ヴィクトリア朝時代の怪異も楽しめる
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これは伝説的作家の短編の見立て殺人なのか?
――イギリスの中等学校タルガース校の旧館は、
かつてヴィクトリア朝時代の作家ホランドの邸宅だった。
クレアは同校の教師をしながら、ホランドの研究をしている。
ある日、クレアの同僚が自宅で殺害されてしまう。
遺体のそばには“地獄はからだ"と書かれたメモが残されていたが、
それはホランドの幻想怪奇短編「見知らぬ人」に繰り返し出てくるフレーズだった……。
作中作が事件を解く鍵となる、2021年海外ミステリ最高の注目作!
英国推理作家協会(CWA)賞受賞作家が満を持して発表し、
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞受賞へと至った傑作!
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英国の人気ミステリ作家というエリー・グリフィスの、日本初上陸作品。
中学校教師、クレアが勤務するタルガース校旧館は、
かつてヴィクトリア朝時代の作家ホランドの邸宅であったことや、
クレアは仕事の傍ら、ホランドの研究をしているということで、
現代の物語でありながら、古風なホラー感を味わえるという、
なかなかムードのある作品です。
その、ホランドの短編「見知らぬ人」になぞらえたような連続殺人が、
クレアの身辺で起こります。
捜査に当たる警官ハービンダー・カーはインド人女性、という常にはない設定。
知的で洞察力に優れ、勇気ある彼女を、読者はきっと気に入ると思います。
もちろん、私も。
同じシーンを、クレアや、その娘ジョージ-、時にはハービンダーの視点で
重複して語られることもあって、でき事の裏表が描かれるのも面白い。
そしてその真犯人は、虚を突かれるといいますか、うーん、全く予想していませんでした。
でも確かに、わかってみればそんなに不思議ではない。
これは今後も楽しみな作家さんです!
「見知らぬ人」エリー・グリフィス 創元推理文庫
満足度★★★★☆