちにインタビュー。
その軽妙なトークも楽しいですが、
それぞれのお仕事の深淵にも触れて、非常に楽しい一冊です。


ここで紹介される職業がまた、バラエティに富んでいて面白い。

靴職人に土木工事の現場監督、
ウエイトリフティング選手・・・
女性としてはかなり珍しい職業選択。
ビール職人に、女性義太夫三味線、漫画アシスタントなどは、
多分に著者の好みが入っていそうだし。
動物園飼育係やフィギュア企画開発などは
いまどきの子どもたちの憧れかもしれないし。
実際、仕事って幅が広いものですね・・・。
ずっと事務一辺倒で過ごしてきた自分が情けなく思えてしまう・・・。
が、殆どの人はそんなものかな?


通常のインタビューよりも本作が面白いのは、
やはり三浦しをんさんのリードがお上手だから・・・。
女性同士ということもあるかもしれませんが、
あまりかしこまりすぎずに、すっと相手の内側に入り込んでしまうような、
そんなところがあるように思います。
ある女性研究者への質問で
この分野に入ったきっかけは?というのに
「先生がダンディだから・・・」
などというあけすけな返答が返ってくるところが楽しい。


実際、私達は好きか嫌いかで物事を決めることがよくあると思うのですが、
入り口のところはそんなものでも、
本当は心の底に「やってみたい」という気持ちが隠れているのではないかと思います。
読後に思うのですが、すべての仕事は自分と社会とが係ることなんですね。
人と人とのつながりなくして仕事は成り立たない。
だから、著者もお仕事小説を描くのでしょう。

「ふむふむ おしえて、お仕事!」三浦しをん 新潮文庫
満足度★★★★☆